軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

触らぬ神に何とやらだ

「それは真か?」

「はい」

報告を受けたユニバンス国王シュニットは自身の額を押さえ椅子に深く腰掛けた。

そんなことを考えついて実行する者などこの国に1人しかいない。

「誰かアルグスタを……否、ハーフレンを此処に」

「はい」

「アルグ~」

「何だ飼い犬?」

「喧嘩売ってるのか?」

「コホン」

「「……」」

わざとらしいメイド長の咳払いに馬鹿兄貴が背筋を伸ばした。

何とかの犬っぽく完全に調教が終わっている気がするよ。彼女が正室じゃなくて良かったな兄よ……結婚していたら完全に尻に敷かれていただろう。

メイド長を従えて入って来た近衛団長様を、僕はソファーに横になり出迎える。

連夜のお勤めで僕の腰に大ダメージが……正直今夜は休みたいです。今夜と言わずに何日か。

向かいに座った馬鹿兄貴の背後に立つメイド長に睨まれて僕も居住まいを正した。

「それで?」

「国王陛下から問い合わされた。お前……何を企んでいる?」

「あっ来ました」

これでパーツが揃った。後は実行できるかの確認だけだ。

と、腕を組んで踏ん反り返った兄がこっちを睨む。

「お前が勝手にやるのは良いが、手伝ったと疑われる俺の身になれ。

何も知らないのに問い詰められるとかつまらん。全部話せば手伝ってやるぞ?」

「コホンッ」

「……便宜は図る」

飼い犬と化している残念兄貴がメイド長の咳払いでビクッとなってるし。

「で、陛下にどんな言い訳をする気だ?」

「別に」

僕は笑ってソファーから立ち上がった。

腰の違和感が半端無いが……我慢だ。

「なら国王陛下の元に参りましょう。多分来賓の出迎えは自分の役目となるでしょうから」

歩き出すと僕の席で勉強していたポーラが駆け寄って来て追随する。

ポーラよ。メイド長が特別なだけであって、普通メイドを従えたりしないんだよ。

ただ嬉しそうについて来るから彼女の好きにさせる。チラチラとフレアさんの立ち振る舞いを見て学んでいるから……勉強好きは学び続けるらしい。

「では聞こうか?」

あっさりと謁見が許され政務室へと通された。

疲れた様子のお兄様の第一声は……まあ良いか。

「はい。モミジさんにアーネス君を紹介したので、『一度良ければ村の人たちも連れて是非遊びに来て下さい』と誘ったまでです。前回の来訪では詳しい話もそのままですしね。商売のことなど詰めたいですし」

「……そう言う建前か?」

「何のことか分かりませんが」

やれやれと肩を竦めている国王陛下が疲れた表情を向けて来る。

ご苦労おかけします。本当に。

「ならば彼女"ら"の出迎えや歓迎は全てお前に任せる。良いな?」

「はい陛下。このアルグスタ、その命に従います」

一礼をして僕はその命令を引き受けた。

「にいさま」

「ん?」

「だれがくるんですか?」

後ろに居たポーラが僕に追いつき横に並ぶ。

こちらを見上げる姿が本当に可愛らしい。

「モミジさんのお姉さんが来るんだよ」

「おねえさん?」

「そう。だからポーラも頑張って出迎えないとね」

「はい。がんばります」

グッと両手の拳を握りポーラがやる気を見せる。

あ~癒される。これからあの変態家族の相手をすると思うとゾッとするんだけどね。

「お姉様が来るのですか?」

「そっ」

ドラゴンの処理場で待機しているモミジさんを呼び寄せ説明をする。

何故か喜んでやって来た彼女は、姉が来ると聞いたら顔色を悪くした。

ガタガタと震えだし……脂汗が滝のように顔の表面を流れ落ちる。

「本当ですか? 妨害とか阻止とか出来ませんか?」

「諦めて。もう北の監視所を通過したので明日の朝にでも王都に到着します」

「もうそんな場所まで……奇襲すれば……」

姉の出迎えを考えているなら刀を握る必要は無いはずだ。

何を企んでいる? モミジさんや?

「アルグスタ様っ!」

「はい? ……はい?」

勢い良くこっちを見たと、思ったらそのままの勢いで土下座に移行した。

余りに綺麗な土下座だ。出来たら写真に収めておきたい美しさだ。

「どうか遠い場所へ行かせてください。今、お姉様に逢うのは非常に良くないのです」

ガシガシと額を床に押し付けて懇願して来る。

土下座からおかしなプレイに変化した訳じゃないよね?

「理由は聞こうか?」

「……実は」

彼女は言う。

カエデさんから出されている任務がことごとく未達成で、挙句にノイエ、オーガさん、ユーリカと連敗続きでそのことを姉に知られたら切腹物らしい。

まさかそこまでとは疑ったが……どうやら本気らしい。カエデさんは介錯までしてくれるとか。

「で、未達成の任務とは?」

「はい。ドラゴンでの商売の仕方とか」

「それは今回の来訪で細かく話し合うよ。担当は僕じゃないけどね」

土下座していた彼女が顔を上げてこっちを見る。

助かったと言う表情ならまだしも、なぜ額を赤くして恍惚とした表情を見せるの?

「アルグスタ様を誘惑するとか」

「それは絶対に不可能だからカエデさんに僕から説明するよ」

「……それとケーキの作り方など」

「だったら誰か連れて来て。僕の店で修業できるように手配するから」

パァ~っと笑顔になったモミジさんが、また土下座してガツガツと額を床に打ち付けだした。

だからおかしな何かに目覚めましたか? もしそうならそれは僕では無くてアーネス君に見せなさい。

「ちなみにアーネス君とはどうなの?」

ピタッと止まったモミジさんが、モジモジとしながらこちらを見た。

「仲良くしています。ええ……本当に。ハァハァ」

「何故お子様に見せられない表情で熱い吐息を吐き出す?」

ポーラとクレアにケーキを買いに行かせたのは間違いでは無かったらしい。

うっとりとした表情で彼女がこっちを見た。

「彼ったらその……凄いんです。本当に。凄いんです。どんなに叩いても……ハァハァ」

「何があったかは聞かないけど、お幸せに。うん」

触らぬ神に何とやらだ。

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