軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アイルローゼですら恐れるから

「お久しぶりです。カエデ様」

「ええ。わざわざの出迎え……痛み入ります」

来賓であり周りの目があるので敬語対応する。

この変態家族に敬語とかそれだけでも屈辱的ではあるが。

握手を交わし、彼女たちには出迎えの馬車に乗って貰う。

予定よりも多いがそれは構わない。その分ホリーの頭脳が冴えるだけだ。

僕はカエデさんと2人きりで馬車に乗り、今回の宿泊先となる迎賓館へ向かって貰う。

今回の宿泊費用は全額ドラグナイト家の負担だ。勝手をした以上それぐらいの覚悟は必要だ。

「アルグスタ様? モミジは?」

馬車に乗ってから落ち着いた頃に彼女がそう声をかけて来た。

「はい。朝は待機所で挨拶をしてからとなっているので、そちらに顔を出してからこちらに来ることとなってます」

「そうですか。久しぶりに会うのが楽しみです」

日本美人の見本のようなカエデさんが柔らかく笑う。

美人だけど……この人は同性愛者さんだから気をつけよう。ミャンとか怖かったしね。

「ところでアルグスタ様?」

「はい」

「今回は貴方のお誘い通り、選りすぐりの猛者を集めて来ました。全員がモミジ以上の腕前ですが大丈夫ですか?」

挑むような言葉に絶対に自信を感じられる。

「ええ。ウチのノイエは強いので大丈夫ですよ」

「そうですか」

スッと目を細めて彼女がこっちを見て来る。

挑まれたから完膚なきまでに負かせに来たと言いたげだ。

「勝てるものなら勝ってみてください。今回のノイエはたぶん本気で勝ちに行くと思うので」

「ええ。ならばこちらも手加減無しで」

互いに笑い合って……僕らは改めて握手した。

「お姉様っ!」

「久しいわね。モミジ」

馬を飛び降りモミジさんが姉に駆け寄る。

軽く抱き合い美しい姉妹愛を見る。姉は妹すら恋愛対象にする生粋の変態だが。

ただそれを知らない人たちは久しぶりに出会う姉妹の様子にほっこりしている。ポーラなんて少し涙ぐんでるくらいだ。

「モミジ」

「はい」

「アルグスタ様から聞いたわ。ドラゴン以外には連敗とか?」

「……」

ガタガタと震えだしたモミジさんがこっちを見る。

『裏切り者!』とその目は訴えて来るが、何故か内股で太ももを小刻みに擦り合わせている。器用な。

「今回は貴女以上の腕前の者を30人も連れて来たと言うのに……アルグスタ様に馬鹿にされた私の気持ちが分かりますか?」

「……申し訳ございません」

何故かにっこりと笑い、カエデさんが妹をドナドナしていく。

可哀想な瞳でモミジさんがこっちを見ているが……僕としてはフォローのしようが無い。

だって今回はノイエの留守を任せられる人材が必要なんだから。

「さてと。30人でノイエの分ほど仕事が出来れば良いんだけれどもね」

「ん~」

「どう?」

「面白いかな。アルグちゃんがこれくらい出来るようになったのは嬉しい」

とか言いながらも、僕が書いた計画書に次から次へと書き加えて行くホリーお姉ちゃんは容赦ない。

ベッドで仰向けになって書いた紙を確認した彼女が僕に渡して来る。半分以上手直し食らいました。

「でもまだまだね」

「はい」

「ガッカリしないの。アルグちゃんが今回こんな無理をしてくれることを私たちは応援してるんだから」

「応援ですか?」

「うん」

起き上がったホリーがベッドの端に座りこちらを見る。

「別の施設に居た人たちの中にも知り合いとか居るのよ。そんな人たちがユーリカのようにされて苦しんでいると知ったから……だから今回は大船に乗った気持ちで居ると良いわ」

「具体的には?」

「グローディアとアイルローゼ以外は協力してくれると思う」

魔法で頼りにしたい2大巨頭が居ないんですけど?

「魔法が弱くないですか?」

「失礼よ? 私と……ファシーが居るでしょう?」

何故にファシーの名を呼びながら唾棄しそうな表情を作るのか問いたい。

「でもお姉ちゃんの魔法は近接だよね?」

「そうね。でもアルグちゃんを守るくらいは出来るし……ファシーが居るから」

だから何故にそんな殺気まみれの表情になる?

ジッとお姉ちゃんを見つめたら、拗ねてた様子で頬を膨らませた。

「悔しいけど本気のファシーは怖いわよ? あの子の魔法はアイルローゼですら恐れるから」

「そうなの?」

「そうなのよ」

コロンとベッドに横になり、ホリーが何故かイジイジとし始める。

「あの子は何でも貴族の血と魔法を受け継いでるらしくて、アイルローゼが元となっている魔法を知っているらしいの。でもファシーの魔法はそれを改良されてプレートにして体の中に入れられた物だから……物凄く強力なんだって。魔法を使わず魔力がプレートに流れるだけで暴発してしまうくらい」

「それって制御できずにただ暴走する魔法を突っ込まれているだけでは?」

「でも本当に強力よ。私もあれぐらいの魔法があったら……アルグちゃんの役に立つのに」

完全に拗ねだした彼女の横に腰かけて……しまった。座る方向が逆だ。これではお尻を撫でるしかない。

「大丈夫。お姉ちゃんはその優れた頭脳でこうして手伝ってくれるでしょ? これだって魔法とは違って重要なんだから」

「……本当に?」

「うん。感謝しても感謝しきれません」

「そっか。うふふ……そっか」

ムクッと起き上がり……ホリーが僕に寄りかかって来た。

今日のホリーは何だか大人しくて可愛らしいぞ? だが気を付けろ僕。ホリーは生粋の肉食獣だ。

「好きな人に頼られるってこんなにも嬉しいものなのね」

「うん。頼りにしてるよ。お姉ちゃん」

「任せなさい。お姉ちゃんがどんな不可能な作戦でも可能な作戦に書き換えてあげるからっ!」

「うわ~い。流石ホリーお姉ちゃんだ」

「そうでしょそうでしょ」

その目を肉食獣に変化させたホリーがこっちを見た。

分かってたよ。彼女を呼んだ時点で何があっても結論は変わらないってことぐらい。

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