軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

優しくしてね。旦那様

「ん~」

すやすやと寝ているポーラの寝顔が可愛い。

ずっと見てて飽きないが、視線を少し動かすと不満げなノイエを発見する。

2日連続でノイエの本気を見せられ今夜も来たら流石に死ぬと思っていたら天使が舞い降りた。ポーラが遊びに来てそのまま寝てしまったのだ。

これはあれだな彼女を起こして部屋に戻すのは可哀想だ。

父性を覚えた僕としてはこのまま家族3人で川の字で寝れば良いと思う。そうあれ。

「ノイエも寝ようか」

「……」

チラッとこっちを見たノイエの姿が消えた。

何故かポーラも消えて……数瞬後にはノイエが元の位置に戻った。

「ノイエさん?」

「部屋に戻した。お姉ちゃんだから」

胸を張りそんなことをお嫁さんが言い出しました。

やってることはお姉ちゃんと言うよりお母さんだけど……つまりノイエは今夜も僕を寝かせない気か?

『んっ』と言って抱き付いて来て甘えて来るノイエは可愛い。可愛いが。

押し倒されて……馬乗りになったノイエが笑い出した。って笑う?

「うふふ。もう我慢出来ないわ」

色が青く変化した。最悪だ。肉食獣が肉食獣に変化した。

「アルグちゃん」

「ふぁい?」

「お姉ちゃん前回すっごく頑張ったの」

「……そうなの?」

ホリーになった彼女は、何故か自分の胸を強調するように腕を前に組んだ。

「そうなのよ。でもエウリンカやカミーラばかり目立って……」

逝っちゃった目で彼女が僕の顔を覗き込んで来る。

「頑張ったお姉ちゃんにご褒美って大切だと思うの? どう?」

「……」

肉食獣の目で見つめられてご褒美を求められても。

「何よりお姉ちゃん……エウリンカに言ったアルグちゃんの言葉に凄く傷ついたし……」

「ご褒美って大切だよね!」

肉食獣の目が増々怪しくなったので僕は降伏した。全面降伏だ。

と、パァ~っとホリーの表情が明るんで笑顔になる。

「そうよね? 流石アルグちゃんだ……大好き」

ガバッと襲いかかって来たホリーは、容赦無さ過ぎでした。

「ノイエ」

「はい?」

「今夜は寝ようね?」

「……」

不満げな彼女の表情が全てを物語っている。

だが折れたら負けだ。具体的に僕が本気でぶっ倒れる。

本当なら今夜はポーラが一緒に寝る日だったが、昨夜ベッドの上に放り出されていたポーラは少し風邪気味でメイドさんたちが寝ずに看病している。

つまり救いの天使はやって来ない。

「3日連続とか無理。お願いだから寝らせて」

「大丈夫。アルグ様は寝てて良い」

お嫁さんが恐ろしいことを言い出したぞ?

「お願いします。ならせめて1回で」

ベッドの上で土下座して命乞い……お願いする。

不満そうなノイエだったが、性根が優しいから許してくれた。

不意に胸に重みを感じて目が覚めた。

ノイエは約束を守るタイプだから……誰だ? 流石に本当に死ぬぞ?

目を開けて確認したら、僕の胸に頭を預けてこちらに顔を向けているのは銀髪のノイエだった。

「セシリーン?」

「はい」

「どうしたの? ポーラなら少し熱を出して寝てるよ」

「ええ」

いつも通り目を閉じてこちらを見て居る……と言うか盲目だから見えてはいないんだけどね。

「ねえ旦那様?」

「はい」

「もし貴方が……自分が最も嫌うことをさせられそうになって、それを誰かに助けられたとしたらどうするかしら?」

何気ない言葉のように思えるけど、セシリーンの性格からこんな質問とか考えられないな。

「精一杯の恩返しするかな?」

「精一杯?」

「うん。今回のことで言えば、僕が恩返ししたい相手はカミーラかな? ただ彼女の場合は『酒でも寄こせ』と言い出しそうだけど」

だからこれでもかと高級酒を買い集めている。

カミーラが出て来たら好きなだけ飲んで欲しいから。

こっちを見つめているセシリーンは少し怒った表情を作ると、横たえていた体を起こした。

「質問の仕方を間違ったみたいね」

「はい?」

座った彼女は僕の胸に手を置いてまたこちらを見る。

「今回私は貴方に助けて貰ったの」

「僕が?」

そのような記憶は全く無いのですが?

だけど頷いた彼女はまた口を開く。

「だから恩を返したい。貴方が言う精一杯を」

クスッと笑いセシリーンがその体を倒し僕に近づく。

唇に触れたそれは……普段とは違い微かに震えていた。

「緊張するものね。胸が張り裂けそう」

「あの~? セシリーン?」

「何かしら?」

また僕に寄りかかり、彼女がこちらを見つめて来る。

これはあれか? 知らない場所でフラグが……そんな訳無いな。相手はお姉さんなセシリーンだ。

だが待て? 彼女の言動を思い出せ。うん。怪しい。

「何があったのかは知らないけど、無理はしないで良いと思います」

「無理って?」

「あ~。文字通り体で払う的な?」

「あら? 私は貴方の対象にならないほど魅力が無いと?」

ブスッと頬を膨らませてセシリーンが拗ねた。

はっきり言おう。一度見た生セシリーンは個人的には有りだと。

清楚なお姉さま系って年下の心をくすぐる魅力があるよね?

「魅力的だと思うけど……だからって」

「良いのよ。貴方は優しい人だから」

「はい?」

クスッと彼女が笑う。

「だって貴方は優しいから私に『歌って』とは言わないでしょ?」

「それは」

言えない。恩を引き換えに求めることじゃないし。

「優しい貴方だから私だって恋をするのよ。それに今更増えても変わらないでしょ? 私の後にはファシーが待ってるわ」

あら不思議。本当に変わらないよ?

「だから受け取って欲しいの。私の感謝の気持ちを……ダメかしら?」

「何かズルいな」

「うふふ。それが大人よ」

笑ってしな垂れかかって来る彼女が耳元に口を寄せた。

「優しくしてね。旦那様」

「……はい」

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