軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

さあ行きましょうか……

「確認は取れました」

「ありがとう」

緩く笑みを浮かべる相手に、管理と警護を兼ねて待機している兵たちが一斉に顔を紅くした。

長い黒髪をサラサラと背中に流しているその姿は、着ている服に映えてとても美しい。

兵たちに軽く挨拶をし歩き出した女性は、準備を終えている 門(ゲート) へと向かう。

「さあ行きましょうか……」

クスリと笑い彼女はその門の中へと足を踏み入れた。

「ぐぎごげご……」

「どうしたんですか? アルグスタ様?」

「筋肉痛がね」

「珍しく運動ですか?」

運動と言えば運動だ。

ただウチの可愛いお嫁さんが、目覚めたその晩から全力で襲いかかって来るとか想定していなかった。

エウリンカの奴……魔剣の修復を間違ったとかじゃ無いだろうな?

あんな肉食のノイエとか僕の身がもたない。全力のホリーぐらい恐ろしかったんだからな。

「にいさま。どうぞ」

机を叩いて気晴らしをしていると、メイド服姿のポーラが紅茶を淹れて持って来てくれた。

「ありがとう」

「はい」

可愛らしい笑みを浮かべ、お盆を胸に抱いて彼女はソファーへと戻る。

今日もメイドをしながら勉強だ。ただ教えているのがチビ姫という恐怖。決してチビ姫は馬鹿では無いのだが性格に色々と問題がある。

「ここはこうです~。こんな風にぐわぁ~と計算すると答えが出るです~」

「……わかりません」

やはり教師が悪いらしい。泣き出しそうな表情でポーラが救いを求めて来る。

僕もあの説明からだと理解出来ないので頭を振って肩を竦めた。

頑張れポーラ。お兄ちゃんは心を鬼にすることとするよ。

「アルグスタ様」

「ん?」

「ノイエ様は大丈夫なんですか? 昨日目覚めてそのまま復帰したとか」

「ああ。それね」

書類を抱えたクレアが旦那の机にそれを置いてこっちに顔を向けて来る。

各部署を周りに行っている隙に旦那の仕事を増やす嫁とか中々の鬼嫁だな。

「本人がやる気を見せて『行く』と言って聞かなかったからね」

「でもずっと寝ていて」

「ノイエには衰えとか無いらしいよ」

羨ましいことに、ノイエにはずっと寝ていた疲労とかは残って居ないらしい。

昨日は目覚めてから『お姉ちゃん』宣言をし、僕の勧めもスルーしてドラゴン退治に向かった。

たっぷりとドラゴンを狩って帰宅してからポーラを愛でて……そして襲われた。朝方までガッツリとだ。

今朝も元気にドラゴン退治に向かった。窓の外に目を向ければ、王都の周りを高速移動しながら宙を舞っている彼女の姿が小さく見える。

本当にノイエは元気だ。元気すぎるぐらいだ。

「たっぷり休んで逆に絶好調と言いたげな動きだよな」

「ですね」

クレアは呆れつつも自身の準備を進めている。今日は"亡き姉"から引き継いだ授業の日だ。

「失礼します」

綺麗なお辞儀を見せてメイドさんが入って来る。

前回の騒ぎでお株を上げまくった二代目メイド長様だ。

彼女が歩いた後にはミイラが転がるとか意味不明な活躍を経て、お城の全メイドから信頼を勝ち取ったらしい。

一体どんな魔道具を手渡したのか先生に聞きたくなったよ。

亡き姉の登場に全力で緊張を見せるクレアの元に、フレアさんが歩み寄った。

「クレア様。こちらが今日の授業で使える教材となります」

「……あっありがとぅ」

「いいえ。これが私の仕事ですので」

ふんわりと一礼し、泣き出しそうな元妹に微笑みかけた彼女がこっちを向く。

「アルグスタ様?」

「何故に声音がきつめかと?」

「はい。苦情を言いに」

ツカツカと歩いて来たメイドさんが机を挟んで向こう側で止まった。

ポーラが飛び出し駆け寄ろうとしているのをチビ姫が止めている。

ちょっと待てチビ姫? 何故義妹を止める? その好奇心剥き出しの目は何だ?

「ノイエ様に何を言ったのですか?」

「あ~。元気すぎる?」

「はい。決まった以上のドラゴンを狩って回っていると」

「……今夜注意しておくからそれでどうにか」

「お願いします」

ふんわりと一礼し、顔を上げたフレアさんの顔から表情が消えた。

「私はただのメイドで伝令係では無いのですが……」

「本当に色々と申し訳ないです」

今のフレアさんは王弟付きのメイド長だ。

主人である筋肉王子がいい加減だから、その仕事を半ば強制的に手伝わされる。国王陛下の元や僕の所に毎日来るのでついつい書類や伝言を頼んでしまうのだ。

何より彼女が信頼できる人だと知っているからね。

「ただのメイドが王家の方々と親密になるのは良く無いと思いますので」

「まあね。今度から気をつけます」

「宜しくお願いします」

そのお腹に王弟様の子供を宿していて親密になりたくないとか……フレアさんらしいと言えばそれまでかな。

「私はこれで」

「どうも」

「わたしも行って来ます」

「はいよ」

出て行くメイドの後をついてパタパタと走って行くクレアの後ろ姿が可愛いね。

犬だったら尻尾でも振ってそうな感じに見えるよ。

軽く息を吐いて僕は窓の外を見る。

宙を舞うノイエが……間違い無くこっちを見てるな。本当にノイエは器用ですな。

「さてと。現場に出てて溜まった仕事を処理しないと……本当に」

高くは無いが溜まっている書類の山に目を向ける。

こっちの方は誰か代理を置けば問題無いか。

ため息を吐いて書類に手を伸ばす。

問題はノイエの代理だ。

あれが上手く行けば可能なはずだけどね

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