軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それって魔剣なの?

「アルグはどうだ?」

「はい。静かにドラゴン退治の指揮を執っているそうです」

「そっちの方が余計に怖いだろう?」

書類を手に訪れたメイド長にハーフレンは紅茶を求める。

一瞬何とも言えない視線を向けて来たメイド長は、自身が『メイド』であると思い出して行動に移る。

適当に紅茶を淹れて主人の前に置いた。

「荒れてるな?」

「……今日は体調が良くないので」

「心中だろう? 元とは言え妹のように可愛がっていたノイエがやられたんだからな」

「……ええ。だから共和国に殴り込んで来ようかと」

「止めろ。せめて身軽になってからにしろ」

「そうですね」

自身の体調を鑑みて、フレアは共和国への殴り込みを止めた。

「それでアルグスタ様はどのような動きを?」

「それがな……怖いぐらいに静かなんだ」

「何もしていないと?」

「ああ。強いて言えば手紙を書いているぐらいだな」

「手紙ですか?」

フレアは主人の机の上に散乱している書類を集めて整える。

トントンと小気味いい音を聞きながらハーフレンは口を開いた。

「モミジと言う娘にアーネスを紹介しただろう? それでアーネスの紹介文と推薦文を……どうした? そんな複雑な顔をして」

「分かってて言ってますね?」

「まあな。でもアーネスだって子供じゃない。お前の地位や立場を知って我が儘を言い続けられないことは理解している。それにあのアルグスタが暗躍しているんだ。アーネスがお前への未練を断ち切るのも直ぐかもしれんぞ?」

「……」

それはそれで腹立たしいが、元を正せば全て自分の行いが招いたことだ。

フレアは深く息を吐いて気持ちを入れ替えた。

「ですとアルグスタ様は本当に何もしていないと?」

「ああ」

クシャクシャと頭を掻いてハーフレンは紅茶を啜る。

「ミシュに探りを入れさせているが何もしていないな」

「それは……」

フレアは何とも言えない表情になって息を吐く。

「これ以上無く恐ろしいですね」

「ねえさまは……」

「大丈夫。必ず起きるよ」

「はい」

出迎えてくれたポーラが寂しげで辛そうな表情を見せる。

今日もノイエは起きなかったらしい。でもちゃんと食べてくれたからそれはそれで一安心だ。

グシグシとポーラの頭を撫でてやり、僕はお風呂に向かい入浴を済ませてから食事を済ませる。

ポーラと2人の食卓はやはり寂しい。

それから持ち帰った仕事を抱えて寝室へと向かう。

部屋に入ると、やはりノイエはベッドで寝たままだった。

朝出かけた時と何も変わらない。半ばから折れたアホ毛がやる気無さそうにダラッとしている。

もしかしてあれが折れているからノイエは起きないのか?

手にした書類を机に置いて、彼女の元へと歩み寄る。

グシグシと頭を撫でてからアホ毛に手を伸ばす。ブランブランと揺れるアホ毛は何度立たせようとしても折れてしまう。やはりダメだ。

机に戻って持って来た書類に目を通してサインを入れていく。

ドラゴン退治で外に出ているせいで事務仕事の方はイネル君とクレアに丸投げだ。それでもあの2人はちゃんと仕事をしてくれて、こうやって僕に最低限の仕事で済むように手配までしてくれている。

良く出来た部下のお陰で僕は救われているよ。

「ノイエ。早くしないと僕がドラゴンを全部退治しちゃうぞ」

何となく声をかけたら……ブルッとノイエの体が震えた。

流石ノイエだ。ドラゴン退治をライフワークにするお嫁さんだな。

と、思っていたら……彼女がスッと体を起こした。

黒い艶やかな髪をした黒い瞳で。

ゆっくりと辺りを見渡した彼女の目が僕に向けられて止まる。

「やあ。初めまして」

「はい。……どちらさまでしょうか?」

「ん~。本当に外に出れるとはね。驚きだね」

こっちの言葉を無視して、彼女は背伸びをするとベットから抜け出した。

軽く体を動かし具合でも確認するかのように、色々と動作確認をする。

「思い通りに動くようだな。ただ驚くほどお腹が減るな。これがノイエの祝福を使用している代価か」

「あの~?」

「ああ済まない。色々と興味深くてね」

腕で髪を払って彼女が僕に向く。

軽く寝間着の裾を抓んで彼女は柔らかく一礼した。

「初めまして元王子殿。自分の名はエウリンカと言う」

「エウリンカ? あの……魔剣の魔女?」

「何故かそんな風に呼ばれているらしいけど、自分は一度もそんな自己紹介はしていない。自分はただ魔剣しか作れない魔法使いだ」

言って鏡の前に移動したエウリンカが、ノイエの姿を確認し始める。

「あんな小さくて平らだったノイエもここまで育つのか。これはこれで興味深いな」

「あの~?」

「ああ済まない。自分はどうしても好奇心が強いらしくてね」

前に先生が『魔女は何かを求める好奇心の塊の存在』とか言ってたな。

つまりエウリンカは魔女になる才能があると言うことだ。

何故かノイエの胸をグニグニと揉んで何かを確認したらしい彼女は、半ばから折れているアホ毛に手を伸ばした。

「さて……元王子殿」

「はい?」

知的な笑みを浮かべて彼女が口を開く。

「今のノイエの保護者である貴殿に問いたい」

「何でしょうか?」

「これはノイエの"ある物"を封印している魔剣だ。これを今から直そうと思っている」

封印?

そう言われると確か前にそんなことを誰かに言われたな。

あれは……ああ。あの狂暴女か。

「って、それって魔剣なの?」

「ああ。自分がノイエと言う素体が面白くてついやってしまった魔剣だ」

「やったって?」

うんうんと頷いた彼女は何故か視線を逸らした。

「ノイエを"材料"に魔剣を作れないかと思ってね……その実験で一部だけ魔剣化させた。実験は無事に成功していざ本番と思ったらカミューと言う狂暴女に気づかれてね、死ぬ寸前まで殴られたよ」

「……」

僕は初めてカミューの存在を神のように思った。

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