軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

半分ドラゴンだから

《流石に拙いか》

棒を振るうカミーラは内心で焦っていた。

エウリンカから巻き上げた魔力は膨大な量であったが、それも大半はノイエに奪われている。

表に出て来たと同時にノイエの傷を癒すために使われてしまっているのだ。このままではあと少しで魔力切れを起こして自分は中に戻ることになる。

時間は無い。

だからこそカミーラは焦っている振りをして相手への攻撃に努める。

速度重視の攻めにユーリカは何かに気づいて防戦一方になる。完全に守りが主体だ。

「何を焦っているの? カミーラ」

「お前が弱いから遊んでいるだけだ」

「嘘ね。ノイエの傷が治りだしてる。たぶんそれに関係しているのでしょう?」

頭も良かっただけにユーリカの言葉にカミーラは舌打ちをして突きを放つ。

余裕で回避したユーリカは、薄く笑って言葉を紡ぐ。

「狂う狂う狂う。彼の者の意識を」

「やらせるかっ!」

鋭く放つカミーラの突きを十分な間合いに立つユーリカは、あっさりと回避する。

「奪いそして偽れ!」

紡がれた魔法語が完成した。

「浸食!」

グルグルと激しく動くユーリカの瞳から、カミーラは自身の顔を背ける。

それでも軽く"食われた"のか、全身に言いようの無い疲労感を得た。

「動きが悪くなったわよ?」

「……お前に合わせただけだ」

「そう」

ブンッと剣を振るってユーリカは大胆に踏み込んで来た。

防御から攻撃に転じ、彼女の剣が鋭くカミーラを狙う。

その瞬間をカミーラは逃さなかった。ダンッと地面を踏んで足元に串を生む。

土の串は2本出来上がり、その2つが真っすぐユーリカの胴を狙った。

「ぐふっ」

「これも何度かしたはずだが?」

確実に2本の串がユーリカの胴を捉え、彼女の両足が地面から離れて宙を浮く。

必殺の一撃に残り少ない魔力を注いだカミーラは、自身が持つ棒の先を尖らせ槍とした。

「やはりお前じゃ私に勝てないよ」

「……昔だったら」

「なに?」

浮いていた両足を地面へ降ろし、ユーリカは笑ってその顔を上げる。

口からまた血を溢しながらも彼女は笑っていた。

「今の私は……半分ドラゴンだから」

土の串をドラゴンの皮膚で耐えきった彼女は、その剣を振り上げカミーラへと降ろす。

慌てて後退したカミーラは、足をもつれさせて尻から地面へと倒れ込んだ。

「限界みたいね?」

「ああ。私以上にお前の方がな」

「……仕方ないのよ。私たちは実験体なんだから」

カフッと塊の血を吐いて、それでもユーリカは握った剣をカミーラに向けて振りかぶった。

「またドラゴンに乗っ取られる前に……ノイエをころさないと」

「十分乗っ取られてるだろう? でもまあ、これで初めて私がお前に負けたと言うことか」

激しく頭を振り正気に戻ったユーリカに向かい、手にしている棒を地面に放りカミーラは笑ってみせた。

「この勝負はお前の勝ちだ」

「ええ」

「でもな」

「?」

鼻で笑ってカミーラは訝しむ相手を見た。

「旦那との勝負は、旦那の勝ちらしいぞ?」

「っ!」

気付いたと同時にユーリカは自身の両足に違和感を感じた。

目を向けるのと同時に上半身がゆっくりと地面に向かい倒れだす。

どんなに踏んばっても意味が無いのは自分の目で確認出来た。太腿から上下に別れたのだ。

それを成したであろう人物は、振り抜いた棒に振り回されて一周していたが。

「うっし! 僕の勝ち」

「……」

非難の言葉を口にする前に、ユーリカは地面へと激突した。

姐さん。視線で語られてもこっちは全く分からないのです。

「言葉にして欲しかったわ」

「察しろ。スハならこれぐらい察していたぞ?」

「……良く分からないけど、僕はスハさんと言う人に同情しました。それも激しく」

「……好きに言ってろ」

やれやれと頭を掻いた姐さんが、太腿から下を失ったユーリカさんを見つめる。

「ノイエの旦那はドラゴンが相手ならノイエ以上の実力を発揮する。それ以外はノイエに遠く及ばないがな」

「記憶力とか勝ってますけど?」

「あん?」

「ノイエの勝ちで良いです」

基本ノイエに甘々な彼女たちは、どうやら僕がノイエ以上だと言う部分があることすら許さないって感じだ。

「お前が自分の口から『半分ドラゴン』の言葉を得たからな。旦那の祝福が利くかは半信半疑だったが……まあホリーの助言を信じてこんな博打をした訳だ」

苦笑しながらカミーラさんは地面に横たわるユーリカを見つめる。

負けを認めたらしいユーリカは、背中を地面に着けて空を見上げる。

とても晴れ晴れとした表情で空を見る彼女は、知性を宿した目をしていた。

「やっぱり勝てないんだ」

「そうだな」

「……」

「私が優しい言葉でもかけると思ったか?」

「思わない」

「正解だ」

笑って姐さんはユーリカの胸を叩いた。

何故かその表情を曇らせて……数度叩いて息を吐いた。

「全く……ノイエの為に自ら死を望んだお前がどうしてこんなことを?」

ユーリカは辛そうな表情を見せる。

「甘く囁いて来るの。頭の中で何かが甘く……気づくとそれに意識を乗っ取られて、私たちは獣になっているの」

「どんな風に唆された?」

「恥ずかしいけど……ノイエがずっと私に言うの。『もう死にたい。こんな辛い場所に居たくない』って。その言葉と私の記憶が色々と混ざってしまって。最後に共和国の魔女とか言う人物にノイエを殺すように命じられてね」

「恥ずかしいな。それは」

笑って姐さんがこっちを見た。

「悪いな旦那。出来たらノイエに見られたくない。このままユーリカをっ」

「ん?」

話の途中ですが、ノイエから色が抜けて行くのです。

って姐さん? 普通ここで落ちますか?

普段のノイエに戻った彼女は、ゆっくりと辺りを見渡し……そしてその目がユーリカを見た。

目を見開いた驚いたノイエは、咄嗟にユーリカを抱き起こすと僕を見た。

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