軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

貴女が可哀想だから手加減していただけよ

「んっ」

ピクッと反応して少女……ファシーは辺りを見渡した。

右側の通路を護っている彼女は、カミーラが作った串の壁を見つめる形で膝を抱いて座っている。

不意に"彼"の声がした気がしたが、気のせいだったらしい。

「誰も、来ない」

そっちの方が色々と都合がいいけれど、師匠であるカミーラがそれで許してくれるか分からない。

なら誰か1人ぐらい来て欲しい気もするが。

「……ふふ……あははっ」

誰か来ないかと念じていたら笑ってしまった。

溢れ出た魔力によって刃が四方の壁を叩いたが、ここに居るのは自分とジャルスのパーツぐらいだ。

運悪く飛んだ刃の1つが彼女の物言わない頭部の部品を斬ってしまったが、そんな所に置いてる方が悪いとファシーは開き直った。

「アルグスタ、様に……早く、逢い、たい」

頬を赤くして、ファシーは自分の膝に顔を押し付けた。

話は少し戻る。

「彼がノイエの旦那かね? 普通に見えるが?」

「普通だよ」

「なに?」

「だから普通さ。何処にでもいる元王子だ」

壁から背を離しカミーラはエウリンカの前に立った。

「なあエウリンカ」

「何かね?」

「私と賭けをしないか」

「賭け?」

「そうだ」

ニヤリと笑って、カミーラはノイエの目から見える彼女の夫を指さした。

「私はあれが今からどうにかする方に賭ける」

「ふむ。それで?」

「私が外に出れたらお前が集めた魔力の全てを私に寄こせ」

「自分が勝ったら?」

「全員死んでおしまいだ」

カミーラの言葉にエウリンカは顎に手をやり考え出した。

「圧倒的に損をしている気がするが、まあ良いだろう」

「なら成立だ」

言ってカミーラは魔眼の中枢である台に腰かけた。

「出れるのかい?」

「出れるさ」

エウリンカの問いにカミーラはあっさりと頷く。

「根拠は?」

「……あの男は基本馬鹿なんだよ」

「馬鹿だと?」

「そう。で、そのわりと馬鹿な男はノイエを前にすると暴走する」

やれやれと肩を竦めてカミーラは魔力を高める。

「旦那の危機にノイエが動かないなんてことはあり得ない。結果……私の勝ちさ」

案の定、外のアルグスタはユーリカに噛みついた。

ノイエは知っていた。

彼女は……"ゆーお姉ちゃん"は強かった。

あの赤髪の棒をブンブンと振り回す人ぐらいに強い。

だから彼女の前に立てば自分なんて決して勝てない。今も勝てない。

それなのに"大切"な彼は彼女の前に立っている。

「……ダメ。アルグ様っ」

どうにか紡いだ言葉に彼は反応しない。自分の前から動かない。

ノイエは胸に激しい息苦しさを覚えながら彼の背を見る。

失ってしまうかもしれない恐怖。大切な彼を、一番好きな彼を失ってしまうかもしれない。

こんな時どうしたら良いのかノイエには分からない。分からない。

いつもなら自分が動いて盾になれば良いのに、体が震えて動かない。

怖い。怖い。

失ってしまうかもしれないことが。お姉ちゃんの言葉が。全てが"怖い"のだ。

『なら願いなさい。ノイエ』

不意に耳に届いた言葉ははっきりと記憶に残っている女性の物だった。

『貴女は1人じゃない。 仲間(かぞく) が居るのだから』

1人じゃない?

震えが止まった。ノイエは顔を上げて小さく頷く。

だって姉の言葉はいつも正しかったから。カミューの言葉に間違いは無かったから。

「助けて……お願い」

ノイエの意識が途切れた。

手にした棒を振るってカミーラは自身の前に居るユーリカを睨みつけた。

「久しいなユーリカ」

「……」

「こんな姿をしているから気づかないか? でもこれには見覚えがあるだろう?」

振るった棒は土を固めて作りだした物だ。

普段"彼女"が鍛錬の時に作り振るっていた獲物。

「……カミーラだと言うの?」

「まあな。こんな姿をしているから信じて貰えないだろうが……お前の姿も大概だ。だから信じろ」

軽く鼻で笑うノイエの様子にユーリカは、はっきりと相手の本質を見た。

静かに腰を下ろして改めて剣を構える。

「テリーズ家は元々武勇に優れた一族だった。お前は間違って生まれたとか言ってたな?」

「忘れた。そんな言葉なんて……記憶にない」

静かに構えた剣の先を揺らし、その目に知性を宿したユーリカが目の前の獲物を見つめる。

だがカミーラはただ悠然と棒を振り回してから構えてみせた。

「私に一度も勝てなかったお前が勝てるのか?」

「勝ったら貴女が可哀想だから手加減していただけよ」

「いつもそう言って負け惜しみしていたな。なら勝負だ」

「良いわ。私が勝つから」

「なら……開始だ」

ニヤリと笑いカミーラから動いた。

鋭く相手の喉を狙った攻撃に、ユーリカは上半身を捻りつつ一歩踏み込み突きを狙う。

軽く笑って身を捻り踏み込んだカミーラは、相手の額に頭突きをお見舞いした。

「ぐっ」

「ほらどうしたユーリカ? 何度これでお前は負けた?」

「うるさい!」

額に痛みを覚えながら後退するユーリカを追ってカミーラは前進を繰り返す。

小刻みに棒を振るって相手をけん制しながら隙あらば突きを放つ。

防戦一方のユーリカは、その半ばドラゴンの皮膚を纏う顔に笑みを浮かべて回避を続ける。

懐かしむ様に2人を殺し合いを続けるのだ。

本気でやり合っている姐さんがチラチラとこっちを見る。

何だろうと思ったら……僕の足元に棒が転がっているのです。

姐さん? この棒で何をしろと言うのでしょうか?

一騎打ちで背後からの攻撃とかしたら……宮本武蔵の巌流島がそんな感じだっけ? 爺の小次郎を弟子がタコ殴りにしたとか何とか。

つまりは勝って相手の口を塞げばいいんですか? 良いんですか?

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