軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

……気合?

「外の音が止みましたね?」

こっそりと窓の外を眺めていたパルの言葉に全員の視線が窓に向く。

結局アルグスタの執務室に残ったのは、見た目が子供な大人と年相応の姿をした双子などだ。

唯一窓では無く扉を見ているのは、小柄なメイド服姿の少女。

言われた通りに全員を護るんだと強い意志を持って扉を睨んでいる。

ただしポーラは知らない。

城内に居た意識不明者は、王国最強のメイドコンビの手により無力化されていることを。

そしてその2人が後始末を優先することでアルグスタの執務室に戻れないことを。

結果……夕刻まで扉を睨み極度の緊張状態を維持し続けたポーラは、扉が開いたと同時に緊張の糸が切れて卒倒するのだった。

「暴れているのは……仕方あるまいな」

騎乗のハーフレンは部下に指示を出しながら、拘束した者たちを2つに分けていく。

1つは過去のトラウマから恐怖の余り突発的に武器を手に取り暴れる市民。もう1つは意識を失い獣のように暴れる者たちだ。

前者は人殺しをしていないのであれば、ひと晩牢屋で過ごして貰い……冷静になった所で帰宅させる方針だ。

だが獣と化した者たちは救いようがない。精神系の魔法を行使されていると判明している。

「ハーフレン様」

フードを被ったローブ姿の人物がツカツカと歩いて来る。

その様子にハーフレンは肩を竦めて笑っていた。

「イーリナ。戦場でフードは危ないだろう?」

「いいえ。必要です」

「分かった好きにしろ」

キッパリとそう言って来る相手は近衛の魔法隊隊長イーリナだ。

能力の高さと生真面目さが売りの女性であるが……彼女には変な特徴がある。自身が認めた人物にしか顔を見せないのだ。多分素顔を晒すのが恥ずかしいのだろうと思っているが、大浴場にまでフードを被りローブ姿で突入しようとした過去を持っている。筋金入りの偏屈者なのだ。

「それで何か分かったか?」

「はい」

ただしその能力は抜けている。

生まれる時期がもう少し早かったのならば、『あの日』の餌食に遭っていたかもしれないほどに。

「子供の殺人事件がありましたね?」

「ああ。王都内で何人か報告があったな」

「はい。その事件現場で不穏な魔力の高まりを検知しました」

「……本当か?」

目を細めハーフレンはローブの女性を見る。

「現在魔法学院の協力を要請し調査していますが、間違い無く禁呪の類だと思われます」

「厄介だな。魔法は専門外だ」

「ええ。ですからこっちの件は魔法隊の方で処理します」

もう会話は終わりとばかりにイーリナは上司に背を向け歩き出した。

「お~い。ちょっと待て」

「何か?」

「処理をするのは良いが報告はしろ」

「……ちっ」

「今舌打ちしただろう?」

「気のせいです。ああ面倒臭い」

「お前はそれだからあっちこっちをだな……おいっ! 人が喋っているのに……全く」

さっさと両手で耳を押さえた彼女はその場から立ち去って行く。

その能力の高さは群を抜いているのに、色々と問題行動や発言で居場所を失ったのがイーリナなのだ。

ただし能力だけは抜けているから、ハーフレンが引き取りどうにか扱っているのが現状だ。

「アイツはアルグの部下をしている方が似合ってる気がするんだがな。アルグならあれぐらいの変人でもどうにか扱うだろうし」

ハーフレンの中で弟の存在は対変人の最終兵器と化していた。

「暴れている者たちの捕縛を急がせろ! 王都内を護るのが近衛の仕事だ!」

嫌なことは声を上げて吐き出すに限ると言わんばかりに、ハーフレンは腹の底から声を出して部下に指示を飛ばした。

「問題は……底から誰が出て来るかよ」

魔眼の中心と呼ばれる椅子のような場所に腰かけたホリーがその表情を冷たくさせる。

『死の指し手』

どんな犯罪でも完璧に隠してみせた頭脳明晰の天才がその本領を発揮しているのだ。

「たぶん~ジャルス~だろ~ね~」

「そうね」

「一応~こんな時は~ミャンが~中央に~来て~くれるけど~」

フワフワと揺れるシュシュは、ユーリカが剣を振る度に大きく体を動かす。

剣先から逃れない逃れられないノイエは、傷を作ってはそれを癒している。

「右は?」

「カミーラの~担当だね~」

「左は?」

「私だね~」

「……何で居るのよ?」

「セシリーンが~居るから~平気だよ~」

フワフワと揺れるシュシュはそう言って歌姫を見る。と、動きを止めた。

「冗談にならないんだけど?」

「全くね。良かったわね? シュシュ……ここに居て」

ホリーも視線を向けてそれに気づく。

自身の胸を押さえ苦しがっているセシリーンの様子に2人は理解した。

「シュシュ!」

「ほいさ~」

気の無い掛け声だがシュシュの魔法は超一流だ。

封印魔法のみならば大陸屈指の実力と言われる彼女が放つ力によって、セシリーンが拘束されその身を封じられた。

「ノイエが引っ張っているみたいね」

「だね。でも前回のアイルローゼとは違ってセシリーンだから助かったよ」

ちゃんと口まで拘束し、彼女の武器を奪ったシュシュはその目をホリーに向けた。

「左側の通路……どうしよう?」

「誰かが堰き止めると信じるしかないでしょう!」

「ホリーが行けば?」

ブンブンと青い髪を振り回しホリーは顔を振る。

「冗談! あんな化け物たちをどうやって止めろって言うのよ!」

「……気合?」

「止めてよ。ノイエじゃ無いんだから」

それがホリーの本音だった。

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