軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゆー?

「……」

城へとやって来たフレアは、正面門の片方が開かれている事態を不審に思った。

だが謎は直ぐに解決した。巨躯の馬に跨った彼が飛び出して来たからだ。

『ナガト! お前を信じたからな!』などと騒いでいる元上司の姿を見送り、フレアはゆっくりと正面門へと歩み寄る。

「何事でございますか? スィーク様」

「ええ」

何故か笑顔で上機嫌の相手を見つめ、フレアは今日がこの国の終わりかもしれないと漠然とそう思ってしまった。

「アルグスタもユニバンスの男だと言うことです」

「……意味が解りませんが?」

素直に聞いたらとても冷たい視線を向けられる。

やれやれと肩を竦めたスィークは、フレアに門の中へ入るよう指示をする。

正面門が閉じられると、スィークは改めて口を開いた。

「どんなに危険があるとしても彼は妻の元へ行くそうです。本当にユニバンス王家の者は……馬鹿ばかりで困ります」

「そう……ですね」

返す言葉が見つからず、どうにかその返事を絞り出したフレアは、そっと自分の胸に片手を当てた。

トクントクンと高鳴る鼓動が、最愛の人のことを思い起こさせる。

自分もまた……そんな馬鹿な人物に救われた1人なのだと、その想いを噛み締めてしまった。

「さあフレア。甘えるなら掃除を終えてからになさい」

「……はい」

歩き出した前任者に続き、フレアもそっと自分のメイド服を叩く。

魔道具『影』を得てから改良したメイド服のスカート部分がヒラヒラと揺れ出す。

肩越しに視線を向けて来たスィークが軽く笑うと、彼女はどこからか短剣を引き抜いて見せた。

「城内の掃除をします。歯向かう者は全て掃除なさい。良いですね?」

「はい。スィーク様」

頷きフレアはまた歩き出す。砂鉄が使えない場合にのみ使う『影』を呼び起こして。

ノイエは何も変わらずドラゴン退治をしていた。

不意にお城の方から煙が見えたが、彼が居る場所からは煙が見えないので行かない。

少しだけ『煙が出てれば良いのに』と思ったが、彼が危なくない方が良い。でも助けたら撫でて貰えるかも? と思考の堂々巡りを繰り返していると、不意に嫌な気配を感じてそっちに足を向けた。

前に感じた嫌な気配に似ている。

えっとあれだ。あの良く触って来る人に似たドラゴンと人とが混ざったような……でもたぶんドラゴンだから殴っても良いはずだ。あの良く触って来る人を殴ろうとしたら彼が物凄く悲しそうな顔をする気がするから我慢だ。別のは全部殴って良いはずだ。

辿り着いた場所でノイエは拳を握った。

目の前に立つ人物は桃色の髪をした……そこでノイエの思考は停止した。

完全に止まり、そして無意識に両腕を抱いて震えだす。

桃色の髪。桃色の瞳。その色を持った人物が目の前に居るのだ。

「みつけた……ノイエ」

「ゆー?」

ガクガクと震えるノイエに彼女……ユーリカは黒く固まった血で汚れる口を開いた。

「あはは……おぼえてたんだ。そうよ。わたしよノイエ」

「……」

剣を抜いて笑う相手にノイエは膝から崩れるように地面に座り込んだ。

ただ震え、その目からは涙を溢す。

一歩二歩と歩みを進めるユーリカは、パックリと割れたように口を開いて言葉を放った。

「あなたにころされた……おねえちゃんよ」

「いやっ! いゃ~!」

耳を押さえノイエは絶叫する。

ユーリカは泣き叫ぶノイエに近寄ると、握った剣を振るった。

外れることなく彼女の髪の毛……触角のような髪を打つ。

ギィンッと鈍い音をさせ、はらりはらりとノイエのアホ毛が解け出した。

「どうして出れないのよっ!」

五体満足で魔力を要している者と言うことで、最初に飛んで来たのはホリーだった。

ファシーとの戦いを終えてから彼女はずっとミャンの元で修行していた。あの施設で一応魔法について学んだが、実など入っていない勉強など学んでいないのと一緒だった。

しかしあのファシーが現在魔法を学んでいると知った。それも『彼』の為にだと言う。

負けられない戦いが継続することとなり、師を求めてホリーはミャンに弟子入りした。

貞操以外なら好きにして良いと、髪の毛をワラワラと動かし 脅迫(おねがい) した甲斐もあってミャンは涙ながらに応じてくれた。

「何がどうなってるの!」

ここで格好良くノイエを救って夫である彼とたっぷりひと晩……などと考えて居たが、それでもノイエを救うのは最優先事項だった。

しかし出れない。どんなに魔力を高めても外に出ることが出来ない。

「誰か説明してよっ!」

言ってはみるが、魔眼の中枢に居るのはホリーとセシリーンのみだ。

「……魔法は専門外だから」

「知ってるわよ !専門家はっ!」

「えっと……」

常に目を閉じているセシリーンは、軽く顔を上げて耳を澄ませる。

「あっ来たわ」

「あは~。呼んだ~?」

「呼んでないっ!」

フワッと現れたシュシュにホリーは言って捨てた。

「もう~ホリーは~私に~厳しい~ぞ~」

「なら答えなさいよっ! 外に出れないの! 理由は?」

「あは~。難しい~ことは~アイルローゼに~でも~聞いて~」

「本気で腹立たしいっ!」

流石に余裕が無いからか、ホリーは髪を振るってジタバタ暴れる。

目の前まで来たユーリカがノイエに向けて剣を構えたのだ。

「斬ら~れる~」

「解説しないでっ!」

振るわれた剣先がノイエの太ももを斬り裂いた。

「あは~」

フワフワとしてシュシュが動きを止めた。

「冗談抜きでノイエの身が危ないね」

流石のシュシュですら切迫した状況を把握した。

「もう何度か食らったら……洒落にならないわよっ!」

ホリーも焦り要となる場所でもう一度魔力を高める。

「このままだと……」

シュシュが言い終る前に剣先をノイエがまた受ける。

すると魔眼の中が一瞬暗くなった。

「あは~。これで全員が気づいたかな?」

「最悪よ」

ため息交じりでホリーは頭を掻いた。

不意に生じた暗闇に……彼女はそっと床から体を起こした。

軽く身を振るわせ、小さく背伸びをする。

「ふむ。ノイエの危機か。丁度良いな」

言って黒い長い髪を手櫛して彼女……エウリンカは、いつの間にかに小振りの短剣をその手に掴んでいた。

「さあ捜索の魔剣よ。 鞘(アイルローゼ) の元に帰るが良い」

命じて宙に放る。すると短剣は床に落ちることなく空中で停止するとクルクルと回り出した。

「うむうむ。さあ案内してくれ」

魔剣の後に続いてエウリンカは歩き出した。

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