軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

がんば、る!

「ごめんね皆。ここから先は通行止めなんだ」

ボーイッシュな感じの女性を前に、通路の奥からやって来た者たちが彼女を睨む。

しかし複数の視線に晒されても、女性……ミャンは一歩も引かない。

「ノイエの危機に馳せ参じるのは良いことだと思うよ。でもさ……私たちって普段ノイエのことをあの人たちに任せっきりでしょ? だったら今だって任せるのが普通だと思うんだよね」

言ってミャンは軽く腕を振る。

分かっている。奥から出てきた者たちが何を望んでいるのかなど。

代わり映えしない生活に疲れ果てて奥に引っ込んだ者たちが望むもの……それは刺激だ。

だからこそミャンは許せない。

「暴れたいなら隣同士で殴り合えば良い。それもやらずにノイエの魔力を使って暴れたいだけだとか言うなら……この"絞殺魔"の実力を知るが良い」

同時に魔法の詠唱が始まる。

「広がれ広がれ広がれ! 数多の存在を縛り上げる網と化せ!」

ユニバンス魔法学院で講師を務めたミャンの実力は折り紙付きだ。

彼女の詠唱能力は最終的に上位に食い込んでいた。

『努力の人』『不屈の女』

ミャンを知る者なら必ずやそう告げる代名詞だ。

「捕縛!」

幾重にも広がる魔力の網で相手を絡めて封じていく。

丁寧に口も塞いで……死ぬ心配も無いから呼吸の心配すらせずに完全に封じ込む。

「まっ……私たちはあの人たちの活躍でも見てようよ」

少年のように笑いミャンはその場に座ると天井を見上げた。

「ノイエとその家族は最強らしいから、さ」

「やっぱり来たか……ジャルス」

「カミーラか。退きな」

長い紫の髪を掻き上げ、妖艶な美女が笑う。

それに相対するのは、長身の引き締まった四肢を持つ綺麗と言うよりも格好良いの言葉が似合う赤毛の女性だ。

「冗談? 私がお前を通すと思ったのか?」

「通さないのか?」

「ああ……お前を外に出すと面倒臭い」

告げて赤毛のカミーラは、その手に一本の棒を作り出した。

最終的に剣から槍へと獲物を変えたカミーラだが、あくまで自身を強くするための選択だった。

故に棒であっても彼女の攻撃力は決して衰えない。

「やるなら相手になるよ」

言って美女もその手を振るう。

彼女が左右の手に握ったのは、こん棒だった。

『破壊魔ジャルス』

敵味方問わず戦場で破壊し続けた女の名がそれだ。

だが彼女には決して許せない存在が居た。それは自身よりも悪名を轟かせる『串刺し』の存在だった。

「昔からお前を殺したかったんだよ」

「そうか。知らなかった」

「ふざけろっ!」

突進して来る相手にカミーラは小さく笑うと、棒を肩に担いで軽く壁を叩いた。

ザンッ!

「悪い。この後があるからお前の相手をしてる暇がない。しばらくバラバラになって黙ってな」

四方からジャルスに襲いかかった槍が彼女を串刺しにし、その五体をバラバラに引き裂いた。

土くれの通路などでは無敵を誇るカミーラの串刺し地獄。

物理的攻撃であるが故に突破できる者はほとんど居ない。

「さて……ファシー」

「……は、い」

ひょこっと通りの角から顔を覗かせた栗毛の少女が駆けて来る。

「私は中枢に行くから、お前はあれを破って来る者が居たら迎え撃て」

「……」

恐怖に少女の顔が笑顔に歪む。

カミーラはその目を細めて言葉を続けた。

「旦那の為に魔法の勉強をしているのだろう? それとも私に嘘を言って魔法を学んでいるのか?」

「ちが、う」

「だったら根性を見せな。これをこなしたらまた勉強を見てやるよ」

「は、い」

必死にその身を震わせ笑顔を抑え込む少女の頭を撫でて、カミーラはその場を"弟子"に任せた。

少しでも夫であるアルグスタの為にと、自身の恐怖と戦い魔法を学びたいと言うファシーの根性を気に入ったのだ。

どんなに弱くても、どんなに下手くそでも、必死に学び根性を見せる者がカミーラは好きなのだ。

「頑張れファシー。これが終わったら旦那の元に遊びに行っても良いぞ。ご褒美だ」

「がんば、る!」

ギュッと両手を握り締め、高まった魔力で不可視の刃を少し飛ばしながら……ファシーは門番宜しくその場に立ち続けるのだった。

「誰も~来ないね~」

「左側は誰が居るのかしらね?」

ファシーが単独で迎え撃つなど考えられず、治療魔法の使い手であるリグはアイルローゼを舐めている。半身を焦がしたアイルローゼは置き物と化し、彼女の怒りに触れたレニーラは半分になっている。グローディアは魔眼の中を徘徊し、セシリーンは部屋の隅で拘束中だ。カミーラが仕事をしているとしたら……誰も居ない。

「ちょっと絶望的な空気を感じる」

「頑張れホリー。そろそろ私も限界が近いぞ」

「死ぬ気で頑張りなさい」

言っても状況は絶望的だ。

どんなに魔力を高めても外に出れない状況。それを知らずに底から出てきた者たちがこの中枢にまで来れば、ただ大量の魔力が集中することになりノイエの体は増々動かなくなってしまう。

《せめてノイエが逃げてくれれば》

願わずにいられないホリーは、そっとノイエの目を介して外を見る。

ユーリカがゆっくりといたぶるように振るう剣の先が、ノイエの肌を割いて傷を作る。

じわりじわりとその傷の治りが遅くなっている。

このままだとノイエの傷が治らなくなる。祝福を使い果たし、ただのノイエに戻ってしまえば……殺すことなど容易なのだ。

「ノイエの弱点を知ってる人が何で生きてるのよ!」

流石のホリーも叫ばずにはいられなかった。

だって彼女は、目の前に居るユーリカは……ノイエの為に自ら命を絶った人物なのだから。

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