軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

彼女は処刑されたでしょう?

「ユーリカ・フォン・テリーズが生きていると?」

仕入れて来た情報を伝えると叔母様の第一声がそれだった。

「相手がユーリカと言う確証は無いですが、モミジさんが出会った相手がそれらしいのです」

「彼女は処刑されたでしょう?」

「ええ」

「……」

紅茶をひと口啜った叔母様が、持っているカップを揺らしだす。

「アルグスタは知っていたわね? "あの"場所を作ったのが誰かを?」

「はい」

「……つまりこのわたくしに責任を取れと?」

「……」

あっ! そう言うことになっちゃうのか。そんな気が無かっただけに吃驚だ。

「責任と言うより処刑したはずの罪人が王都に居ること自体が正直宜しくないんです。あの処刑を指揮したのは王家ですので」

「貴族たちに気づかれ騒がれると厄介であると?」

「はい」

カップを揺らし、中身を回していた手を止めた叔母様がこっちを見る。

「……らしく無いわね」

「はい?」

「貴方は基本ノイエの為にならないことには積極的ではない。つまり貴方が動くと言うことは、そのユーリカが何かしらノイエと関係しているのでしょう?」

「……」

本当にこの人は厄介だ。頭の回転が良すぎるんだよな。

「あの施設でノイエと知り合いであった可能性があります」

「誰からの情報?」

「言えません。これは国王陛下からの厳命でして」

「そう」

また一口紅茶を口に含み、彼女は軽く笑った。

「引き受けることは出来ないわね」

「理由は?」

「相性が悪いとしか言えないわ」

カップをセンターテーブルに戻し、彼女は言葉を続ける。

「ユーリカの魔法は目を使うのでしょう?」

「そう言う話です」

「それだけでしたらわたくしの敵では無いのですが……アルグスタはもう1つの施設の詳しい話は?」

「先日兄から報告書を得ました。その中にユーリカの名が」

「なるほど」

彼女は一度腕を組んで数度頷く。

「ならばあの場所でどんなことが成されていたのかは?」

「何かしらの人体実験をしていたとしか」

「でしょうね。だからハーフレンは心配し過ぎなのです」

「はい?」

「あの馬鹿王子は母親が大好きですから」

クスッと笑い叔母様は口を閉じる。

えっと……馬鹿兄貴が心配して、お義母さんに関係していること? そんなのドラゴンっ!

たぶんの正解を導き出して僕は彼女を見る。

「たぶん正解でしょう。あの施設に居た者全てかは知りませんが、その可能性があります」

「そうなると?」

「現状ユーリカを仕留めることが出来る存在は、貴方が最有力でしょうね。次点でノイエとあのモミジと言う小娘か。わたくしでは刃が通りません」

「……」

こんなパターンでの八方塞がりは想定していなかったよ。ただそうなると、今度ばかりは仕方ない。

「ユーリカを発見して無力化するのは?」

「相手の魔法を封じればどうにかなるでしょう。ですが彼女が大人しく魔力封じを受けるの?」

「抵抗するでしょうね。そして使われる魔法は精神系だ」

「ええ。だったら遠距離から仕留めるのが確実でしょうね」

やんわりと立ち上がった叔母様が、無表情で僕を見た。

「ちなみにあの施設を、あの馬鹿ガキの部下より先に乗り込み捜索したのはわたくしです」

「はい?」

「ハルムント家の係わりを示す資料を全て廃棄しなければいけなかったので」

「……そっちのことは僕は知りませんよ」

「ええ。本来の貴方はそう言う人です。アルグスタ」

軽く笑うと彼女は部屋を出て行った。

代わりにポーラが飛び込んで来て心配そうな顔で僕を見る。

「だいじょうぶですか?」

「大丈夫だよ。叔母様は優しい人だから」

「はい」

だけども心配そうに見つめて来るポーラは……ふと扉の方を見たら、元メイド長が何とも言えない視線で僕の妹を見つめていた。

違うんです。この子はまだ貴女様の優しさを理解していないのです。

「良いかいポーラ」

「はい」

彼女の肩を掴みその目を見つめる。

「スィークさんは本当に優しい人だからね」

「……はい」

「厳しい感じで接して来るけど、あれはあの人の優しさだから。他人に厳しくする人は自分にも厳しいんです。相手のことを心の底から思っての厳しさなのです。でも本当は凄く優しいのです」

「……やさしい?」

「そうです。ポーラもしばらく接して居れば分かります」

「はい。がんばります」

たぶんクレアやチビ姫が『怖い人』と言う先入観を植え付けたに違いない。

スィーク叔母様は本当に優しい人なのです。そんな言葉を連呼しポーラの心に植え付けている間に叔母様がその姿を消していた。

危なかった。ポーラまであの人の餌食になってしまう所だった。

「にいさま」

「ん?」

「わたしがんばります」

「うん」

「だから……なにかあったらいってください」

真新しいメイド服越しに胸を張り、ポーラが僕を見つめて来る。

「わたしはにいさまやねえさまによくしてもらってます。このおんをいっしょうをかけてかえさないと」

「……馬鹿だなポーラ」

「はい?」

相手を持ち上げ向きを変えて膝の上に座らせる。

「ポーラはそんな風に考えなくて良いの。大きくなったら自分が出来ることで僕らを助けてくれれば良い」

「でも」

「良いの。それに僕らはこう見えても凄いんだよ? だからポーラが無茶をする必要はありません」

でもその気持ちは嬉しいから頭を撫でてあげる。

そうだ。僕がやるしか無いならやるまでのことだ。絶対にユーリカをノイエと会わせちゃダメなんだ。

「良し。そうと決まればお仕事だ」

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