軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最強を相手にぶつけたいんです

「ちょっと御用が……ありませんっ!」

馬鹿兄貴の執務室に突入しようとしたら、背後に居たメイド長の視線があれだったので逃げ出した。

『待てよアルグ~』と弱り切った救援を求める声など無視だ。誰だ……馬鹿兄貴を焚きつけて捜査の方を強化させようと考えたのに絶対的なストッパーを召喚したのはっ!

やり場のない怒りを覚えつつ自分の執務室へとやって来た。

入ると全員の視線がこっちを向く。基本お子様体型な住人たちな4人がケーキを手にしてだ。

ポーラは良い。良く食べて肥えろ。最近ようやく食べるようになって来たしな。

イネル君とクレアは部下だからまあ良いか。ただ最近クレアが少しポチャって来たような? 体重計と言う名の秤を今度彼らの自宅に届けてあげよう。

で……何故かいつも通り普通に居るチビ姫はどうなんだろう? 君の職場は少なくともここでは無いはずだ。

「チビ姫や」

「はいです~」

「何故にいつもここに居る?」

「? ケーキが食べられるです~」

それで良いのか現王妃?

「それにシュニット様が『お前はアルグスタの部屋に居る方が楽しいだろう?』と言うです~。だからこの部屋に居て楽しむです~」

犯人は国王陛下でした。

「なら仕方ない」

納得は出来ないけど自分の椅子に戻り腰かける。

対ドラゴンに特化している僕の人員は、正直対人には弱すぎる。

この部屋は事務室兼任だから事務要員しか居ないのは仕方ないとしても、郊外の待機所に居るのは……売れ残りと巨乳だけだ。ぶっちゃけあの2人に捜索を命じて良いのか?

ミシュは……無理そうだな。基本馬鹿だし。人探しとか一番合わなそうだしな。

つまりはルッテの祝福に頼るしかないか。ただ発見したユーリカをどう捕らえるか?

待機所の兵はあくまであの場所の維持防衛の為に置かれている存在だ。

何より僕が兵を持つことを貴族たちは極度に嫌っている。ノイエと言う規格外な存在を得ているのだから、それ以上を望むなと言う訳だ。

ふざけやがって……お蔭でこんな時に八方塞がりだよ!

「ん~」

唸って天井を見上げる。

本来ならルッテが見つけてノイエが叩くがウチのスタイルだ。

ドラゴンが相手ならそれで良いし、今までもずっとそうして来た。

ただ今回はそれが使えない。ノイエを当てられない時など想定していない。

「ん~」

「……にいさま?」

「ん?」

恐る恐る掛けられた声に顔を動かす。

お盆にティーカップを乗せた彼女が居た。

「どうぞ」

「ありがとう」

受け取り改めて見ると……はて? ウチの妹はいつからメイドにクラスチェンジしたんだ?

何をどう見てもポーラは可愛らしいメイド服姿なのです。これはこれで可愛いから許せるが。

「その服どうしたの?」

「はい。あの……えっと」

「優しいスィーク叔母様と言えば良いんだよ」

「はい。やさしいおばさまがくれました」

何故か震えながらそう告げたポーラに何をしたのだ? あの規格外の化け物……居た。

「チビ姫っ!」

「はいです~?」

「スィーク叔母様は?」

「知らないです~。居ると煩いから、あのお婆さんは居なくて良いです~」

「……ほう。それはわたくしを呼んだ言葉と受け取りましょうか?」

案の定チビ姫の暴言にスィーク叔母様が不意に現れた。

逃げ出そうとしたチビ姫を脇に抱え、大変リズミカルに躾が行われる。

グッタリとして動かなくなったチビ姫はソファーに。クレアが慌ててスカートを捲って……廊下で待機しているメイドに氷嚢を求めた。

流石チビ姫だ。期待通り良い仕事をしてくれた。

「それでアルグスタ? わたくしに何か?」

普段通りやんわりとした声をかけて来る相手に半眼を向ける。

「ポーラに何を着せてるのさ?」

「ええ。その子が真のメイドを目指すと言うのでまず格好から」

「……」

チラリとポーラに視線を向けたら、ガタガタ震えながら頷いているので仕方ない。

「メイド服姿の騎士とか無理あるでしょう?」

「笑止ですアルグスタ」

「はい?」

バッとポーラを指さし叔母様が謳う。

「あのメイド服はわたくしが現役時代に着ていた物と同じ特注品。ドラゴンの皮を織り込み刃に強く槍の穂先も刺さりにくい一品」

「おおっ!」

「ただ打撃系に弱いのが難点ですが」

「おおっ?」

「ですがあれならば下手な鎧よりも防御力は優れております。ちなみに代金はドラグナイト家宛に回してありますのでご心配無く」

「心配になったよ!」

知らん間に何してくれているのだこの叔母様は!

「まっ良いや。似合ってはいるし」

「そうでしょう」

ドヤ顔の叔母様の見立ては確りしている。

ただ個人的にエプロンは後ろでただ縛るのではなく、ちょうちょ結びにして欲しい。

「ポーラ」

「はい」

呼んで彼女に背中を向けさせて、エプロンの紐を解いて結び直す。

「こっちの方が可愛さ倍増です」

「……ありがとうございます」

何をされたのか見えていないのに律儀にお礼をして来るこの子は本当に素直で可愛い。

よしよしと頭を撫でて……場が和んでいる今がチャンスだな。

「スィーク叔母様」

「何かしらアルグスタ?」

「はい。お願いがあるんですけど……」

スッと相手の表情が真面目になった。

「わたくしに依頼は……高くつくけれど?」

「少し訳ありで最強を相手にぶつけたいんです」

「……別室で話を伺うこととしましょう」

どうやら話は聞いて貰えそうなので、僕は叔母様と2人で移動した。

(c) 2020 甲斐八雲