軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

貴女に生きている価値もありませんっ!

「……」

王都を横断するように馬を走らせていたモミジは、何とも言えない空気に手綱を引いた。

今日も最後に王都の外周を軽く見回ってから待機所へ戻ろうとしていた途中だった。

確りと足を止めた馬から降りて近くの木に結び辺りを見渡す。

気のせいかもしれないが、とても不快に感じる気配を拾った気がしたのだ。

腰のカタナに手をやり、ゆっくりと辺りを見て回る。

この辺りは一般区画の比較的治安の良い所だ。自分に手を出すような不貞な者は居るかもしれないが、その時はスパッとやっても良いと言われている。

一応国外からの来賓であり厳密に言えば"国賓"扱いであるモミジは、自身の身を護る最低限の許可を国王シュニットから許されている。

ただ自分が剣を振るう相手はドラゴンかそれを狩る者を対象にしており、ドラゴン相手には決して負けないが2人の狩る者に関しては決して勝てずに居るのも現状だった。

「嫌な臭いですね」

呟いてスラリと刀を抜いて剣気を通すと、モミジは眼前の壁を斬って捨てた。

バタンバタンと瓦礫となって崩れた物の奥に見えたのは……地面に赤い命の終わりを告げる華を咲かせた少年の躯だった。

「で、貴女が犯人ですか?」

「……」

少年を殺害したのであろう人物が鞘に戻そうとしていた剣を止め、視線を突然現れたモミジへと向ける。

モミジもまた相手の様子を見て、ゆっくりと刀を鞘へと戻す。

桃色の髪。桃色の瞳。ボロボロのローブにも見える衣服を身に纏った女性からは、はっきりと危険な臭いしか感じられない。

「わたしはこの国の者ではありませんし、このカタナを振るう対象はドラゴンのみとしていますが」

スッと腰を落としてモミジは構えた。

「今お仕えしている人ならば、こんな物を見たらやることなど決まっています」

微かに笑ってモミジは一歩踏み込んだ

「死になさい。子供を殺すなど、貴女に生きている価値もありませんっ!」

「ナガト。その辺で適当にっ」

「……」

やっぱり愛馬だ。こっちを無視して勝手に水を飲み出した。

それはさておいて転げるように前へと足を動かし、外観的にはオンボロな建物に駆け込む。

外はボロボロだが、中は……それなりにボロい。それでも清潔に保たれているのはここが怪我人などを相手にする場所だからだ。

「先生っ! モミジさんは外見だけなら一級品だからって、手を出したら色々と面倒臭いことになりますよっ!」

「どう言う意味ですかっ! アルグスタ様っ!」

ここに患者として来る頻度が多い僕は、新規患者がどの病室に入るのかなど把握している。

結果として一発で当たりを引いたら……患者が上半身裸で激怒して来た。

「面倒臭いでしょう? 故郷のお姉さんが黙ってないでしょうし?」

「……そう言う意味でしたら納得です」

どう言う意味で何を考えたのかは聞かないであげよう。

何より現在進行形で一応眼福中である。

「あの~アルグスタ様?」

「ナーファも朝からご苦労様です」

「いいえ。これがわたしの仕事ですから」

包帯を取り替えていたのか、作業の手を止めたナーファが深い溜息を吐いた。

「一応女性が上半身裸なので……それを見る方が面倒臭いことになるかと思いますけど?」

「……ふぁぁああ~! 見ないで、見ないで下さいっ!」

「うむ。見なかったことにしよう」

相手が『見ないで』と言うのだから見たらダメだ。今からはもう見ない。

朝一登城したら『モミジさんが怪我をして診療所に運ばれました』とか報告を受けて結構焦った。

色々と忘れているけどモミジさんは僕の部下である前に、お預かりしている国賓なのです。

「それでナーファ? 先生は?」

だから一応色々と確認を取って報告書を書かないといけないのです。

「どの傷も傷跡すら残らんよ」

「いつもながらにありがとうございます」

「ああ。今回の患者は悪く無かったから許す」

「どう言う意味で?」

念の為に確認は忘れない。

本日の先生は、ドラマとかに出て来そうな色々あって地方に飛ばされやる気を無くしたようなお医者さんに見える格好をしている。つまりはモサモサのシャツによれよれのズボン姿だ。

「何か特別な鍛練でもしているのか? 普通の者とは筋肉の付き方が違うな」

「ええ。彼女は他国から預かっている国賓ですので。一応」

「そうか」

言って先生が木製ボードを投げて寄こして来た。

ざっと見た限り、打撲や打ち身などだ。傷はあっても裂傷では無く痣っぽい。

「これぐらいですか? たぶん頭に大きな病気を患って居ると思うのですが?」

「狂っていても異常が見つからないことなどよくある」

「それなら仕方ないですね」

本当に打ち身類だけで良かった。

「それで何が?」

「本人に聞けば良いであろう?」

「いや~。包帯の替えをしている所を覗いちゃいましてね。何となく直ぐに戻りたくない?」

「……聞いた話だがな」

そう前置きをして先生が教えてくれた。

何があって、そしてモミジさんが負けたのかを。

「聞く限りでは直接的な打撃戦で負けた訳では無いのだろうな。たぶん相手は何かしらの魔法を使ったと考えるのが正しい」

「魔法ですか……幻視の類の目くらましですかね?」

「そう考えるのが普通だろうな」

「いいえ違います。わたしはそのような術で負けてません」

着替えを済ませてやって来たモミジさんが、ペコリと一礼をして室内へと入って来た。

「何と言うか……相手に精神と言うか魂を食われたのです」

何を言っているのかちょっと分からないです。

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