軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

姉様助けて~

貴族(上級)区画を出て時計回りに南から順に回る。

次は工区と呼ばれる工業地区だ。その名の通り工業を推進している場所で、ここ数年ではドラゴンを材料にした商品が主な産業となっている。

「……」

「まあ見てて楽しい物じゃないけどね」

チラッと横目でそれを確認したポーラが視線を逸らしたので、そっと顔の前に手をやって目隠しする。

分解されたドラゴンが台車で運ばれて行くのはこの地区では当たり前のことだ。でもポーラにはやはり刺激が強すぎる。ただ……あのドラゴンを狩ってるのがノイエなんだけどね。

「ドラゴンはとても怖いから近づいちゃダメだよ」

「はい。よくいわれました」

「ただポーラだったら『姉様助けて~』と叫んだら助けて貰えるかもだけど」

「どうしてですか?」

ポーラが体を捩じって僕の顔を見つめて来る。

「ノイエは最強のドラゴンスレイヤーだからね。それにここに居る大半のドラゴンはノイエが狩ったものなんだ。だからポーラの声がノイエに届けば絶対に助けに来てくれます」

「ねえさまが?」

「うん。昨日ドラゴンを抱えて現れたでしょ? あんな風に子ども扱いしてます」

「……すごいです」

その一言しか言葉が出なかったのか、ポーラはそう言うとずっと僕の顔を見て来る。

やはり死体とは言え……死体だから見たくないのかもしれないな。

軽くナガトを促すと、察しの良い愛馬は早足で工区を通過してくれた。

「ここがもう1つの貴族区画です。さっきの場所より格の低い中級や下級の貴族さんの屋敷があります」

「おやしきがいっぱいです」

「だね。ここで広い庭を持つ屋敷とかほとんど無いからね」

何となく戸建ての住宅が立ち並んでいるような感じのする場所だ。

それでも小さいながらも庭だって付いているし、僕的な感覚だと日本よりアメリカな感じがする。

小さいながらも商店とかがあるので意外とここは暮らしやすいらしい。そんな商店の1つに幼い夫婦部下の住まいがあったりする。

パン屋の2階とかを手配するクロストパージュのオッサンもどうかと思ったけど、どうやらそのパンや自体がクロストパージュ家の息がかかっているらしい。

『どこも自前で密偵ぐらい雇っているぞ?』と馬鹿な兄貴が種明かししてくれた。

「領地の無い貴族さんとかが主に居る場所だから……普段の僕らには縁のない場所かな」

「はい」

なので早足で通過する。

「ここからが商区です」

「しょうく?」

「うん。主に商人さんたちが居を構えている場所だね。ただここらは他国との貿易とか、大口の取引とかそっちの方が多いので……普段の買い物には向かない場所だね。それでも他国の珍しい物とかを買いたくて訪れる人も居るけど」

「はい」

頷いたポーラはキョロキョロと辺りを見渡す。

他国の商品が気になるのかもしれないが、安全の為にその辺の商品は建物の中なのだ。

店先に置かれているのは簡単に盗めないような大きな物だったり、逆に盗まれても痛くないような廃棄処分品だったりする。

ちなみに我がドラグナイト家の場合は、この辺の商人をお城に呼んで買い物をするのでこっちには来なかったりする。

「他国の珍しい物とかはいずれじっくりと見ようね」

「はい」

本来なら次の他国の要人が住まう外交官区に行くのだけど……僕がその辺をうろついていると問題になりそうなのでスルーする。共和国とか帝国とか結構恨みを買ってるしね。何かあれば最悪ノイエを呼ぶけどさ。

「第一外周はこれくらいかな? 第二外周は……主に駐在する王国軍の住居とか、騎士たちの住居とか、魔法使いさんたちの住居とかがグルッと取り囲んでる感じなんだよね」

「はい」

「第三外周からは一般……普通に王都に暮らす市民たちが暮らしている場所だね。むしろそっちの方が色々と面白い物があるんだけど、これから回るには時間が足らないしね。何よりポーラはここで暮らすんだから、自分で目新しいお店とかを発見して楽しまないとね」

「はい」

良い返事ばかりだけどこの子ってば全部理解しているのかな?

疑問に思ったら質問すれば良いと師匠の教えを忠実に守り、ポーラに今日見て来た場所をそらんじさせる。

すると、スラスラと僕が説明したことを口にした。

「ポーラ」

「はい」

「……頭良いんだな」

「そんなこと」

「あるって。このままいっぱい学んで賢くなって僕を楽させてね」

「……がんばります」

キュッと拳を握って可愛らしいやる気を見せてくれるので、ウリウリと頭を撫でてやって本日最後の目的地へと向かう。

と言うかそろそろ日が沈むな。ポンポンと耳の下を指で叩く。

「ノイエ。仕事が終わったらケーキ屋さんに来てね」

「はい?」

「ん~。ノイエに伝言」

首を傾げるポーラの気持ちは分かる。傍から見たら虚空に呟く危ない人だしな。

それでもノイエには伝わるのでこれで仕事が終わってたら、

「はい」

「……終わってたのね」

私服姿のノイエが不意に現れた。

アホ毛をフリフリさせると、何故か僕とポーラの間に入って来る。

ナガトは巨躯な馬だから3人乗っても大丈夫だけどさ。

と言うか今日は馬車にしなくて正解だったな。

ポーラを抱いたノイエを軽く後ろから抱きしめ、3人でケーキ屋さんに向かう。

「僕たちはケーキ食べたけどノイエは食べて無いしね。好きなのを頼むと良いよ」

「はい」

僕らがオーナーを務めるブロストアッシュに突撃したノイエが早速あれこれと指さす。

それを見ていたポーラが少し物欲しそうな顔をしていたので、小さな切り売り1つならと言う条件で一緒に買い物に向かわせる。

これから帰って夕飯もあるし……ってノイエさん? 何ホール買う気ですか? ねぇ?

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