軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どう言う意味ですかっ!

「どうどうどう」

一応言ってはみるが、ナガトはこっちの手綱ですら無視する馬なのです。

ノイエ小隊の待機所に辿り着いた僕らは、ナガトから降りる。ナガトは勝手に馬小屋へと向かった。

「にいさま。ここは?」

「ノイエの仕事場で良いのかな? 彼女が普段通っている所です」

「はい」

頷いてポーラはキョロキョロと辺りを見渡す。

最終工事まで終えたノイエ小隊の待機所は、ちょっとした砦規模にまで拡張された。

外周を木製の壁が囲い、中にはちょっとした広場と建物が3つに物見やぐらまである。

「あっちの大きいのがここに努めている兵たちの建物で、着替えとか仮眠とかする場所だね。その隣が女性用の建物で、もう1つ隣が武器庫などになってます」

「はい」

たぶん頷きながらポーラは全部暗記している。

この子の記憶力は大したものだ。ほんの少しでもノイエに分けて欲しいよ。

「物見やぐらには高い所を好む小さいのが登っていたり、胸に脂肪を貯め過ぎた大きいのが登っていたりするから絶対に近づいちゃダメだよ?」

「はい」

「「どう言う意味ですかっ!」」

綺麗に声をハモらせて、女性用の建物から小さいのと大きいのが飛び出して来た。

「ポーラ。あれが今言った小さいのと大きいのです。近寄ると不幸になるから絶対に近づかないこと」

「はい」

「久しぶりに来たと思ったら何を言うのかこの上司っ!」

「そうですっ! 不幸にするのはミシュ先輩だけで、今のわたしは結構幸せですよ?」

「よ~しそこの大きいの。その喧嘩買ったっ!」

同時に駆けて来ていた小さい……ミシュが横っ飛びして襲いかかる。

大きい……ルッテの胸を相手にボクシングを始めたので無視しておく。

「あっちの変な子は知ってるよね?」

「サラッと酷いことを言ってませんか! アルグスタ様っ!」

「モミジおねえさんです」

「ポーラちゃんは本当に良い子です」

まだ死体置き場に移動して居なかったモミジさんが地面の上で争っている2人をスルーしてこちらに来ると、ポーラの白い髪の毛を優しく撫でた。

「うわっ! サラサラです。初めて会った時は正直ちょっと……って思ったのに」

「ポーラを愛でるメイドさんたちの恐ろしいまでの執念の賜物です」

ノイエ用に買ってある高級石鹸でポーラを丸洗いし続けた結果、今のポーラはサラサラのツルツルなのです。怪我の痕などは残っているけれど。

モミジさんはポーラを背後から軽く抱き締めるとこっちを見た。

「それでアルグスタ様は、どのような御用でこちらに?」

「ん? 昨日からポーラに王都を見せているんでね。王都近郊にある場所で僕が簡単に入れるのってここだけでしょ?」

「そうですね。魔法学院や郊外練兵場などは……アルグスタ様でも入れないんですか?」

「手続きをすれば入れるんだけど面倒臭いでしょ? ここなら好き勝手だし」

何せこの待機所の責任者は僕だしね。

「たまには現場を見て、仕事もせずに胸に対して恨みつらみを吐き出している馬鹿な部下が居ないか確認しておかないとね。もし居るようだったら減給とかしちゃうかも?」

「「っ!」」

バッと馬鹿2人が離れて肩を組んで僕の方を見る。

『ちゃんと仕事してますよ? 本当ですよ?』な感じの空気を漂わせるのが腹立たしいが。

「それにそろそろノイエが戻ってくる頃でしょう?」

「そうでしたね」

ポーラを解放したモミジさんが馬小屋へと向かうと、手綱を引いて馬を連れて来た。

「わたしもまた仕事場に戻りますので」

「ほい。頑張ってね」

ヒラリと馬に跨りモミジさんは駆けて行った。

ノイエの休憩中、モミジさんがドラゴンの死体置き場を護る役目がある。

「にいさま」

「はい?」

「わたしもひとりでうまにのりたいです」

「格好良かった?」

「はい」

「ならもう少し身長を伸ばして馬の乗り方を学ばないとね」

「はい」

グッと拳を握ってポーラがやる気を見せる。

「ちなみにそこで馬乗りしていた小さいのから乗馬は習うと良いよ。馬の扱いだけは上手だから」

「そんな……アルグスタ様。馬なっ」

物凄く卑猥な言葉を言い出しそうな気がしたから、重力魔法で潰しておいた。

「遊んでて紹介忘れてたな。そっちの潰れてるのがミシュ。あっちの大きいのがルッテ。2人とも精神にヤバい病気を持った人たちだからね」

「むぐぅ~!」

「いくら何でも酷過ぎますよ!」

地面と熱い口づけをしているミシュは無視して、ルッテまでもが自分が正常だと言い出したよ。

「両方とも結婚とは無縁だという特徴を持ってるけどね」

「良しこの糞上司っ! その喧嘩買ったぞ!」

「違うんです! あの人はたぶん……次のお見合いで言ってくれるはずなんですっ!」

重力を押し退けた売れ残りのミシュは良いとして、ルッテの方は三度目の見合いでプロポーズが無かったらしい。でも四度目のお見合いをセッティングしたので次こそはと意気込んでいるのだ。

意気込んだところで……完全なる受け身なんだけどね。

「野郎共は追々覚えて行けば良いよ。ちなみに僕は半分も覚えてません」

「……」

『それで良いの?』と言いたげなポーラの視線をスルーしておく。

良いのです。僕はこう見えて対ドラゴン遊撃隊の責任者なのだから、『あ~、ちみちみ。それをやっといてくれないか?』ぐらいのノリで命令していても許されるのだ。

「野郎の名前なんてポーラは覚えなくて良いんだからね」

「はい。にいさま」

クリっとした澄んだ目が眩しいぜ。

「けっ……どうせすぐに大きくなって男遊びを始め出すに違いない」

「潰れろ」

「げっ!」

ミシュに追加で重力マシマシで動きを封じる。

「ポーラ」

「……はい」

「何する気だっ! こんな面前で……ミシュちゃんを辱める気だなっ!」

上着を掴んで首の後ろをガバッと広げる。

「ポーラ。ここに力を使って雪をいっぱい」

「……はい」

「ちべてぇ~」

言われるがままにポーラが雪を作り出し押し込む。

「うわっすごっ。この子雪が作れるんですね?」

ミシュの背中に雪を押し込む僕を見てルッテがそんな感想を口にした。

本当にある意味ここは平和だわ。

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