軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おうっおうじさま?

「けーきがおいしかったです」

「そうか」

「はい」

クレアお勧めのロールケーキを食べたポーラは、その美味しさから丸々一本食べてしまった。

凄いな~と感心していると、クレアもチビ姫も丸々食べるのだ。何かを間違っているような気がする。

それから戻って来たイネル君も合流して全員でケーキを食べた。

「クレアせんぱいは、げんきでいいひとです」

「だな。アイツはああしてると可愛いんだけどな」

「イネルせんぱいもやさしかったです」

「イネル君は真面目過ぎるからな」

「……ふたりがふうふなのもおどろきました」

「うん。僕もビックリだよ」

あの2人をくっつけるように振る舞ったのは僕だけど、それでも本当にくっつくとか……今にして思えばビックリだよな。いや本当に。

何より2人を『せんぱい』と呼んで慕うポーラのお陰で場が良い感じでやんわりとした。

唯一拗ねまくったのがチビ姫だ。『わたしも先輩と呼ぶです~』と怒りだしたのだ。

『君はここの所属じゃ無いから。強いて言うと所属は王家でしょ?』と当たり前の指摘をしたら、紅茶を飲んでいたポーラが咽た。それは理解出来るのだが、クレアも一緒に咽たのは何故だろう? アイツは本気でチビ姫の本来の地位を忘れていやがったな?

それでもめげないチビ姫は、『わたしもここでいっぱい仕事してるです~。本当です~』と諦めない。

最後は空気を読める妹キャラなポーラがその実力を発揮して、『せんぱい』と連打してくれたお陰でどうにか回避することが出来た。

お城を出た僕らは、ナガトに跨り通りを進む。

「にいさま」

「ん?」

「ここはなんですか?」

「ああ」

と、手綱を操る前に止まる愛馬。もう良い。君はきっと賢いんだね。

眼前に広がるのは王城前の鍛錬場だ。主に王国軍の精鋭や近衛が日々訓練をしている。

「拷問会場だな」

「……」

クワッと目を見開いたポーラがこっちを見る。

間違えていないはずだ。それかドM製造広場だろう。

「兵士さんたちをいじめ抜いて鍛え上げる場所だね。今日はお休みみたいだけど、普段のここは結構酷い場所だからポーラは近寄らない方が良いよ」

「わかりました」

うむ。それか筋肉好きな女性や流血好きな女性などが、『こっちの方が近道ですし~』とか言いたげに通行しては鍛練場を見てハァハァしている。

「お城の周りは基本軍の施設で囲まれているからね」

「はい」

「でもこの国は余所とは違って女性兵も多いからそこまで酷くないらしいよ」

国によっては鍛練を終えた兵たちが全裸でうろついているとか言うしね。

それを聞いたミシュが地面を殴って悔しがっていたけど。

「ちょうど良い。少し王都を見てから帰ろうか」

「いいんですか?」

「良いよ。仕事はケーキと一緒に部下たちに押し付けたしね」

それに本来なら本日帰還予定だったから、今日は遊んでいても文句は言わせない。

「ならまずは貴族たちが暮らす区画に」

「はい」

ポーラの手を取り指を向けさせて『あっち』と言って貰ったらナガトがその方向に歩き出した。

分かったぞ。どうやらこの馬は僕のことが気に入らないらしいな。いつか飼い主が誰であるのか教える必要がある。

「ひろいです。きれいです」

「だね」

やって来たのは貴族たちが暮らす区画。主に上級貴族や王族たちが居る辺りだ。

ユニバンス王都は『〇』を上(北)から押し潰した感じの楕円形をしている。

中央にお城があってここは東南の位置に存在する場所だ。

居住している人たちが人たちなので、出入り口には衛視が立ち、中も衛視たちが巡回している。

治安的には1番安全な場所だ。上級貴族な僕はここに屋敷を構えていないけどね。

「あそこのお屋敷は見える?」

「はい」

「あそこが前国王様と前王妃様が現在暮らしている屋敷だよ。それと王弟夫妻も同居してます」

「……」

ポーラが全力で視線を逸らした。

見ちゃダメと言いたげな様子が可愛い。まあこれが普通の人の正しい反応なんだろうね。

「前国王様とか前王妃様とかは優しい人だから、お屋敷を見てるくらいで怒られたりしないよ」

言ってウリウリと頭を撫でてやる。

「……にいさま」

「ほい?」

「どうしてしってるんですか?」

「……」

不思議そうにこっちを見て来る純粋な視線がとても眩しい。

いやちょっと待って? ポーラは何を……あっ!

「言い忘れてた?」

「なにをですか?」

「僕って元々はこの国の王子なんだよね。今は王族だけど」

「……」

ポーラが完全に停止した。

思考停止と言うか、息してるか?

「おおいポーラっ! 呼吸! 呼吸することを思い出してっ!」

「……ひあっ!」

慌てて肩を揺さぶったら、ポーラが呼吸することを思い出してくれた。

あぶね~。そんなに緊張することとは露知らずだ。

「おうっおうじさま?」

「あ~うん。言い忘れてたね。ごめんね」

「おう……」

ガタガタと震えだしたポーラの緊張が半端無い。

これは少し自分が元王子であると言うことを再認識しないとダメだな。って僕の周りってそのことを意識する人ってほとんど居ないんだよな。つまり周りの環境が悪い。

「ほらポーラ」

「ひうっ」

前に座っているポーラを抱き寄せ、また頭を撫でる。

「ポーラは可愛い『妹』だから僕が元王子とか気にしなくて良いの。それとも王子様だったお兄ちゃんは嫌いですか?」

「……」

フルフルと頭を左右に振る様子が可愛い。

「ならポーラはこれからもお兄ちゃんに甘えなさい」

「いいんですか?」

「うん。ポーラなら許す」

無理を言って引き取って来た都合、面倒を見るのは当たり前だしね。

せめてこの子が独り立ちして立派に過ごせるようになるまではお兄ちゃんは頑張ります。

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