軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旦那君のお嫁さんはノイエでしょ?

「次はポーラの普段着の手配だ。あとベッドなどの家具もか」

「……はい」

我が家の愛馬ナガトの上で、ポーラの視線が止まらない。

昨日は直接屋敷に帰ったのでポーラは本日初の王都見学だ。

普段見慣れている景色でも初めてのポーラには色とりどりの宝石箱らしい。

「もう少しゆっくり行く?」

「……だいじょうぶです」

慌てた様子で僕の顔を見てポーラが耳まで真っ赤にした。

「でもダメっぽい」

「はい?」

「このナガトは女性の味方なので、僕の言うことを聞いてくれないのです」

「……」

歩く速度を落としたナガトが本当にゆっくりと通りを行く。

この馬はたまに『人の言葉を理解してますか?』と聞きたくなるほど高い知能を見せる。

大きい図体は伊達では無いらしい。

「だからゆっくりと行こうね?」

「……はい」

良い笑顔が見れたから今日はナガトに感謝かな。

「プルルッ」

自慢気にナガトがひと鳴きした。本当に何か受信してない?

「これはアルグスタ様」

「どうも」

裏口から入ると商品整理をしていたホールンさんと目が合った。

「売り上げはどう?」

「はい。開店時から比べますとだいぶ落ちましたが、それでも衣服を扱う店としては破格の売り上げです」

「だろうね。で、周りの店からは?」

「はい。やはり恨み言は聞きますが、同業者からの嫌がらせは無いです。『古いのはあっちで売って新しい物をこちらで買えば、僅かな差額で……』と勧めているらしくて」

「商人は本当にしたたかだね」

「ええ。それと売れ残りを持ち込んで来ることもあるので、こちらとしても助かってますよ」

男性だと言うこともあってホリーと比べても同じ部分は髪や目の色くらいだ。でも彼女には遠く及ばなくてもホールンさんは頭の良い商人なので今後とても期待できる。

「なら他の商人が真似する前に地盤固めの方を宜しくね」

「分かりました」

挨拶はそれぐらいで仕事に戻るホールンさんを見送り、難しい話だったせいか沈黙していたポーラを連れてバックヤードへと向かう。

「居た居た。コリーさん」

「アルグスタ様」

古いドレスに埋まっていた美人さんが這い出して来る。

最近は魔窟と化して来たこのバックヤードを取り仕切るコリーさんだ。

「……きれい」

思わずポーラがそう溢してしまうほど、彼女は美人だしスタイルも良い。

ただ過去にそれが災いして色々と苦労をしているので、普段は顔を隠すようにしてここに居るのだ。

それでも目ざとい貴族が彼女の周りを嗅ぎ回っているらしい。そんな馬鹿共に我がドラグナイト家の本気を見せる時が来ないことを祈ろう。

「何かご用でしょうか?」

「はい。この子の服を見繕って欲しいんです。しばらく困らないくらい」

肩に手を置いてポーラを彼女に差し出す、

「……宜しいですか?」

「どうぞ」

軽く全身を触れて……コリーさんがポーラの様子を観察する。

「痩せすぎですね」

「何処に行ってもそれを言われます。だから太らせる予定です」

「でしたら多少大きくなっても良いような服を揃えますね」

言って彼女は魔窟の中に消えた。

しばらく待って居ると一抱えもある服を抱いて戻って来た。

「この辺りなどが今の季節には良いかと」

「どうも」

受け取って軽くチェックする。

派手では無いが品の良い服ばかりが選ばれている。

「……って、おーい」

「はっ! 失礼を」

服を見ている間にコリーさんがポーラの服を着替えさせていた。どんな早業ですか?

「そんな風に妹さんにも服を着せていたのですか?」

「いいえ。あの子は聡い子でしたから……私に負担を掛けないようにしてくれました」

ポーラを見る目がとても優しかったので、コリーさんが"妹"のことを思い出していると一発で分かった。

「コリーさん。少し間、その子をお願いしても良いです?」

「えっ? ええ」

ならば僕が出来ることはお節介ぐらいです。

「お店のことを話して来たいので。ついでに家具の注文もあるので……それが終わったら来ます。それまでポーラの服を1年分くらい準備しておいてくれれば助かります」

「……分かりました」

とても柔らかく笑うコリーさんに抱かれるポーラが少し困った様子を見せているが、彼女がとても良いお姉さんだと僕は知っているから全てをお任せしてバックヤードを出た。

「ホリーが今のを見たら……笑うか拗ねるかどっちだろうな?」

僕は笑ってとりあえず店を出る。

ベッドと机とかの家具も必要だろうな。これからいっぱい勉強もしないといけないしね。

ルッテと違ってパンクしなけりゃ良いけどね。

「ふあっ!」

何だかとっても嫌な夢を見た気がして、ホリーは文字通り飛び起きた。

うつ伏せで寝ていたから、自分の胸をクッションにすれば簡単に起きられる。

「あ~。ホリー。助けて」

「何してるのよ?」

「あはは~。ちょっと悪戯が過ぎたみたい」

視線を床に向けたホリーはそれを見た。

ヘソから上を残して転がっているのはレニーラだった。

「下半身はどうしたのよ?」

「あはは~。溶かされた」

「アイルローゼか」

どんな理由か分からないが、あの魔女をここまで怒らせるようなことをしたのだろう。それならレニーラが悪い。

「自業自得でしょ? しばらく転がってなさい」

「え~」

器用に上半身だけで跳ねて見せるレニーラに、ホリーは視線を巡らせる。

「ファシーを知らない?」

「私がここに逃げて来た時には居なかったね」

「……危うく私も溶かされるところだったのね」

「あぶっ! 踏まないでよ!」

コロコロと転がってレニーラは相手の攻撃を回避した。

「ファシーに何の用?」

「……決着がついて無いのよ」

「決着?」

「ええ」

ビシッとその指先をレニーラに向け、ホリーは吠えた。

「どっちがアルグちゃんのお嫁さんに相応しいのか!」

「……旦那君のお嫁さんはノイエでしょ?」

「何も聞こえませ~ん」

ホリーは、耳を塞いでそんな子供っぽいことを言い出すのだった。

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