軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

とても綺麗でしたよ?

鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌な様子を漂わせ、ノイエが仕事に向かった。

今日は色々と途中で立ち寄るのでノイエには1人で出勤して貰う。普段なら拗ねて大変なことになるはずだが、朝からノイエの機嫌が良いので今日はすんなりと応じてくれた。

僕はそれをポーラと2人で見送る。小さく手を振るポーラも機嫌が良さそうだ。

ノイエは夜食を食べてからずっとポーラを抱きしめていた。時折目を覚ましたポーラは最初は驚いていたが、何度かそれを繰り返していたら慣れたらしい。後はずっとノイエに抱き付いて寝ていた。

夕方にガッツリ寝た僕はなかなか眠れず、2人の様子を眺めて……明け方にようやく寝落ちした。

目覚めたらノイエはポーラを抱きしめたままで寝ていた。

改めて2人の様子を眺めていたら、メイドさんが起こしに来て……ノイエはまだ抱きしめて居た感じを漂わせていたが、『仕事が終わったらまたしなさい』と言ったら機嫌が良くなったのだ。

お姉ちゃんとしての自覚が芽生えて来たのなら嬉しい限りです。

「さてポーラ」

「はい」

相手の目線に合わせるようにしゃがみ、僕は彼女の赤い目を見る。

ポーラなら大丈夫だ。この子はやってくれる子だ。

「あの先生の言葉はおかしいことばかりだけど基本良い人だから。大丈夫」

「……」

理解できていないポーラにこれ以上の説明は出来ない。

本当に腕は良いんだけどね。あの先生は。

「さあ行こうか」

「本当に王家に連なる者は私の所に厄介な話ばかり持って来るな」

本日は黒い喪服のような衣装でした。一人称は『わたし』らしい。

「自分はある意味1番正しい依頼かと?」

「そうだな。ただ子供ばかり……楽しくも無い」

それは女性の裸が見れないとかそんな理由ですか?

何やら書類の整理をしていた先生が終えたのか、トントンと書類を束ねてこっちに来た。

「朝一番で来た子供らは前王様の所に預けるのか?」

「その予定です」

「ならこれを預けよう」

受け取った紙の束は……どれも子供らの診断書だった。

「どんな具合で?」

「乳飲み子以外はどれも栄養が足らんな」

「でしょうね」

「年齢にしては正直発育が悪い。あまり食べさせて貰っていないのが原因だろう」

向かい合うように椅子に腰かけ、先生は息を吐いた。

「口減らしに遭っていないことを喜ぶべきなのか……正直悩まされるな」

「ですね」

パラパラと内容を確認し、僕も息を吐いた。

「それと一応骨格や筋肉、手足の状態などを見て……彼らは暗殺の類の手ほどきは受けていない。普通の人間だ」

「そんなことまで?」

「当たり前であろう? お主は誰に預けるつもりだ?」

子供好きの前王妃様ですね。

あはは……今にして思うと結構危ないことしているのね。あのお義母さんって。

「子供の暗殺者など良く使う手だぞ?」

「今後は気をつけます」

「全く」

本日は配線が無事に繋がっているのか、先生が普通の先生だ。

ちなみにポーラはナーファが拉致して行った。『恥ずかしいのは最初だけですから』とか言い出した時は、ナーファの配線が狂っているのかと思ったけどね。

「それにしてもどうして1人だけ別に?」

「あれ? 聞いてません?」

「否。今朝子供たちを連れた来た者からは何も聞かされていないな」

「……」

帰って来た時に色々と面倒臭くなって護衛の騎士さんたちに丸投げしたのが失敗だったか?

流石あの馬鹿兄貴の部下たちだ。手続きの類とかだとまるで使えん。これだから脳筋共は。

「ポーラは祝福持ちなんです。だから僕が預かり部下にしようかと」

「そうか。……その言葉は最初に欲しかったな」

「はい?」

何故か先生が遠くを見つめる。

「ふなぁ~っ!」

「はい?」

遠くからポーラらしい何とも言えない悲鳴が木霊して来た。

「ぐすっ……えっく……」

「良し良し。泣くなポーラ」

「ううっ」

抱き付いて来る彼女が全力で泣く。

悲しかったとか痛かったとかではなく……恥ずかしさの余り消えて無くなりたいとかの類での泣き顔だ。

「てっきりアルグスタ様が妾でも娶ったのかと思いまして」

手を綺麗に洗っていたナーファがこちらにやって来る。

反射的に身を縮こまらせたポーラが恐怖で震えだした。

「こういうのって多いの?」

「ええ。貴族の人たちは遊ぶことが好きですから。ですので病気にはことのほか警戒心が強く、お蔭でこの手の確認はウチの良い稼ぎ……生活費の足しになってます」

「そうなのね」

ぐずぐずと泣いているポーラの頭を撫でておく。

こちらを見ていたナーファが思い出した様子で口を開いた。

「その子のは……とても綺麗でしたよ?」

サッと下腹部に手を当てたポーラが、顔を真っ赤にしてまた大粒の涙を溢しだした。

「追い打ちにしかならないから勘弁してあげて」

「分かりました」

サラサラと木製のボードに挟まれた紙にペンを走らせ、ナーファはそれを先生に手渡した。

「問題は、やはり痩せすぎだな」

「これから太らせます」

「うむ。ただ一気に太らせると病気になりかねん」

「ならどうしろと?」

「適度に運動をさせて筋肉をつけながら太る。これしかないな」

机の上にボードを置いて、先生が立ち上がった。

「少し左肘が気になるな」

言って手を伸ばして来てポーラの左腕を確認する。

「この辺りを怪我したことがあるな?」

「……はい」

僕の様子を伺って来る彼女に軽く頷いて続きを促す。

「こどものころ……5さいくらいにぼうでなぐられて」

「それで骨が折れてズレたか。体調が良ければ治すところだが……この部分の治療はしばらくしてからだな」

治療と言うのは結構体力のいるものだから、今のポーラにはまだ辛いらしい。

「なら先生」

「何だ?」

「その時は、いつかの約束通りに先生の本気を見せて下さいね」

僕の言葉の意味に気づいた先生が苦笑した。

「分かった。ならばその子を適度に太らせよ。まずはそれからだ」

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