軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

化け物がたった1人でね

「ん~」

「どうかしたの? フレア?」

「うん。ちょっと疑問に思っていて……」

「疑問?」

師であるアイルローゼが会議に出席している都合、弟子である3人は研究室に残り出された課題をやっていた。

基礎に関しては最年少のフレアが抜けた才能を示し、今日も自己採点で満点を与えた書き取りをした紙を師の机の上に置いている。

早々に読書を始めた少女が声を上げたことで、2番目に終えたミローテが話し相手を務めているのだ。

「先生はプレートに術式を刻んだりするでしょ?」

「ええ。そうね」

「でも魔道具って……素材はプラチナじゃないのにどうして何度も使えるのかなって」

「あ~。それね」

手先は器用なのだが集中力に難のあるソフィーアの書き取りを覗いたミローテは、たぶん師から『やり直し』を告げられるだろうと思いつつ、フレアの問いに気持ちを向けた。

「大半の魔道具は異世界……ここでは無い世界から呼び出した物だって知ってるわよね?」

「うん」

「だからその材質が特殊で何度も使用できると言うのが研究している人たちの通説ね」

「そうなんだ」

師であるアイルローゼが居ないと年相応の柔らかな口調を見せる彼女に、ミローテは軽く微笑む。

それだけ自分たちに気兼ねなく接してくれているのが嬉しくなるからだ。この学院で最も高貴な人物に嫁ぐであろうと言われている少女ではあるが。

「でも異世界で作られていない魔道具もあるのよ」

「そうなの?」

「ええ。大半は刻印の魔女が作り出した物だけどね」

歴史上偉大な功績を残した3人の魔女の1人。

術式魔法の生みの親であり、彼女が本気を出せば不可能な魔法は無いとも謳われている。

ただどの歴史書にも『気分屋で問題行動が多かった』と、とても柔らかい表現で書かれいることが多いが。

「先生が作る魔道具は、中心にプレートを置いて発動させる物が基本ね。でも効率良く発動させたりするから先生は『術式の魔女』と呼ばれているのだけれど」

「そうだね」

確かに師であるアイルローゼの腕前は抜きに出ている。

ユニバンスでは彼女以上の術式を扱える者は数百年は現れないだろうとも言われている。

「ミローテ」

「何かしら?」

「魔道具は何となく分かったんだけど……」

フレアは読みかけの本に栞を挟んで机に置いた。

正直に言うと、ここからが本題であるからだ。

「魔剣ってどうやって作るの?」

実家から届いた母親の手紙に記されていた。

何でも姉であるフレイアが魔剣に魅入られて大変らしいのだ。

それを知ってから魔剣のことが気になって仕方ない。

フレアとしても"彼"がそれに興味を覚えていることを知っているから余計にだ。

だが年上の同級生は全力で少女の視線から顔を背けた。

「ミローテ?」

「……私の専門は術式だから」

「ソフィーア?」

「……先生にやり直しって言われるかな?」

最初から現実逃避しているソフィーアも知らない様子だ。

それを見て……フレアは2人に提案をした。それは、

「魔剣について?」

「はい」

会議から戻って来たアイルローゼは、提出されている課題の紙を見て……2人に合格を、1人に不合格を伝えた。ただどうやら不合格を貰う気がしていたらしいソフィーアは、自ら進んで新しい紙に魔法語を書いていたので、アイルローゼは厳しい態度は見せなかった。

「先生なら詳しくご存知かと思って」

代表して質問してくるミローテに、その背後に居るフレアなどが興味津々な様子を見て……誰が彼女を唆したのかをアイルローゼは理解した。

再度書き取りをしているソフィーアもチラチラと視線を寄こすのを見て、師である彼女は息を吐いた。

「ソフィーア。手を止めなさい」

「あっはい?」

「たぶん話を聞きだしたら、集中力を失って失敗するわよ」

事前にそう告げ、アイルローゼは弟子たちに席に着くように命じた。

「一応これは国の重要な機密なので、この研究室の外で話すのは厳禁よ。良いわね?」

立てた親指で首を掻っ切る仕草を見せてアイルローゼは弟子たちにそれを示した。

もしバレたら命の保証が出来ないほど重要な機密なのだ。

「先生。あの~」

「フレアの場合は相手が望むなら話しても良いわ。問題にはならないから」

何せ彼女が聞かせるであろう相手はこの国の王子だ。問題は無い。

「まず魔剣を作るのには『工房』と呼ばれる特別な施設が必要なの。ユニバンスには王都に1か所と国の南……ルーセフルト領内にも1か所の計2か所が存在しているわ」

黒板に何やら書き込もうとした魔女は、何も書かずに白墨を置いた。

書いた物を誰かに見られるのは厄介なことになるかもしれないと言う判断からだ。

「それで魔剣の作り方だけど……プレートに術式を刻み、その特殊な施設を使って剣を打つのよ。

流石の私も一度しか見たことが無いから、何をどうやっているのかは詳しく説明できないけど、核となるプレートに剣となる鉄を纏わり付かせて作り出す感じで良いと思うわ」

本当ならもっと複雑な工程を踏んでいるのだが、アイルローゼはザックリと説明した。

「魔剣を打つのはほとんど才能の領分なので、見学した時の私には出来なかったわね。でも今度行くことがあったらたぶん出来るかな? 貴女たちの中でなら……ソフィーアが向いているかもしれないわね」

聞き入っている弟子たちにそう言ってアイルローゼは言葉を続けた。

「ちなみに工房は2か所と言ったけど……実は秘密裏に魔剣はある場所でも作られているの」

「本当ですか先生?」

ミローテの問いにアイルローゼは柔らかく頷いた。

「ええ。ただしこれは本当に絶対に口外しちゃダメよ。まあ言っても信じて貰えないと思うけど」

「信じて貰えない?」

魔剣に興味を抱くフレアの言葉に……アイルローゼは深く息を吐いた。

「工房に置かれている大きな装置が無いと本来は作れないのだけど、あれはその辺のことを無視して剣を作っているのよ。

だから言っても信じて貰えないと思う。」

苦笑してアイルローゼは嫌なことを思い出したとばかりに顔を歪めた。

「それも……化け物がたった1人でね」

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