軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

若いうちは多くの苦労を学ぶと良い

「孤高の勇者キルイーツが敗れてより10日! 我らが同士があの赤毛の悪魔により捕縛され続けている!」

とある空き教室でその者たちは集まっていた。

窓に掛かるカーテンを閉め、わざわざ教室内の机を移動し円形にし中央でランプを灯す。

その明かりを囲うようにして各々が顔を隠して座っている異様な状況だ。

「しかし隊長。あの悪魔は本当に恐ろしい」

「分かっている。あの年齢で底を見せない才能……魔法を扱う者であればどれほど才多き者かなど理解出来る! だがっ!」

握った拳を振るい『隊長』と呼ばれた彼は奮い立った。

「我々はいずれ戦地へと赴き敵と戦う者だって出て来るのだ。そんな我らがあのような顔だけで色気の『い』の字も無いような小娘に負けっぱなしで良いのか!」

「意義あり」

「何だね?」

「自分としては……あれはあれでありだと思いますが?」

同士の1人の発言からまた派閥間の争いへと脱線して行く。

巨乳、貧乳、美乳などの胸にこだわる者たちや齢の割には~な言葉で分けられる容姿についてなど、好みはなど人それぞれなので決してどれが正解とは言えない。

しかしながら貧乳美顔の幼い天才児は……それはそれで食指の動く者たちが多く居るのも事実だ。

「一度落ち着け同志たちよっ!」

今にも魔法を使っての争いへと発展しそうな仲間たちに隊長である彼が声を上げた。ちなみに彼は巨乳派であり、齢の割には大人に見える女性が好みなので怨敵アイルローゼに関して食指は動かない。

「我々の敵は我々では無い! 女性用の風呂に鉄壁の防御陣を構築しているあの赤毛の悪魔だ!」

「しかし隊長。あの赤毛の天使様の監視網は」

「分かっている。だが落ち着いて考えたまえ。我々はこの魔法学院で学ぶ生徒である」

「「……」」

「相手が魔法を使い情報を覆い隠していると言うのであれば、我々も魔法を使い相手の魔法を上回って覗きを成功させる。それが過去の先輩たちから受け継がれし我らの精神であろう」

「「確かにっ!」」

「これより我々はあの悪魔の魔法を上回る魔法を用いて覗きを敢行する! 各々……研鑽に励み努力を惜しむなっ!」

「「おおっ!」」

不純すぎる動機であるが、こうして彼らは新たなる魔法の開発を開始したのであった。

「アイルローゼよ」

「はい先生」

「はっきり言うと……お前に教えることが無いな」

「分かっています」

宮廷魔術師でもある学院長の言葉に赤毛の天才児は素直に頷いた。

「ですから許可を」

「……仕方あるまい」

相手の少女が訪れてからずっと切望していた許可を彼は許すこととした。

自身が使っている引き出しから鍵を取り出し、そして机の上には紙を置く。

スラスラとペンを走らせ……必要事項を全て書き込んだ。

「これを持って行けば担当の者が案内してくれる」

「ありがとうございます」

受け取った鍵と紙を懐にしまい、赤毛の少女は読みかけの本に目を戻した。

「それにしても天才とはこうも恐ろしい物とはな」

「そうですね。ですけど私は知識を欲しているくらいな物ですよ」

本を読みながら弟子である少女は言葉を続ける。

「私の頭に刺激的な知識を与えてくれればそれで良いのです」

「だから魔法を学ぶと?」

「ええ。魔法は基本から応用と幅広く学べます。何より自分で魔法を作り始めれば終わりがありません。ずっと私を楽しませてくれます」

柔らかく……本当に楽しげに柔らかく笑う弟子に、師であるバローズ・フォン・クロストパージュは苦笑いした。

「普通であれば魔法使いの生涯で1つ2つの魔法を作れたら上出来だと言うのにな。お前はここに来て幾つの魔法を作った?」

「8つです。でも1つはキルイーツから受け取った魔法なので、実質は7つです」

「それが異常なのだよ」

間違いなく目の前に居る少女は天才なのだろう。

それだけに彼女の育成に関して学院内でも色々と意見が分かれている。

このまま魔法を作らせ続ければ良いという者も居るし、いずれ恐ろしい魔法を作り出しかねないから幽閉した方が良いという者も居る。

ただ弟子であるアイルローゼは、地下に封じている彼女とは違い分別を弁えている。そんな彼女を不自由な未来を提示することなどしたくなかった。

「なあアイルローゼよ」

「はい?」

「お前は自身の将来を少しは考えたことはあるか?」

「……」

軽く首を傾げた少女は、少し思考すると頭を元の位置へと戻した。

「私は一般の出なので、最終的には王家からの指示で誰かに嫁ぐことになるでしょう。魔法に優れた貴族の家系……学院長のご実家であるクロストパージュ家などが対象でしょうか?」

「確かにそうなるだろうな」

魔法の才と整った美貌を持つ少女だ。貴族の中では大きな噂話になっている。

そして魔法の大家である上級貴族クロストパージュ家よりも周りの評価では"下"となっている貴族たちが喉から手が出るほど彼女を欲しているのだ。

年齢など関係無く、今すぐ自分たちの家に招いて子作りをさせたがるほどに。

「自覚はしています。私は我が儘を言える立場では無いので……誰かが決めた人に嫁ぎます」

「それで良いのか?」

「良いも悪いもありません。それが私の運命でしょうから……だからそれまでは自分の好きなように魔法を学び、作りたいと思ってます」

「そうか」

頷きバローズはこの後国王との面会を申し出ることを心に決めた。

「ならば私の権限でお前がこの学院に居る間は好きにしても良いと言うことにしよう」

「……宜しいのですか?」

「ああ構わんよ」

「ご迷惑をお掛けしますが?」

「案ずるな」

笑い彼は軽く自分の頭を叩くように撫でた。

「私は気楽な独り身だ。何かあれば荷物を纏めて逃げれば良いだけのことだ」

「……それだとあとに残る私が苦労しそうなのですが?」

「何を言うアイルローゼ」

彼は楽しそうに笑った。

「若いうちは多くの苦労を学ぶと良い。それはお前の血肉となるのだからな」

「……ならそうさせていただきます」

やんわりと少女は無責任な大人に頭を下げた。

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