軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ちょっと質問が

ユニバンス王国内某所

「あんな荷物を抱えて来て、あれは何を考えている!」

怒り狂う初老男性に話し相手を務めていた者が軽く肩を竦める。

「彼が言うには『今後必要な素材』だそうだ。まあ好きにさせておけば良い」

「それで我らの宿願が果たせるのか? どうなんだ?」

「果たすまでのこと」

言って彼はニタァ~と嫌な笑みを浮かべた。

「我らの宿願……ユニバンス王家の滅亡の為に何でもすると決めたのだ。だから叶える。だから達する。我々がかの者たちの首を切り落とし、亡き戦友たちの墓前にでも飾ってやろうではないか」

「ああ。そうだったな」

そして二人の男は深く深く暗闇のような笑みを浮かべて笑いだす。

「ん~。結果として、近衛はまだフレアさんの行方を掴めてないみたいだね」

簡易的にまとまった報告書に目を通し、分かっていることを話し合う。

「ですね。大臣たちの方は遺体の検分に徹してますけど……『引き千切られていた』と言う部分を突き崩せずに居るみたいです」

「だろうね。彼女の武装は前回のブシャールで壊れてしまってる訳だし、それにフレアさんは強化系の防御を徹底的に伸ばしていた感じだしね」

近衛から大量に来る書類の処理をしながら徹底的に情報を抜き取る。

特に頑張っているのがクレアだ。隣に置かれているケーキなど味わうことなく一口で食べるとまた書類の山に突撃する。食べないとか言う選択肢は彼女には無いらしい。

「はっきり言って大臣さんたちは別の人物の犯行を疑ってますよね?」

チラチラと向けられるイネル君の視線に、僕はこれでもかと笑顔を向ける。

あの野郎共は……うちのノイエを犯人扱いしたいらしい。確かにドラゴンですら素手で引き裂くノイエなら可能だろう。

「でも犯行の時刻にノイエは僕と一緒に居た。それもこの部屋にね。目撃者と言うか証言できる人は多いくらいに複数だな」

「ですね」

だからこそあの馬鹿共は困り果てているのだ。多分一番困っているのはお兄ちゃんだろうけど。

僕と大臣たちが争うことになればこの国の政治が止まる。国王として決して許せない大問題だ。

「チビ姫」

「はいです~」

「お兄ちゃんは何か言ってた?」

「特に言ってないです~。でもアルグスタおにーちゃんの部屋に居ろって言われたです~」

監視では無くて何かしらの保険か。

お仕事持参でやって来たチビ姫が書類にサインすると、それを長身のメイドに手渡している。

馬鹿兄貴の所に居たメイドさんだけど、最近よくチビ姫の傍に居る姿を見る。

「お仕事終わったです~。ケーキです~」

「好きになさい」

「は~いです~」

ノイエの隣を定位置にしているチビ姫は、そう言いながらノイエの膝を枕にしだす。

そこは僕の場所だと言いたいが、こっちも大人だ我慢しよう。何より今夜はあの場所は使いたい放題なのだから。

「あっ」

「何か出た?」

「はい。大臣の1人が帝国の関与を疑ってますね」

「あ~。もう1人居たね」

元帝国のドラゴンスレイヤーであるオーガのトリスシアさんだ。

確かに彼女だったら人間ぐらい掴んで引き千切るのも造作ない。

「だけど彼女は現在新領地だ。荷物の運搬の護衛で一緒に行ってるよね?」

「ですね。ブシャールからも出国したと確認が取れてます」

「そうなると……また厄介だな」

つまりそれ以外の誰かがやったと言うことになる。

この手の推理は名探偵でも連れて来て欲しいもんです。

「密偵さんたちを殺した犯人捜しは諦めようか? 次にフレアさんがどうして無抵抗で攫われたのかだけど……」

あの人の性格なら抵抗ぐらいするはずだ。それと手掛かりぐらい残してくれそうな気もする。

だが今回はその2つが無かった。抵抗する間もなく捕らわれたか、それとも自ら従ったか。

「仮に従ったとしたら大問題だ。でもあの人はたぶんこの国を裏切らない」

「ボクもそう思います」

今だって涙を浮かべて一生懸命資料を読み漁っているクレアを見て思う。

クロストパージュ家の人は何だかんだでこの国に対して忠実だし、何よ曲がったことはしない。

妹がこんなに頑張っているのだらその姉が間違いを犯すだなんて考えたくもない。

「だとしたら抵抗する間もなく捕らえられたと考えるべきだろうね」

「あのフレアさんをですか?」

「ん~」

改めて彼女の経歴をイネル君と2人して調べて驚かされる。優秀な人って居るんだな本当に。

彼女に足らないのは剣の腕前と胸の大きさぐらいで……はて? これほど優秀だったら『あの日』の時に狂っててもおかしく無いような気がする。

「ん?」

「どうかしましたか?」

「ん~?」

こっちを見て来るイネル君の視線が煩わしい。

だがこれは確認しないといけない事案だ。しかしどうやって?

先生は気紛れだし、シュシュは期待するだけ無駄だ。ファシーは最近夜じゃないと出てこない。昨日一晩中抱きしめて居たホリーはガス欠だろう。あと簡単に出て来れるのはグローディアぐらいだけど、彼女の場合は出来たら出て来て欲しくない。

「ノイエ」

「はい」

「ちょっと一緒に来てくれる?」

「はい」

スッとノイエが立ち上がって、チビ姫が床に転がり落ちた。ただの事故だ。

「なに?」

「うん。ちょっとこのまま」

「……」

部屋を出てしばらく歩いて物陰に彼女を誘い込む。

その肩を両手で押さえて赤黒い目を覗き込み、そのままの姿勢を維持し続ける。

たまにノイエが何かに触発されてキスして来るけど……ダメだ呼び出す方法が無い。

「今後の課題か~」

「はい?」

「手伝ってくれたご褒美です」

抱きしめてキスしたらノイエも抱き付いて来た。

しばらくキスを楽しんで顔を離したら……その色が変化した。

「貴方が変態だと良く分かったわ」

「心外です」

「……放しなさい」

赤色となったノイエの声がとても冷たい。

手を放し開放すると、彼女はいそいそと服の乱れを直した。

「それで何?」

「ちょっと質問が」

「何よ?」

「実はですね……」

機嫌が悪そうな先生に、僕は先ほど感じたことを質問した。

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