軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

邪魔しない。見てる。大切

「お戻りですか。アルグスタ様」

「おおう……メイド長か」

部屋に戻るとメイド長が待っていた。様子的に待ち構えていた。

何となくいやぁ~なオーラを発していたから、回れ右して逃げたくなったのだが……ノイエが僕の腕に抱き付いているお陰で出来なかった。

「アルグスタ様にお聞きしたいことがありまして」

やんわりと一礼して来る彼女の様子に何となく察しがついた。

「メイド長」

「はい」

「いいえ。スィーク様」

「……はい」

言い直した言葉に彼女が察してくれた。お蔭で危ない気配が増したけど。

パンと顔の前で手を合わせて軽く頭を下げる。

「今回の件、どうかスィーク様の方で穏便に処理できませんか? もちろん僕の借りでも何でも良いですから!」

「……穏便にですか?」

相手のトーンが増々下がった。でも出来たらこの件は穏便に済ませたい。

下手をするとホリーが出て来て面倒臭いことになりかねない。

「……良いでしょうアルグスタ。今回の件はわたくしが手を回し穏便に処理します。ただし貸し1つですからね?」

「ありがとうございます」

深々と頭を下げると、メイド長は何も言わずに部屋を出て行った。

コリーさんとホールンさんを引き抜いた件がこんなにも早くメイド長に伝わるとは思わなかったが……もしかしたらあの2人は監視されていたのか? そこまでしないか?

ウイリアム様の領地から住人を三人も奪ったのだから、何かしら文句を言われるのは仕方ないけどね。

それもだいぶ露骨な手段を使ったしな……何かしらのお詫びを後でしないと。

「しばらくは自重だな」

ハルムント家となったウイリアム様の一族とは元々対立関係だったから、波風が起こるようなことは本来しない方が良いんだ。

でもホリーがあんなに喜んでくれたのを見ると、して良かったかなって素直に思う訳です。

「って痛い」

「……」

不意にノイエに腕を掴まれ抓られていた。

「ノイエ?」

「……アルグ様」

「はい」

「どうして?」

自身が抓る為に使った指を見つめ、彼女のアホ毛がやんわりと『?』の形になっている。

どうして僕の腕を抓ったのか分からないと言った感じにも見えるが、それを質問されてもね?

「僕に聞かれても」

「はい」

釈然としないがノイエが興味を失ったのでこの話はここまでだ。

「はーい。全員注目」

メイド長とのやり取りで全員の目がこっちに向けられていた件は無視して、何も無かった感じで話し出す。

「本日から近衛が落ち着くまでパルとミルはうちで預かります。

で、仕返しに近衛から山のように仕事が来ると思うけど……上手いことやっていきましょう。以上」

「「ぷはっ!」」

何故か同時にパルとミルが飛び起きた。

お互いにお互いを視線で探し、慌てて駆け寄ると抱き付いて僕に怯えた視線を向けて来る。

おいおいコラコラ……その目の訳を問いたいぞ?

「とうとうわたしたちもアルグスタ様の毒牙にっ!」

「くっ……パルはオレが護る!」

護ると言っている方がガッチリと抱きしめられているのはどうかと思うけど……何か変な夢でも見たのか?

「君たち忘れてない? 一応僕らは腹違いの兄と妹でしょうが? 身内に手を出すほど飢えて無いし、何よりノイエが一人居れば十分です。お釣りがきます。むしろ色々と足りません」

うちのお嫁さんの戦闘能力は高過ぎるんだぞ?

入れ替わられると、それまでのことがリセットされて襲いかかって来るんだから。

「まっそんな風に精神があれ~するほど疲れてるなら、とりあえず2日間の休養を命じます。屋敷に戻って風呂して寝なさい」

「……良いんですか?」

「だから言ったでしょう? 君たちを預かるついでに近衛の仕事も引き受けたって」

ノイエに視線で腕を放すようにお願いしたら増々抱き付いて来た。

何故だ? アイコンタクトって難しいな。

「嫁入り前の娘がそんな服着てそんなボロボロだと貰い手居なくなるよ。さっさと帰って寝なさい」

「……」

顔を見合わせて双子は立ち上がると綺麗なお辞儀を見せる。

一応上級貴族に養女として出されるだけあって、その辺の作法は僕よりも優れている。

「お言葉に甘えさせていただきます」

「ありがとうございます」

「おう。確り休んでから仕事して頂戴」

お互いを支え合うかのように部屋を出ていく2人を見送ったら、近衛の騎士さんが両手いっぱいの書類を抱いて部屋にやって来た。

「アルグスタ様。こちらの物はどこに置けば宜しいでしょうか?」

「イネル君宜しく」

「あっはい」

届けられる書類を部下に押し付け、とりあえず僕は廊下で待機しているメイドさんに声をかける。

「たぶんこれからしばらく書類が届けられると思うから、ここにそれを置く台が欲しいんだよね。手配しておいてくれる?」

「畏まりました」

やんわりと一礼してメイドさんたちもテキパキと仕事を始めた。

そうなると働いていないのが僕だけに見えるから不思議だ。

「さてノイエ」

「はい」

「今日はちょっと手伝って貰うからね」

「はい」

返事をしてから離れた彼女は、トコトコと歩いてソファーに座った。

「ノイエさん?」

「邪魔しない。見てる。大切」

「……」

何度も僕の事務仕事を手伝って、そう言う結論に至ったか我が妻よ~!

「覚えてろノイエ」

ただちょこんと座ってこっちを見て来る姿が可愛らしいから何も言えない。

可愛いって本当にズルいと思うわ。

「アルグ様」

「なに?」

「頑張って」

「……」

分かった。分かりました。だったら僕の本気を見せてやる~!

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