軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

直接行って確認します

「初めまして……としておこうか?」

「ええ。初めまして、兄さん」

物心ついた時分に会っていたはずだが、その記憶は遥か彼方。

王城で相対して兄弟は、どこか気恥ずかしさを漂わせながらぎこちなく握手をした。

「ハーフレン。後ろに居る少女は?」

「はい。クロストパージュ家の」

「ああ。彼女が」

母親のラインリアの面影を強く引く兄……シュニットは、弟の背後に居る少女に優しく笑いかける。

だが初めて会う彼の兄の存在よりも自分たちを囲う大人たちに怯え、フレアは頬を紅くして軽い会釈のみで慕う兄の背後にまた隠れた。

「人見知りなのか?」

「甘やかして来たから……少々」

「ならば落ち着いた時にまた挨拶をしよう」

促されるように歩き出した兄に続いてハーフレンも歩き出し、ついでにフレアも続く。

本当なら父親であるケインズとこの場で合流する予定であったが、国王陛下との話し合いが長引いていて、『あの子なら兄貴が居るから平気だろう? しばらく預かってて貰え』と第二王子に丸投げし、それを国王陛下も苦笑しながら追認した。

結果として新年のお披露目の場である会場で、第二王子が有力貴族のご息女を連れて参加する事態となったのだ。

緊張の余り大人たちの"目"に怯えるフレアには自身に向けられている視線の意味は分からない。ハーフレンもその辺の気配は疎いので気づきもしない。

こうして2人は外堀を埋められて行くことに気づかず、新年の祝いの席に参加したのだった。

「国王陛下。我々に話とは?」

「家族しか居らんのにかたっ苦しい言い方だな」

「申し訳ございません。このように教育を受けて来ましたので」

「命じたのは儂か。なら仕方あるまい」

家族だけの場であっても頑なに臣下のように振る舞う息子に苦笑いを浮かべ、国王ウイルモットは2人の息子を連れて部屋を出る。

「ここから先は部屋に着くまで口を開くでない。良いな」

黙して頷く2人の子を見つめ国王は供も連れずに歩き出した。

グルグルと城の奥を周り、何度か隠し扉を過ぎてその部屋へと出る。

「もう良い」

「陛下。この部屋は?」

「ん? 新年に王家の者だけで行う特別な儀式の間だ」

案内されたのは城のどの部分に存在するのか分からない小部屋だ。

壁に窓が無いから最深部に存在しているのかもしれないが、そう思わせているだけかもしれない。

ただ部屋の中心には机が置かれ、その上にはランプの灯が煌々と室内を照らしている。

「これを見よ」

「地図ですね」

「そうだ」

国王との会話は兄に任せハーフレンも机に近づき地図を見る。

国内の精密な地図が机の上に広げられ置かれていた。

「この地図が儀式と関係しているのですか?」

「ああそうだ」

と、国王は懐から1枚のプレートを取り出す。B6サイズ……ハガキ程度の大きさの物だ。

「これは"聖板"と呼ばれている」

「聖板?」

「そうだ。国宝に指定されている聖盤と聖布は知っておるか? どちらも優れた力を持つ者を探し導き出す道具である。だが公表されているのはその2つのみだ」

ピラピラと板を振ってウイルモットは息子たちの視線を集める。

「実は3つある。ただこれは国王のみが持つこととしている。これを知るのは国営に携わる王家の者のみだ。つまりは儂とウイルアムだけであったが……ウイルアムは極力仕事を避けている。よって今年からお前たち2人に加わって貰うこととした」

「はい」

「はっ」

硬い表情で頷き返す息子に……ウイルモットは板を机の上の地図に置く。

「ただしこれを知ったからには他言無用だ。政治を離れても言うてはならん」

「それは何故でしょうか?」

長男の問いに国王は答えず、手にする板を指で地図の上を滑らせる。

辿り着いたのは国の中心……王都ユニバンスだ。

「事前に準備を済ませておいたから今日は簡単に出来るが……これの取り扱いを覚える者が世継ぎの最初の仕事となる。後でシュニットには伝えるが、ハーフレンに伝えるかはお主が決めよ」

「はい」

「では2人とも。板を見よ」

王都の上に置かれしばらく経った後に国王は板から指を離した。

するとプレートの上に赤い点が見える。それも複数だ。

「陛下。この赤い点は?」

「ん? 何だと思う?」

「「……」」

問われた質問に息子2人は悩む。

正直頭を使うことを得意としていないハーフレンは早々に投げた。

シュニットは何か裏があるのかと幾重に考え……たぶん父親のうっかり発言に賭けた。

「国王は力ある者を探す道具と先ほど申していましたが?」

「つまらん奴よ。うっかりしておったわ」

言葉とは裏腹に、国王は嬉しそうに笑い大きく頷いた。

「これは国内の祝福を得ている者を探し出す道具だ」

「祝福を……ですか?」

「ああ。そうだ」

祝福とは、何かしらの何かによって授けられる大いなる力を指す言葉だ。

ハーフレンも存在しているとは聞いて居るが、実際に力を持つ者とは出会ったことが無い。

だが聞く話では到底人とは思えないほどの力を発揮することがあるらしい。

「……」

内心で血の滾るのを感じハーフレンは食い入るように地図を見た。

「新年にこれをやるのは、祝いの儀式でその土地その土地のめぼしい場所に人が多く集まるからだ」

「して陛下。見つけ出した者はどうするのでしょうか?」

「ふむ。今まではそのままにして来た」

国王の返事にシュニットは訝しんだ。

祝福を持つ者を野放しにしておくなど勿体無いとしか思えなかったからだ。

「それは何故ですか?」

「こちらの味方になるのであれば問題無い。だが……この国には王家に牙を向ける者が多過ぎた」

「確かに」

先王の崩御から続いた内乱とその後の闘争。

僅かな落ち着きを見せたのは本当に最近なのだ。

「だが今後は広く登用して国の為にその力を使って欲しいと思っている」

「私もそれが良いと思います」

「ならっ」

と、我慢出来ずハーフレンは口を開いた。

国王と兄の視線を受けながら……彼は意を決して言葉を続ける。

「自分がその者たちを集める役に付きます」

「ほう……してどうする?」

確かめるような国王の声にハーフレンは帯剣を許されている腰の物を叩いた。

「どう使えるか直接行って確認します」

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