軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

……おんな?

「おかわりっ」

「はい」

4杯目のスープの追加を求めハーフレンが元気な声を上げる。

それを我が子をあやしながら見ていたフロイデは、優しく目を細めた。

屋敷に来た当初は元気なく落ち込んでいた様子にも見えた。

死にかけた母親から引き剥がされて連れて来られたのだから仕方ない。

だがそれから数日で彼は元気に振る舞うようになった。

朝起きてから昼までは屋敷でフレアの相手をしながら勉強し、午後は近くの丘で木剣を振っていると家の者から報告が来ている。

子供ならもう少し遊んでも良いとフロイデは思うが、好きなことをさせた方が気晴らしになるならと口出しはしないことにした。

ただやはり相手は王子だ。もう少し勉強をして欲しいが。

「おかわりっ」

「はい」

傍に居るメイドが空の皿を退かし、直ぐに替えの皿が届く。

パンとスープ。それにお肉を頬張って……ハーフレンは備えた。

力を得る為には食事も大切だと教わったからだ。

「君は毎日来てるんだね」

何処か笑い飛ばすような口調で、今日も石に座っている存在がそう言う。

「……」

「少しは何か言ったらどうだい?」

木剣を振るう少年が何も答えないことを知っているのか、石の上に座る存在は笑うだけで咎めない。

ハーフレンとて会話を楽しみたいと言う気持ちはあるが、得体の知れない人物と仲良くするのは本来なら許されない行為である。彼は、自分が"王子"なのだと理解しているのだ。

ケラケラと石の上で笑う相手は、年の頃はハーフレンと同じぐらいか……子供特有の甲高い声をしている。だがその観察眼は確実だ。

ここで出会ってから、ハーフレンは自分が強くなっているのに気付いた。

毎日のように木剣を振るうお蔭で体力が付いて来た。

正しい姿勢で剣を振るので筋肉も満遍なく付く。

ただ相手は余り筋肉の増加を望んでいないのか、過度の鍛錬はしない方が良いと忠告して来る。

「筋肉って言う物は、力を強くする。でもそれと同時に成長を止める物なんだ。今は体を大きくした方が良い。大きい体に筋肉が付けば、人はそれだけで強くなる」

「……」

「君は大きくなりそうだ。だから今はそれで良い」

器用に石の上に寝そべる相手の言葉を素直に受ける。

強くなるなら誰の教えだって受け入れる。それがハーフレンの本心だった。

「ところで君は魔法を使えるのかい?」

「……」

ハーフレンの剣先が鈍り、立木に向かい寸止めで放っていた木剣がその皮を擦った。

黙って頷いた存在はそれ以上質問しない。見てて本当に分かりやすい相手だからだ。

「なら魔法の武器を手に入れると良い。王都に行けば手に入ることもあるって誰かが言ってた」

「……」

「でも本当は魔法を使えるのが良い」

よっと声を発して石から立ち上がった存在は、軽く手足を振るうとその場にしゃがんだ。

地面の上に手を着いてゆっくりと目を閉じる。

「集って固まれ」

魔法語で発せられた言葉に地面の土が反応する。

まるで粘土でも掴んで伸ばすように土の一部を持ち上げる。

「こうしてその場で武器が作れる」

「……っ!」

相手の手の中に土色の棒が出来上がっていた。

と、クスリと笑った相手が、その棒を構えるとハーフレンに襲いかかった。

突然のことで反応が遅れた少年は、後方に仰け反り尻から地面へと倒れ込む。

「ほらどうした?」

棒の先端が少年の顎に触れ……静かに力を無くし元の土へと戻って行く。

「相手がいつ襲って来るのかなんて分からない。だから常に備えて無いとね」

「……」

相手に完全に圧倒されたハーフレンは、どこか拗ねた表情を浮かべる。

「ごめん。やりすぎた」

笑いながら伸ばして来た相手の手を見つめ……少年の中で復讐心が芽生えた。

相手の手を掴んで力いっぱい引き寄せる。バランスを崩した相手が自分の横に倒れ込み、ハーフレンは立ち上がると馬乗りになって殴りかかろうとした。

だが相手も咄嗟に抵抗して来る。両腕で顔を守りながら振り下ろされる拳を見極めて掴んだ。

それから何が起きたのかハーフレンには分からない。

気づけば相手が自分の体の周りを回って……頭を太ももで固定されていた。

上半身を椅子代わりに座っている相手が、ハーフレンの首を跨いで足で身動き出来ないようにしていたのだ。

「こっちの方は全然だね。君にはまだ早いと思うけど」

「……」

抵抗しようと顔を振り気づいた。ハーフレンはそれに気づいた。

自身の抵抗を封じるために相手の股間が首の上に来ている。体重をかけられれば呼吸しにくくなる。現に今も息苦しい。

それは良い。気づいたことに比べれば些細なことだ。

見る見る赤くなる少年の様子に、座っている存在はやりすぎたかと思った。

「おまっ」

「えっ?」

「……おんな?」

「……」

ゆっくりと視線を下げると、自分の股間が少年の首の上にある。

気づき……恥ずかしさの余り少年に対して往復のビンタを加えてしまった。

「カミーラ?」

「……はい」

「貴女のお仕事は?」

「王子の護衛です」

「で、どうしてその王子が両の頬を膨らまして帰って来たのかしら?」

「……」

屋敷の主……フロイデの問いに"少女"は何も答えられない。

はぁ~とため息を吐いてフロイデは、自分の弟子である最年少の少女を見た。

「貴女があの子を鍛えるのは別に良いの。でも怪我をさせたらダメでしょう?」

「はい」

「……まあ良いわ。反省もしている様子だし、これからも彼の傍でちゃんと仕事をなさい」

「はい」

しょんぼりとして出て行く彼女の様子にフロイデは、やれやれと肩を竦めた。

魔法使いとしてよりも騎士に向いている子だと思っている。持って生まれた魔力が少ないのだ。

だから武器を作り出せる強化系の魔法を一つだけ教えた。後は基本屋敷の警護隊長に丸投げしている。

預けられた隊長からは『きっと良い騎士になりますぞ』との報告も受けている。

「本当に……人を育てるのって難しいわね」

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