軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結婚して頂きたい

捕縛したモミジと名乗る少女の対応は、頭からキノコを生やして戻って来たミシュに任せる。

何でも吹き飛んだ先がキノコの群集地だったらしく、しばらくはキノコの仕入れは必要無いらしい。

ってそれって本当に食べられるキノコ? 禍々しい色をしてるんだけど?

ミシュに毒見をさせたら妙なテンションで拷問……尋問を始めた。

一応相手が女性だからと言うことで建物の中でだ。それと後学の為にルッテにも同行して貰った。

「アルグ様」

「ん?」

「お肉が食べたい」

「……ロケットパンチした悪い子はイモを食べなさい」

「…………はい」

ロケットパンチの意味が分からなくても自分の握った拳を投げつけた罪悪感はあるのか、ノイエは渋々僕が差し出すイモを掬った匙を咥える。

一番の問題は流石のノイエも両手を失ってしまうと仕事になら無さそうだと言うことだ。

そんな訳で大至急お城の方に伝令を走らせ返事を待っている。

本当ならノイエを走らせればいいんだけど……両手の修復で祝福がフル稼働状態で他の部分に力を回せていない。もう片方の祝福が使えないから魔力が作れず術式が使えない状態だ。

こんな弱点があるなんて思いもしなかった。

「アルグ様」

「ん? お肉欲しい?」

「はい」

「欲しいならちゃんと言いましょう」

「アルグ様……欲しい」

プチセクハラをしつつノイエの看病を堪能しているけど、うちの馬鹿部下は本当に尋問してるんだよね? 終始お子様には聞かせられない卑猥な声が響いて来るんですけど?

お蔭で僕の思考も引っ張られてノイエにプチセクハラしまくりだ。つまり全てあの売れ残りが悪い。

「アルグ様」

「ん?」

「《ズキューン》を前後にねじ込むって、なに?」

「ノイエは気にしちゃダメです」

「はい」

仮にノイエがそれを知る場合はする方では無くされる方……って思考がまたR18にっ!

いい加減止めさせるかとも思うのだけど、空腹で身動きが取れないノイエに餌付けと言う超重要な仕事が僕にはあるしね。

と、閉じられていた扉が開き、顔を真っ赤にしたルッテが出て来た。

また扉を閉じて……彼女は顔を押さえて地面の上に座り込んだ。

「無理です! わたしあんな辱めを受けるくらいなら結婚して家庭に入りますっ! ああでも相手があれだったら……うわ~ん! 大人の世界って怖すぎですよ~!」

何かしらの価値観を崩壊させたのか、ルッテが膝を抱いて泣きだした。

そんなに辛い拷問が行われていたのか……尋問じゃなくて良い。せめて拷問の類いでお願いします。

とりあえずノイエの口にフランスパンチックな長いパンを押し込み時間を稼ぐと、お替りとルッテを回収して急いで戻る。

飲むようにパンを食べるな我が妻よ。

「それであの人なんだって?」

「……はい。西から来たと。『むしゃしゅぎょう?』とか言う物の一環で隊長に挑んだと。あとはミシュ先輩が色々と吐かせてます」

「色々?」

「……好みとか、性癖とか、どんな異性の仕草に興奮するだとか」

虚ろな目でルッテが遠くを見だしたので質問はここまでにしておこう。

問題はノイエだ。あっちの捕虜は最悪馬鹿兄貴にでも押し付ければ良い。

と、また勢い良く扉が開いた。

「もうお嫁に行けませんっ! 自害……自害させてください!」

「ふっへへ……そんなこと言って良かったんだろう? ほれほれ体は正直だぞ?」

「いゃぁ~!」

着ている着物を半分ほど開けさせ、モミジさんがミシュを背負って出て来た。そう言う表現にとどめておこう。意外と着やせするタイプなのか胸はそこそこ大きい。もしかしたらノイエ以上か?

案の定ノイエの腕が伸びて来て僕の視界を遮るんだけどね。

「見ちゃダメ」

「うん。見るならノイエだよね?」

「……はい」

少し頬を紅くして可愛いな。このお嫁さんは。

その口にお肉を運びながらお嫁さんを見て和む。

「いやぁ~! モミジ~!」

「はい?」

第三の声に顔を上げると、そこにはム○クの叫び状態な着物姿の女性が。

モミジさんを成長させたような感じの女性だね。

「私の妹を辱めるなんて……死になさいそこの小さいの!」

と突然女性が刀を抜いて横に薙いだ。

「断罪」

「ちょっとお姉さまっ! わたしもっ!」

ミシュを背負ったモミジさんが咄嗟に伏せて回避する。

一撃を受けたらしい背後の木が、等間隔のマス目状に斬られて落下した。

こわっ! また変なのが出て来たんですけど!

「大丈夫よモミジ……姉さんが介錯してあげる。辱めて生きるよりマシよね?」

「いいえ。相手が女性だからギリギリ大丈夫です!」

「同性の方が尚罪が重いわ!」

「どんな理論っ!」

巧みにモミジさんを追い詰める女性に……あれは無理だね。助けようが無い。

「糞村長の元に送ってあげるわ!」

「いやぁ~!」

惨劇が繰り広げられると思った瞬間、僕は背筋に冷たい物を感じた。

甘えていたノイエが身を起こし僕を抱きしめて辺りを警戒する。否……一点を見つめていた。

「これカエデ。いい加減になさい」

「何よ糞虫」

「口の悪い妹よのう。それよりもモミジ」

「はいお兄様」

「そのような醜い脂肪の塊はしまいなさい」

慌ててモミジさんが零れていた胸をしまう。

突然現れた謎の青年は、スタスタとモミジさんの方に向かい歩くと……彼女からミシュを引き剥がし地面に立たせる。

すると片膝を着いた。

「貴女のような理想的な女性を私は初めて見ました。どうかお付き合い……いいえ。結婚して頂きたい」

突然の求婚にその場の空気が完全に凍り付いた。

(c) 2019 甲斐八雲