軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

小さい子は最後

ユニバンス王国・北部ドラグナイト別荘

「どうですか兄様?」

「あ~うん」

「急いで王都に行って着替えて来たんです」

「あ~うん」

「先輩に着させようと思って準備してたんですけど、まさか自分で着れるようになるだなんて」

「あ~うん」

返事に困る僕の前でポーラが楽し気にスカートを振るう。

普段よりもサイズの大きいメイド服だ。フワフワと浮かぶスカートの丈は、ミニとは言わないが結構短い。

よって裾が舞う度にチラチラと白いポーラの太ももが見える。ムチッとした大人の太ももだ。

「……」

「姉様?」

僕の隣に居たノイエが突如ポーラを捕まえた。ギュッと背後から抱きしめる。

今のポーラの背丈はノイエより拳一つ分ぐらい低い。ただ白い髪と赤い目をした妹と並ぶとよく似ているように思えてしまう。

「大丈夫」

「何がですか?」

「私の勝ち」

「……」

ムニムニとノイエが妹の胸を揉んで勝利宣言をした。

そっか。ポーラはやはりノイエには勝てないのか。

「まだです。これから大きくします」

「無駄な抵抗」

「頑張れば育ちます」

「負け犬が良く吠える」

「酷くないですか!」

流石のポーラも姉の毒舌に大絶叫だ。

というかノイエはそこまで言わない。

「誰ですか? 勝手に出てきているのは?」

「……」

沈黙したノイエがアホ毛を揺らしてまたポーラを抱きしめた。

犯人はホリー辺りか? あの姉は……。

「で、ポーラさん」

「はい。兄様」

輝かんばかりの笑顔を妹が向けて来る。

「大きくなった理由は?」

「……成長期なので朝起きたら」

そんな訳あるかいっ!

「本当のことを言いなさい」

「……黒ずくめの男に変な薬を飲まされて」

馬鹿賢者の入れ知恵か?

何処の名探偵だ? と言うか逆だしね!

「ポーラ?」

「……」

ノイエが抱き着いているせいで逃れられない彼女の目を正面からジッと見る。

若干左右に流れていたポーラの視線が諦めた様子で僕を見た。

「兄様の護衛は私がします」

「はい?」

それと大人になった関係は?

「兄様のことが心配な姉様は普段半分の力も出せないんです。でも私たちが守るのならば姉様は全力を出せます」

「……」

あのノイエの戦力が普段半分なの? 何それ? どんな冗談?

「ノイエさん」

「はい」

「僕が傍に居なかったらもっと頑張れる?」

「無理」

ほら見なさい。いくらノイエだってそんな隠された力の類は、

「アルグ様が近くに居るから頑張れる」

「……」

何故かちょっとウルッとしたよ。

「じゃあ僕が傍に居たら頑張れる?」

「頑張る」

「どれぐらい?」

「……半分ぐらい」

何の? ねえ? その半分は何の半分なの?

「どうして半分?」

「……アルグ様が消えちゃう」

君の全力は核爆弾にでも匹敵するんですか?

「僕が安全だったら?」

「消えないなら頑張る」

「どれぐらい?」

「……喉ぐらい」

何が? だが一度落ち着こう。まだ慌てる時間じゃない。

「つまりポーラは僕を守るために大人になったと?」

「はい」

「……どうやって?」

「師匠が私の為にホムンクルスを作ってくれました」

理解したよ! やっぱりあの悪魔かっ!

「作ったホムンクルスを大人にした訳か」

「はい。でも師匠が言うには計算上完璧なまでの予想図に基づいた肉体だって。だから私はこれぐらい成長します!」

「胸の成長は終わってるみたいだけど?」

「そこは師匠の計算違いです! 私の胸は姉様よりも大きくなります!」

「足掻くな負け犬が」

「だから誰よ?」

ノイエの髪の色を変えずに遊べる奴はそう多くないはずだ。

「で、ポーラが傍に居ると僕を守れるの?」

「はい。師匠が言うにはこの体は色々と魔法的な制限を解除しているので全力が出せるそうです。今の私なら大型ドラゴンにだって負けません!」

「帝都に大型ドラゴンは居ないっぽいけど?」

「それでも負けません!」

段々ポーラがノイエ化してきた気がする。

ここまで頑固な子じゃ無かった気がするんたけどな……この姉だもんな。

「まあ良いや。でも絶対に僕の傍に居ること」

「はい」

凄く嬉しそうにポーラが笑う。良し良しとノイエがそんな彼女の頭を撫でだした。

野放しにしてもポーラは付いて来るだろうし、だったら傍に居て監視している方が良い。

「姉様」

「なに?」

体勢を入れ替えてポーラがノイエと正面から向かい合う。

キスでも出来そうな2人の距離にお兄さんのハートはドキドキだよ?

見ているこっちが何故か興奮を覚えてしまう。

「これぐらいにまで成長したら兄様の子供を産んでも良いですか?」

「ダメ」

「即答! どうして!」

「お姉ちゃんたちが先」

「……」

ノイエの圧にポーラが怯んだ。

何よりお嫁さんと妹の発言に僕も怯んだ。

君たちは何て会話を当人の前でしているのですか? 大丈夫ですか?

倫理観を思い出してください。

「小さい子は最後」

「最後って?」

「お姉ちゃんの子供。私の子供。それから」

「そうしたら産んでも良いんですか!」

「はい」

パァ~っとポーラの顔に笑顔の花が。

「姉様大好きです!」

「はい」

ギュッと抱き着くポーラをノイエも抱き返す。

微笑ましい姉妹の様子に普通こう胸にジーンと来るものを感じるはずが、何故か僕の背中には冷たい汗が足早に過ぎていくのです。

外堀を埋められるとはこういうことを言うのだろうか?

愕然と遠くを見つめる僕の足元にコロコロと緑色の球体が。

『なんでやねん』

「良く分からんが全力ストレス発散キック!」

『なんでやねん』

「げふっ!」

蹴り出したロボが木に当たって真っすぐ僕のお腹に戻って来たよ。

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領王都廃墟

「私は帰って来た~!」

「帰った」

「……」

色んなストレスを発散するために全力で吠えてみた。

一緒にやってくれるのはノイエだけだ。大人になったポーラは何処か生温かな感じでこっちを見ている。その佇まいは最早妹ではない。姉だ。

無事に別荘からリグの故郷への転移に成功した。この辺は抜かりなく馬鹿賢者が準備していた。

魔力供給ポンプと化したノイエがモフモフと食事を始める最中、僕は辺りを見渡す。

宝玉はどこですか?

「ロボ」

『なんでやねん』

「宝玉はどこだ?」

『なんでやねん』

「本当に会話が成立しないヤツだな……イライラが止まらんぞ?」

足を乗せグリグリとロボを砂の中へと沈めていく。

「遊んでるんじゃないよ。この馬鹿王子」

「はい?」

日差しを遮るように大きな影が僕を包んだ。

厳密に言うと大きな手が僕をマイク感覚で包み込んだ。

強制的に地面から離れて引き寄せられる。

まあ? どうしてお婆ちゃんの口はそんなに大きいの?

「腹も減っているし食ってやろうか?」

「いやぁ~! こんな場所で食べられるのはいやぁ~!」

何故か僕を持ち上げているのは新領地に居るはずのオーガさんなのです。

そんなオーガさんが上半身裸で、何故か肩には宝玉を持ったリスを乗せていた。

「何故に居る~!」

「あん? 決まっているだろう?」

何が!

ニタリと笑った彼女は空いている手で自分の腹をズンッと叩く。

「帝国には恨みがあるんだよ。だからその恨みを晴らしに暴れに行くのさ」

「行くのさって勝手に言ってるけど、誰から聞いた! どうやってここに来た!」

「それはそこの小さい……スー?」

「はい?」

すーって何でしょう?

ただオーガさんはポーラを見てその動きを完全に止めていた。

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