軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今日は頑張る

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領王都廃墟

暫くポーラを見つめていたオーガさんは、『気にするな。見間違えだ』と言って僕を解放してくれた。まあこの人が僕を掴むのなんて挨拶みたいなものだから良いのだが、怒ったポーラがオーガさんに詰め寄って何やら文句を言っている。

あの巨人を前に一歩も引かないポーラも凄いが、こっちの様子を伺うだけで食事をし続けているノイエも凄い。モグモグとハムやパンを食べて……

「キィ~!」

「毛が多い」

おこぼれでも狙っていたのだろうリスを捕まえその尻尾を口に運んでいた。

あれは全面的にニクが悪い。食事中のノイエに近づくなど食材の一種である君には大変危険な行為だ。

何かの漫画で読んだが、肉食の獣に食われたリスは尻尾だけを残すらしい。

尻尾から行ったノイエは雑食なのだろう。

とりあえず宝玉とリスは回収した。

リグだった宝玉はノイエのアホ毛が掴んでいるし、緑色した球体は……このままここに捨てて行こうかな? 何か問題あるのかな?

『なんでやねん』

僕の視線に何かを感じたのか、ロボは砂の上を転がりポーラの足元へと逃げて行った。

「ポーラ」

「何でしょうか? 兄様?」

オーガさんを叱りつけていた姿はどこかへ消え、振り返ったポーラは笑顔で優しげな表情を浮かべている。

「ロボがスカートの中を覗いてる」

「……」

スッと横に移動したポーラがその事実を知る。

全力で全身を左右に振るロボだが……判決の結果は有罪だったらしい。

「氷結」

ポーラの声にロボを中心として地面から空へ氷柱が生じた。

「あっ」

何かを忘れていたよ。

ポーラの祝福は……こんな場所でこそ輝くんだった。

「あ~生き返る。冷たいワインが腹に染みるね~」

上機嫌でオーガさんがキンキンに冷えたワインを一気飲みしている。

その近くにはニクが居て、何故か小さな氷を食べていた。

リスって氷とか食べるんだ。まああの生き物はリスの形をした別の物へと進化しているっぽいけどね。

「ひゃるぎゅしゃま」

「はい?」

変な声に視線を向けると氷を頬張ったノイエが居た。

「どうしたの?」

「ん~」

「あむっ」

捕まってからのディープキスだ。

結構な勢いで冷水を飲まされた。

「強引だな」

「水は大切」

「だね」

みんなに水分補給を勧めていたから僕は自分の分を余り飲んでなかった。

それに気づいたノイエが……もう本当に優しくて可愛い生き物だな~。

頭を撫ででこれでもかと愛情を注ぐ。

「さてと。少しは真面目な話をしようかね」

一応全員が給水をしたので話し合いの場とする。

日差しはポーラが砂と氷を混ぜた壁を作って遮ってくれたので、しばらくは耐えてくれるはずだ。

そんな妹様はオーガさんの膝を椅子にして静かに食事を摂っている。

祝福で生じた空腹を満たすためだ。体がホムンクルスでもその理論は生きるらしい。謎である。

「僕らはこれから敵地帝都へ向かいます」

「さあ行こう」

バシンと胸の前で掌と拳を打ち鳴らしたオーガさんをポーラがその足を抓って黙らせた。

凄いよ妹様。あのオーガさんが借りてきた猫のようだ。

「予想される最悪は、飛んだ瞬間に一斉放火ですかね。それに対処するにはシュシュを呼ぶしかありません」

彼女の封印魔法で壁を作りこちらへの攻撃を封殺する。

「シュシュが防御している隙にポーラはノイエの食事を」

「はい」

「ノイエは急いで食事をしたら後は好きにして良いや」

「はい」

掌に置いた氷で遊ぶノイエは……まあ詳しい命令なんて彼女には無理だ。

それにホリーの予定では、魔力回復後にはノイエはアイラーンに変わるはずだしね。

「オーガさんはどうする?」

「はんっ! アタシも好きにさせてもらうよ」

「じゃあ死なない程度にどうぞ」

「言ってな」

オーガさんも基本団体行動が出来ない人だし自由で良いはずだ。

「僕はポーラとシュシュの2人で生き延びることに徹するので……攻撃は期待しないでください。今回の僕は基本『命を大事に』です」

「男のくせに情けない」

「兄様の悪口は許しません」

またポーラが足を抓ってオーガさんが黙った。

意外とオーガさんって妹キャラに弱いのかな?

「で、今のが最悪だけど出来たらそうして欲しい敵の動きです。ここからが本当の問題です」

ホリーが厄介だと言っていた問題がある。

「相手がちゃんと出迎えた時なんだよね」

「そりゃ~暴れれば良いんだろう?」

「僕もそう思うんだけどさ~」

今回は正式な国葬への招待だ。つまり来賓の人たちが居るかもしれない。

そんな人たちの前でユニバンス代表の僕が暴れれば……僕の失態よりも国の失態になる。

国際的にユニバンスが終わってしまうのだ。

「なのでちゃんと出迎えを受けた場合は……出たとこ勝負の総力戦になります」

「はんっ! いつもの通りか」

「そうです」

ある意味でいつも通りなので大変困っているのです。

「で、次の問題は……この人数って一気に全員飛べるのかな?」

答えは『NO』でした。

ブロイドワン帝国・帝都ブロイドワン

「ほう」

出迎えるように待っていた魔女は、光り輝いた魔道具から出て来た人物を見て声を上げた。

片方はスラッとした……どこか憎きドラゴンスレイヤーを思わせるメイドと、もう片方は巨躯の怪物だ。

「ユニバンスの王子ご夫妻は?」

「はい。私はご夫妻の身の回りをお世話する為に。彼女は護衛役として先に」

「そう」

メイドの返事に魔女は納得する。

「でしたらご夫妻の到着を待つこととしましょう」

そう宣言し魔女は優雅に椅子に腰かけるのだった。

《姉様》

そっと右目を閉じてポーラは胸の中で姉を思い浮かべる。

《兄様に争う方と》

《もぐ》

魔眼を通じてどうにか言葉を飛ばすことに成功した。

ただ姉の返事は……別に良い。それがあの底抜けに優しい姉の正体なのだから。

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領王都廃墟

「予定通りですか」

「もぐ」

「どうするかな~」

「もぐもぐ」

「ノイエさん?」

「もぐぐ」

もぐもぐで会話しないの。

ベーコンの塊を食するノイエに残り少なくなった氷水を勧める。

ゴクゴクと飲み干してまたノイエに捕まるとキスから氷を口に入れられた。

「水は大切」

「そう言ってキスしたいだけでしょう?」

「ダメ?」

「ダメじゃないけどね」

「なら」

キョロキョロとノイエが氷を探すが、ポーラが作った氷はもう無い。

その事実に気づいた彼女のアホ毛がへんにょりとする。

「別に氷が無くても良いんじゃないの?」

「はい」

だが僕は次からの行動を見て全力でノイエを制した。

「ノイエさん?」

「なに?」

「その口に咥えようとしているのは?」

「お肉」

正解はベーコンでした。

氷の代わりにベーコンは無い。流石に無い。

「そのベーコンはノイエが食べなさい」

「良いの?」

「それはノイエのご飯です」

「はい」

落ち着きを取り戻したノイエがモグモグとベーコンを食べ切った。

「ごちそうさま」

「お粗末様」

「アルグ様」

「何でしょう?」

「ん」

緩く両手を広げてノイエが求めて来る。

そっと彼女を抱いてキスをした。

うむ。ベーコン味である。

「アルグ様」

「はい」

「戦うの?」

「だね」

「……」

ギュッとノイエが抱き着いて来る。

「痛いのは嫌」

「そうだね」

「でも……」

スッとノイエが僕から離れた。

「今日は頑張る」

「ん~。なら全力でね」

「はい」

フルッとノイエがアホ毛を揺らした。

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