軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

この体は全て作り物でございます

ネルネは美人である。茶色の髪と茶色の瞳が特徴だ。

彼女の美しさは自他ともに認めている。それに異性に好まれる体形もしている。

けれど彼女には有名な欠点がある。『肉食』と陰で呼ばれるほどに異性を求めるのだ。

彼女と一緒に食事を摂るのは難しい。けれど体の関係を持つのは容易だと言われている。

何故ならば彼女は異性から誘われると、まず寝室へと相手を誘うのだ。それで関係を持ち……自分が満足できる相手でなければ食事には行かない。

大半の男性が彼女に骨までしゃぶられ腰を抜かすのだ。

そんな彼女が人目も気にせずドレスを脱ぎ捨てる。

もう再利用など考えていないのか豪快な脱ぎっぷりだ。

「ハーミット家の御令嬢が」

「良いのよレイザ。ここには異性の目も無いし」

クスクスと笑いネルネは整った裸体を晒す。

胸や尻など男性を虜にするほど良い大きさで美しい。キュッと締まった腹部にも無駄なぜい肉は無い。けれど代わりに横に走る傷跡がある。

古い傷だと革の鎧を脱いでいたリディの目には見て取れた。

きっと子供の頃にでも付いた物であると。

「それにしてもイーリナ?」

「……」

モソモソとローブの中で服を脱いでいるのであろう幼馴染に気づいたネルネは足音を消して近づくと、問答無用で相手のローブを引き裂いた。

「のわぁ~!」

声を発してイーリナが自分の顔を両腕で隠す。

頭を隠して体を隠さない元近衛の魔法隊隊長にレイザは歩み寄る。

「イーリナは可愛らしいのですから。もう少し自信を持ったらどうですか?」

「……無理」

全身を真っ赤にし、しゃがんだ彼女から下着を取ってメイドは籠へと入れる。

こげ茶色の髪とこげ茶色の瞳。ネルネと幼馴染だと言うだけあって2人の色は近しい物だった。

「私はイーリナは可愛いと思いますが?」

「ダメよレイザ」

「はい?」

本心を告げるメイドに対し、ネルネは自分の体の具合を確認するように両手で触っていた。

商売道具でもある体をネルネは大切にしている。その癖で服を脱ぐとつい隈なく確認してしまうのだ。

「イーリナは子供の頃にそれが理由で嫌な目に遭ったの。それ以来自分の顔を隠したがるのよ。まあ童顔が恥ずかしいって言うのが最大の理由でもあるけど」

「そうなのですか」

詳しく聞く話でもなさそうなので、レイザは自分の服に手をかける。

スルスルとメイド服を脱いでいくレイザに、ようやく服を脱いだリディは目を剥いた。

人形だった。

先ほど見た頭の動きから普通ではないと思っていたが、メイドの体は陶器のように白く……はっきり言えばその材質が陶器にしか見えないのだ。

「その体は?」

「はい。この体は全て作り物でございます」

隠すことなく服を脱いだメイドに、リディは2度目の驚きを味わった。

胴体部分に人が居たのだ。ただその様子がおかしい。

白い髪と黄色い瞳を持つ女性は、全裸で人形の胴体部分にはまっている。

違和感の正体は言うまでもない。まず両足が無いのだ。そして左腕もない。右腕だけが残っているがそれも傷だらけであり、何より彼女は全てに傷が存在していた。

「驚きましたか?」

器用に動くのはメイドの体だ。胴体にはまる彼女はピクリとも動かない。

「子供の頃に死にかけてちょっとした幸運からこの体を得ました。おかげで手放すことが出来ずにこの状態なのです」

「そうか。驚いてしまい申し訳ない」

「いいえ。声を上げて逃げ出さないだけ流石は特務騎士様です」

クスクスと笑うメイドにリディも苦笑する。どう返事をすれば良いのか分からなかったのだ。

「ほらほらイーリナ。お姉ちゃんに貴女の成長を確認させなさい」

「断る。それがしたいのならレイザにでもしろ」

「後でするわよ。レイザの全身を隈なく洗ってあげるんだから。だからその前に」

「断る!」

顔に布を巻いて逃げて行くイーリナを追い、ネルネも浴室へと消える。

それを見送ったレイザとリディは、互いに笑い合うと支度を急いだ。

「それにしてね流石騎士様ですね」

「これか? 私の傷は貴女とは違いどれもこれも自分が未熟だから受けた物だ」

服を脱いだリディもまた裸体を晒す。

鍛え抜かれたその体は鋼のような筋肉に覆われている。

所々に傷跡が伺えるが、スラリとした高身長の彼女には何故か良く似合って見えるのだ。

両腕と言うか上半身の鍛えられ方が特に凄く、彼女が噂通り双剣の使い手なのだと理解できた。

黄色い髪を掻き上げ、人懐っこく見える黄色い目をリディはレイザへと向ける。

「マジマジと見ないで欲しい。私はどうも世間的に言う『女性らしい』と呼ばれる体とは程遠いので」

「それを言い出したら私など本体がこれですよ?」

クスリと笑いレイザは自分の胴体を指し示す。

両眼を見開いたままでどこか遠くを見つめている女性の体がやはり本体らしい。

「お互い興味が尽きなさそうですが、まずは汗を流しませんか?」

「そうだな。そうしようか」

レイザの提案を受けリディはも浴室へと向かう。

中では……先に入った2人が抱き合って床に倒れ込んでいた。

語弊がある。イーリナに抱き着いたネルネが自分の体を使って彼女を洗おうとしていたのだ。

「1つ聞いて良いかな?」

「あの2人でしたら普段からあれです」

呆れた様子でレイザが答える。

「ネルネはイーリナを玩具にするのが大好きなのですよ」

「分かった。理解した」

そういう関係の女性が居ると聞いたことがあるリディは理解を示すこととした。

「もう少し胸が大きければイーリナはモテると思うのよね……揉む?」

「断る!」

湯船の奥に身を隠す相手にネルネは笑いかける。

昔から変わらず本当に楽しい反応を見せる。可愛らしい。

「レイザも……こっちは育たないわね」

「もう諦めています。私の場合は生きていることが奇跡だと言われましたし」

人形の腕に抱かれているレイザは、片方しかない腕を伸ばし必死に人形の体を磨いていた。

「失礼だが3人は顔見知りで?」

いまさらその質問もどうかと思ったが、リディは好奇心に負けて問うた。

「ええ。元々私たちは近衛の同期なのよ。私とイーリナは幼馴染だけど」

「そうなのですか」

だから仲が良かったのかとリディは理解した。

リディの場合は王国軍一筋で仕事をして来たので、近衛との接点は少ない。

だから3人のことを全くと言っていいほど知らなかった。

「近衛はこんな風に仲が良いのかね?」

「どうでしょう? 私たちの場合は色々と欠点と言うか欠陥を抱えているので仲良くなりましたけど」

「欠点とは?」

好奇心に負けてリディは質問を続けた。

「色々ですよ。体であったり、性格であったりとね」

「そうですか」

詳しく語りたがらない相手の様子から、リディはこれ以上踏み込むことを止めた。

「そう言う騎士様もずっと国軍で?」

「ええ。昔から剣を振るうしか能のない馬鹿者で」

「特務騎士になれるなら立派だと思いますが?」

「どうでしょうね? 自分はまだまだ未熟でして」

だからリディはずっと地方巡回に出向き、自分の腕を磨いているのだ。

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