軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リリーの復活

リリー担当の黒神官のドナが相談に来た。

相談というよりクレームだ。

あれからリリーは復活し、黒神官達の前で高笑いしているらしい。

フェルネットさんの予想が当たって頭を抱えたくなってくる。

「気が付いたらリリー様に 操(あやつ) られてしまって……」

いや、分かるよ。私も一緒に暮らしていた時はそうだったから。

リリーは不思議な才能がある。

そばにいると何故か何かをしてあげたくなるのよね。

カリスマ性とはちょっと違うけど、リリーは人を引き付ける何かを持っている。

こんな無茶苦茶な性格なのに、許されてきたのも頷ける。

「分かりました。きつく叱っておきます。ドナは悪くないから気に病まないでね」

「ありがとうございます」

来年成人する彼女は、リリーの担当を続けることが条件で白神官になれるらしい。

黒神官が白神官になれるチャンスなどめったにない。だから必死なのだ。

リリーの担当が続けられるほどのメンタル強者は確かに貴重かも知れないな。

私も彼女を手放したくないし。後でリリーに会いに行かなくては。

「あれ? 私、冷たいお茶がいいって言ったのに。どうしたの?」

「いえ、そんな注文は受け付けられませんとお断りしたはずで……」

リリーがカップをトレーに戻し、ドナが困った顔で受け取っている。

「ドナは火適性よね? だったら熱いお茶に取り換えてくれる?」

「それでしたら!」

ドナがトレーを持って行こうとするので、私は彼女を呼び止めた。

「あ、聖女様」

「それ貸して。ちょっと二人にしてくれる?」

彼女は私にお茶のカップが乗ったトレーを渡し、ぺこりと頭を下げて部屋を後にした。

私がトレーを持って現れると、リリーは「あーあ」とげんなりした顔をする。

「リリー。ドナを困らせないで。囚人はお茶の温度を注文出来ません」

「暇だからちょっと 揶揄(からか) っただけだし」

あんなに元気のなかったリリーは、今や楽しそうに幽閉ライフを送っている。

幽閉ってどういうのが正解なのだろう。リリーを見ると分からなくなって来た。

「よく分からないけど、幽閉って、そんなに楽しく暮らしたらダメな気がする」

「そうなの? でもやる事はやってるし。写本の仕事も聖騎士に手伝って貰って、先の分まで終わらせたし」

てへっと舌を出して笑うリリーは悪びれた様子もない。

聖騎士までもが手伝わされちゃって。またしてもリリーの被害者が増えていく。

「仕事だから自分でやらなきゃダメなのに」

「そうだ! マリーが来たら、これを教えてもらおうと思ってたの!」

「どれどれー。あー。これね、ここはね」

リリーに説明しながら、聞かれるがままに予算書の計算をこなしていく。

いつの間にか、すべての計算が終わってすっきりしていた。

「流石マリー!」

私が何か言おうとしたら、 遮(さえ) るようににっこりされる。

だめだ。私もだ。

「あははは。大丈夫だってー。普段は一人でやってるし」

リリーが楽しそうに高笑いしていた。

「で? やっとハートへの気持ちに気が付いたの?」

くぅ。リリーは速攻で私を黙らせる方法を知っている。

「それは、まぁ。走馬灯のように、昔からの事が脳内を駆け巡ったというか……」

「それ分かるー。私もキリカへの思いに気が付いた時、一気に色んな出来事を思い出したのー」

それからリリーがどれだけキリカの事が大好きなのか、詳細に語ってくれた。

キリカと一緒に幸せだった時間を語るリリーは、とても幸せそうだった。

「だからさ、マリーは失う前に気が付いてくれてよかった」

少し寂しそうにリリーは言った。

「リリー……」

なんて声をかけていいのか言葉に詰まる。

「やめてよ。マリーにそんな顔されたら私も悲しくなるじゃない。楽しい話題はないの?」

リリーは振り切るように、明るい声を出した。

「えっと。ガインさんが私たちに『娘にならないか』って。書類上だけど」

「ガインが? なんで?」

リリーは 眉(まゆ) を 顰(ひそ) めて 怪訝(けげん) そうに私を見る。

慌てて私は、先日の災害派遣の話を簡単に説明した。

リリーにはどう切り出そうか悩んでいたのに、結局勢いで話しちゃったな。

「へー。私は別にいいけど。でも、ガインの家族に迷惑が掛からないの? ほら、私って犯罪者だし?」

リリーが胸を張って自慢げに言う。

意外にあっさりなんだ。拍子抜けしたけれどリリーっぽい。

「うん、だからね。ガインさんの家族に会ってこようと思うの」

「じゃあ、ガインが家族になったらガインとも会えるの?」

「そうだけど、会いたいの?」

「そりゃあ……。昔の事も反省してるし。今ならガインの優しさに気付けるし……」

リリーは熊の置物をじっと見る。

「リリーは変わったね」

「びっくりするかもしれないけど、私、他人にも心があるって知らなかったの。そうしたら色々とね……」

肩をすくめて笑うリリーに、私は何も言えなかった。

家族として側にいてあげる事しか。

「きっとガインさんも喜ぶよ」

同じように、ガインさんとも家族として側にいられる保証が欲しかった。

結婚しても、その先の未来にガインさんが側にいる保証が。

その思いはガインさんも同じだった。

ガインさんは私たちが家族と縁を切った時から考えていたと。

ふふふ。

それを知らずに私ったら「お父さん」って呼んじゃったのよね。

「マリー、なんだか嬉しそう」

「だって私の中ではずっとガインさんは、お父さんだったんだもん」