軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二王子からの贈り物

「マリー。正門前に荷物がたくさん届いてるってー」

フェルネットさんが研究室のドアからひょっこりと顔を出す。

「荷物?」

誰からだろう。心当たりが全くない。

振り返ってハートさんを見ると『分からない』と首を振った。

「とりあえず見に行きます」

それを聞いたハートさんは、読んでいた本を机に置いて立ち上がる。

私は実験中の薬品を、手早く棚にしまって鍵をかけた。

これはリリーの一件以来、研究所内の薬品の管理がマニュアル化されたからだ。

さらに研究していた麻酔薬の開発は、悪用されたら大変な事になると上級神官に指摘されて禁止になった。

確かにそうだ。

『異世界知識でチートスキル』なんて夢見たけれど、実際はそう上手くいくものでもないらしい。

なので解毒薬や回復薬などの害にならない研究だけにとどめられ、その取扱いも厳重になったのだ。

「早く、早く。なんか箱がいっぱい届いていたよ」

フェルネットさんは「中身何だろう?」と楽しみで仕方のない様子。

「誰からなのでしょうね?」

「あ、それを聞くのを忘れてた」

テヘペロしたフェルネットさんが先を急いで走って行った。

「ふふふ。変わりませんね」

「昔からあれだもんな」

ハートさんはフェルネットさんの背中を見ながらクスッと笑う。

しまった。ふたりきりになったことに気がついてしまった。

さっきまで研究室でふたりきりだったけど。

どうしよう。ドキドキする。

意識し始めたら正解が分からなくなってきた。

今までどうしていたのかな。歩き方すら忘れそう。

あれからハートさんはあの話には触れてこない。

色々聞きたいことはあるけれど、聞いたところで正気を 保(たも) てるとは思えないし。

それに、私が何か聞かれたら困るような、なんというか。

ちらりと横目でハートさんを見ると、ハートさんがそれに気付いて私を見る。

慌てて目を 逸(そ) らしてうつむいた。不自然だったかな。

きっと耳まで真っ赤になっているし。

バレてませんようにと祈りながら、平静を装って正門前に向かった。

「マリー! メイルスデビアス第二王子からだったよ!」

フェルネットさんが荷物の山を背にして、嬉しそうにぴょんぴょんしている。

「第二王子から? なんでしょう?」

何かを 貰(もら) う 謂(いわ) れもないし、心当たりもない。

フェルネットさんの元まで小走りで向かうと、手に持っていた手紙を渡された。

検閲したのか既に封は開いている。急いで目を通して思わず笑ってしまった。

「あははは。これ全部、第一王子に買わせた品物でした」

そうなのだ。何でも好きな物をと言われて、スージーと好き放題に書いたのだ。

手紙には、彼女も品物を受け取って実家に送ったと書いてある。

「え! 第二王子ってば、スージーにプロポーズしたの?!」

いや、叫んでから後悔した。この言葉はブーメランだったよ。

なのにフェルネットさんが「なになに?」と好奇心いっぱいに手紙を 覗(のぞ) き込む。

「褒美にかこつけて、スージーと結婚できるように側近たちが色々と手を回したみたいです」

「へぇ。あの彼女と王子がね……」

ハートさんも私の脇から覗いてくる。

近い。照れる。心臓が壊れる。

私がドキドキして固まっていると「そんなに意識しないでくれ」と、ハートさんが耐え切れなくなったように肩を震わせて顔を背けた。

むむぅ。笑い事じゃないのですよ。

大人の余裕ですか? こっちは免疫ゼロなのですけど。

「あれ? これって 種(たね) ?」

フェルネットさんが小さな袋から、手のひらに中身を出している。

あ、そうだ。

「そうなのですよー。向こうでしか手に入らない貴重な種を、王族特権で手配して貰ったのです。でも、国外に持ち出してもいいのでしょうか」

そう言いながら私は手紙を隅から隅まで目を通した。

「私の研究室内だけで、栽培し……研究で使う分には、構わない……と。ちゃっかりしてるなぁ」

もし何かの研究に成功して量産化する事になったら、隣国に依頼するってことだよね。

向こうに損は一つもないし。

「じゃあこれは?」

大きな箱を指さしたので『どれどれ』と中を 覗(のぞ) いて見る。

「ああ! これは最新の分析器です! 魔宝石が希少で、これも隣国でしか手に入らないもので……」

「マリーもちゃっかりしてるじゃないか」

「まったくだ。フェルネットの悪い影響だな」

フェルネットさんは「なんの事?」とすっとぼけ、ハートさんは箱の中を覗いて笑っていた。

「スージーとノリで注文したのですけれど、良いのでしょうか」

「良いんじゃないの? くれるって言ってるんだし」

ま、フェルネットさんに聞いたらそう言うよね。

ハートさんは聖騎士達に、荷物を研究所に運び入れるように指示をしているし。

「丁寧にお礼状を書かなきゃですね。うふふ。お値段の桁が違いますし」

「あははは。そんなに高価だったの? 流石マリー。迷惑料もきっちり回収するとはね」

私が肩をすくめてそう言うと、フェルネットさんは親指を立ててウィンクをする。

てへ。小さな頃から一緒にいたから、知らないうちに影響されちゃったかな。