軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リリーの旅

「リリー。タリー姉さんの言うことをよく聞いてね。それと我が儘を言わないこと、勝手な行動をしないこと、それに……。あ、ちょっとそれ待って」

マリーは私に小言を言いながら、あれやこれやと荷馬車に荷物を積んでいる聖騎士に指示を出していた。

マリーは今まで会った誰よりも 口煩(くちうるさ) い。しかも私 に(・) だけ。

「分かったってば。ちゃんと手伝いもするし、文句も言わないし、ふざけない。これでいいでしょ」

ため息を吐いたマリーは心配そうに私を見ながら、タリーに荷物を渡していた。

「こんなに沢山の回復薬や解毒薬、全部あんたが作ったの? それに緊急用の手紙の魔道具まで手配してくれて。あんたがここまで心配性だとは知らなかったわ」

「ははは。意外にマメなんだよね」「用意周到なんだ」

「ちょっと姉さんもテッドさんもハートさんも。笑ってないで持ち物の確認をしてくださいよ」

マリーから姉さんと呼ばれているタリーが、まるでマリーの本当のお姉さんのように話している。

ハートやテッドもタリーと 親(した) し 気(げ) だ。

ガインやフェルネットやシドさんは向こうでゴバスと談笑している。

ここには私の知らないマリーの世界があると初めて知った。

誰に聞いてもマリーのことを褒めていた。みんなマリーのことが大好きでたまらないという顔で。

「リリー。元気でな」

おじいさまは優しく私を抱きしめてくれる。

なのに私は悪い子だからおじいさまには嫌われたくなくて、どうしても緊張してしまう。

私の居場所はここじゃない。

私が戻ればキリカもきっと喜んでくれるはず。

そう思うと早く王都から出たくなった。

「もういいから早く行こうよ」

おじいさまが「そうだな。余計に別れが辛くなる」と名残惜しそうに私から離れていく。

タリーがキビキビと歩いて来て、私の頭にフードをすっぽり被せた。

「ここを出るまで我慢して。あんたの顔は騒ぎを起こすからね」

まだ初夏だし暑くないからいいけどさ。

髪をくしゃくしゃにして汚してしまえば誰だか分からなくなるのに。

私が仏頂面で何も言わずにいると、タリーは私にウィンクをする。

そして私と一緒に荷馬車に乗って、手綱を握っているゴバスに「行って」と短く合図をした。

「リリー! 手紙を書くからな!」「元気でな!」「気を付けろよ!」

おじいさまは涙を流しながら手を振っている。ほかのみんなも笑顔で手を振る。マリーは……。

「マリーー!」

急に胸がいっぱいになり、私は力一杯に声を出した。

せっかくマリーが笑顔で手を振ってくれているのに、その姿が 溢(あふ) れる涙で 滲(にじ) んでしまう。

ねぇマリー。私ひとりで大丈夫なのかな。離れたくないよ。

いつの間にか私もマリーのことが大好きになっていたみたい。

「リリー。これからよろしくね」

タリーはそう言って、グスグス泣く私を後ろからギューッと抱きしめてくれた。

あー。心があったかいなー。

そうしているうちに教会の白い大理石で出来た大きな門がどんどん遠ざかっていく。

王都を出るまで荷馬車の周りに聖騎士の監視が付いて、何事かと道行く人が振り返っている。

「目立つから中に入って」

外に顔を出していた私は、マリーとの約束通りタリーの指示に従った。

それにしても、あのゴバスって人はシドさんよりも怖いらしい。

ガインがこっそり教えてくれた。逆らったらもっと怖い目に遭うって。

顔を見たら納得だよ。あんなに怖い顔の人は初めて見たし。

無口なゴバスを怒らせないように気を付けよう。

結構速いスピードで走る荷馬車は、すぐに山の 麓(ふもと) に辿り着き山道に入って行った。

「山越えは初めてじゃないのよね?」

「前は高級馬車で王子と一緒だったから」

私がそう言うとタリーは「ああ」と苦笑いをする。

「残念だけどそんな豪勢な旅じゃないから覚悟してね」

既にガクンガクンと大きく揺れる荷馬車に我慢しているし。

もっとゆっくり走って欲しいけど、あのゴバスを怒らせるのが怖いので文句言うのを我慢した。

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「今日はこの野営ポイントで休んでいこう」

夜空には無数の星が輝いている。

もう何度目かの野営ポイントだ。だいぶ慣れてきた。

私は荷馬車を飛び降りて、タリーの買い物に付き合う。これも慣れた。

タリーは行商人とポンポン楽しそうに会話をして、なんだかんだで安くするから凄いのだ。

「ほら、お姉さん美人だからこれもオマケだ」

「うふふ。ありがとう」

タリーはおじさんにウィンクをして、受け取った3本の串焼きのお肉を私に渡す。

やった!

「リリーの好きなお肉よ。今日はご馳走ね」

私が笑顔で頷くとタリーは私の頭を優しく撫でる。

「今日はリリーにドレッシングの作り方を教えてあげる」

「難しくないの?」

「大丈夫。誰でも出来るコツがあるから」

タリーは茶目っ気たっぷりに笑うと「いらっしゃい」と私に色々と教えてくれた。

「リリーは意外に器用なのね」

「隣国で出来た友達が料理人の娘で、毎日 皮剥(かわむ) き競争してたから」

私の芋を 剥(む) く手付きを見て、タリーは「上手ね」と目を細めた。

彼女はいつも私のことを認めてくれる。

私はそれが嬉しくて、同時に誇らしくて言葉にならなかった。

「うふ」

ナイアと一緒に 挫(くじ) けずに練習して良かった。

これからはもっと色々と頑張ってみよう。

「あ! ゴバス! ちょっと味見して。これリリーが作ったのよ」

「おう」

ゴバスは顔は怖いけどタリーの言う事は何でも聞いている。

ふたりは来年結婚するって聞いて驚いた。

「昔から私の事を一番に思ってくれていたの」

タリーはそう言って幸せそうに笑っていた。

ゴバスはタリーをとても大切にしてる。

タリーを見るゴバスの目は愛情が 籠(こも) っていた。

「早くキリカに会いたいな」