軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二王子の運命

「司教様。こちらは、私の弟で、第二王子の最側近をしているブリッドです」

「初めまして。ブリッドと申します。第二王子の最側近をしております」

「情報に感謝する。こちらへ」

司教様は私を大きな地図の前に案内する。

「ブリッド。頼みたい事がある。どこまで協力が得られる?」

「言葉通り『全面的に』です。雑用でもドブさらいでも第二王子はやりますよ」

私がニヤリと笑うと司教様もニヤリと笑う。

「話は聞いている。第二王子が聖女様の妹を連れて来たことも、その目的も」

「はい。お恥ずかしい限りです」

司教様は厳しい顔になるとそう言った。

「私はお前達……、第二王子が好きだ。だがそれとこれとは話が別だ。分かるな?」

「はい」

司教様は何かを確かめるように私の目をじっと見つめた。

「夜半に聖女様の救出部隊が王城に向かう。聖騎士と正面からの抗争を避ける為、城の外に聖女様を連れ出して欲しい。そしてハート様に引き渡せ。それらを全部、第二王子本人にやらせる事が出来るか?」

「はっ! 必ず!」

大役だな。

王子 自(みずか) らやらせることに意味があるのか?

「それと、聖女救出部隊のハート様に “神の託宣” が発行されたと本部から連絡が来た。この件は教会から正式に国王に通達する。計画の変更があればこちらから連絡するので、第一王子に悟られるな」

「っ、かしこまりました」

大変だ! 大変だ! 大変だ! “神の託宣” が発行されたって!

まるで聖女様が誘拐でもされたみたいな……。

あ! だから救出部隊なのか!

もしかして、その片棒を無自覚に担いじゃってたって事?

王子ーー。今回はやばいですってー。

道理(どうり) で司教様が第二王子に大役を任せてくれたはずだ。

このままじゃ共犯者だから、救い出した英雄になるしか生き残る道がないんだ。

司教様が私達にチャンスをくれたんだ。

まったく第一王子はなんて事をしてくれてたんだよ。

国と心中するつもりか。

速足で教会を出ると大急いで馬車に乗り込む。

「急いで城に戻れ! 大至急だ!」

「はっ!」

馬車を走らせ王城の城壁門を抜けたところで見覚えのある背中が見えた。

「あれは元護衛主任のダジールじゃないか?」

私がそう聞くと、同乗していた護衛と部下はそれぞれ窓の外を確認する。

「そうですね。一緒にいるのは第一王子の最側近のラーセン様の部下ですよ」

「ラーセン様の?」

護衛と部下が力強く頷いた。

「私が後を付けます。ブリッド様は先に王子の元へ」

「あ、ああ。頼む。気を付けろよ」

馬車の速度が落ちると護衛はそのまま飛び降り走って行く。

「城に着いたら誰か応援に向かわせてくれ。ダジールを拘束しろ。ダジールは強いから大勢連れて行くようにと。それと、ラーセン様の部下に絶対に気取られないようにと」

「はい」

『拘束はやり過ぎかも?』と悩んだが『間違っていたら謝ればいいか』という完全に王子思考で部下に指示した。

なんせ “神の託宣” が出ているんだ。

やり過ぎなくらいで丁度良い。

城の前で部下と別れて私は急いで王子の元へ向かった。

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「王子! はぁはぁ、大変です!」

ブリッドがドアを開け放ち、いきなり私に向かってそう叫んだ。

「大丈夫か? とりあえず座ろう」

私はフラフラになって入ってくるブリッドに驚き、肩を貸してソファに座らせる。

「王子。はぁはぁ。神の託宣が……はぁはぁ……発行されました」

「か、神の託宣!? え? この国潰されちゃうの? やっぱり聖女誘拐だったの?」

ブリッドは目を丸くして驚いた。

「はぁはぁ。はい。おそらく誘拐です。そちらにも何か情報が?」

「そうだった。ブリッドが出て行った後、お前の部下から聖女の居場所を突き止めたと連絡が入ったんだ」

ポンと手を打ってそう言うと、ブリッドが私の胸倉を掴む。

「それで?」

「そのまま監視させてる。聖女に危害が及ぶようなら助け出すように、お前の部下に指示を出した」

私の言葉にブリッドが手を放すと体を弛緩させ、天井を仰いでソファに背をあずける。

あれ? まずかったのかな?

ブリッドはそのままの状態で大きく息を吐いた。

「王子ー。素晴らしいですよー」

「なんだよー。脅かすなよー」

笑っていたブリッドが急に体を起こし、姿勢を正して真面目な顔をする。

「王子。よく聞いてください。リリーがこの件に関与しているという事は、私達も無関係じゃないのです」

「だよなー。見た目をそっくりに変えちゃったもんなー」

私は無自覚にも聖女の偽者を作り上げていたのか。

命の恩人の聖女様に迷惑かけちゃったな。そんなつもりは無かったのに。

「でも、教会が私達にチャンスをくれました。夜半に聖女様救出部隊が王城に来ます。聖騎士と正面からの抗争を避ける為、城の外に連れ出してハート様に引き渡してほしいとの伝言です」

「それを私がやっていいのか? 聖騎士が乗り込んできて連れて行かずに?」

もうダメかと諦めたのに、教会側が助け舟を出してくれるなんて。

「そうです。この国の教会では、王子が無実であると分かってくれています。ですが、教皇様のいる教会本部には 示(しめ) しがつきません。なので王子には救出劇の立役者になってもらう必要があるのです」

「この際、雑用でもドブさらいでも何でもする。それで、そのハート様というのは?」

「“神の託宣” が発行された、聖女救出部隊のトップです」

なるほど。 “神の託宣” を掲げる者に引き渡せばいいという事か。

「聖女様に伝言をしたいな。お前の部下に頼めるか?」

「はい。王子は普段通りにお過ごしください。第一王子にバレたら計画は終わりです」

「そうだな。聖女様に危険が及んだら大変だ」

しかし、夜半に連れ出す時、兄上の手の者と戦闘にならないのかな?

ま、第二王子を正面から切ってくる馬鹿はいないから、聖女様の盾くらいにはなれるか。

いないよな? うん、きっといないはず。

切られても自業自得だし、悔いは無いか。

それにしても聖女誘拐って。

兄上は何故こんな事を……。私が死ぬ前に、国が亡ぶわ。