作品タイトル不明
ふたりの王子とその側近
「ブリッド。今週もクビになった使用人はいないよな?」
「はい第二王子。ここ最近は誰もクビになっておりません」
ブリッドはしたり顔でホッとしている私を見る。
威張る事じゃないけどな。
「子供と一緒作戦は成功したな。ホッとしたぞ」
「ええ。それに、最近は料理人の子供と一緒に料理を作っているようです」
料理?
「まだ人前には出せないが、食事のマナーも一通りは出来るようになったのもそのせいか?」
「まぁそうですね。料理人の子供は、自分の作った料理の食べ方を親に教わりますから」
なるほどなぁ。
「勝手に身に付けてくれるとは私は本当についてるな」
「その王子の運を私の手柄にされたり、有能だと誤解されて困っているのですけどね」
そういや先日の隣国訪問の時も、旅行に置いて行かれたと思って御者に変装して偶然付いて来たと言っていたな。
「いい事ではないか」
「敵が私を襲いそうです」
ブリッドが『ニッ』っと顔だけで笑う。
「私が襲われた方が良いみたいに言うなって」
「ははは」
ブリッドにも護衛を付けた方が良いのかな。
「なぁ。もう春だし、そろそろリリーを帰らせても大丈夫かな?」
「肌艶も髪もとても美しくなり、見た目は聖女そっくりですよ?」
ブリッドが意地悪そうに私にそう言った。
「ふふふ。私を変態王子にしたいのか?」
「いえ、確かめただけですからお気になさらずに」
気にするわ。
「あ、言い忘れました」
「どうした?」
「リリー様が先日のドレスはもう飽きたと……」
「またか……」
はぁ……。
「あはは。冗談ですよ」
くそ。
「全然面白くないぞ」
「わはは。私が面白いだけです」
ブリッドはご機嫌だな。リリーが帰る事がそんなに嬉しいのかな。
いや、嬉しいな。私もすごく嬉しいな。
「ははは。いいから早く帰らせろってー」
「はいはい」
私は笑いながらブリッドを部屋から追い出した。
でも何かとんでもない胸騒ぎがするのは何故だろう……。
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「ラーセン様。極秘で会いたいと、メイルスデビアス第二王子の元護衛が来ておりますが、いかがなさいますか?」
「 第(・) 一(・) 王子の側近の私に、 第(・) 二(・) 王子の元護衛が? 誰だ?」
「護衛主任だったダジールです」
第二王子のスパイか?
それにしてはあからさますぎるな。
あの第二王子ブレーンのブリッドがそんな馬鹿な事をするわけがないか。
「通せ」
「はっ」
ダジールは姿勢よく部屋に入ると最敬礼をした。
「何の用だ?」
「本日はラーセン様にお耳に入れたい話がございます」
私は少し悩んだが、聞くだけなら損はないと思い、話を聞くことにする。
「話せ」
「メイルスデビアス第二王子が先日の視察で隣国に行った際に、新しく誕生したあの聖女の双子の妹を連れて帰りました」
聖女の双子の妹?
そんな話は聞いた事がないぞ。
「第二王子は聖女の双子の妹をどうするつもりだ?」
「はい。今は綺麗に着飾らせ、見た目を磨き上げております。また、マナーなども身に付けさせています」
あの馬鹿王子のする事だ。碌な事じゃない。
人形を着飾らせてどうするつもりだ。
「まさか聖女の代わりに娶る気か? いや、流石に身分が違い過ぎるか」
「顔が同じなのですよ? 本物と入れ替えれば、噂の聖女を我が国に迎え入れる事が出来るのではないかと」
そうか!
馬鹿王子は何も考えていないだろうが、あのブリッドならやりそうだ。
毎回、毎回、ブリッドが関わると暗殺は阻止されるし、馬鹿王子の失敗も全部手柄に成り代わる。
きっとブリッドは、聖女を馬鹿王子に娶らせて王位継承権を奪う気だな。
「ダジール。お前は何故私の元に?」
「聖女の双子の妹には借りがありますからね。きっちり返させて貰おうかと」
ダジールは憎悪に満ちた顔をした。
「訳ありか。まぁいいだろう。今後は私に付け」
「ありがたき幸せ。感謝します」
早く第一王子に報告しなくては……。
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「ブリッドが聖女の偽物を作ってる? ラーセン、それは確かな情報か?」
「はい、ヨルスアージュ第一王子。第二王子に近い者からの情報です」
「信用できるのか?」
「はい。訳は言えませんが、敵の敵は味方という事で……」
なるほど、利害の一致か。
あいつも敵が多いな。
「メイルスの奴め。もしかして聖女と妹をすり替えるつもりか?」
「はい。私もそれを懸念しております。もし、本物の聖女を娶る事が出来れば次期国王の座は揺るぎない物かと」
メイルスは馬鹿だから何も考えていないな。
おそらくブリッドが何か企んでいるのだ。
先日の暗殺も失敗したし、次期国王の座を狙ってあの手この手で俺の事を……。
ブリッドをこちらに引き込めないかと画策しても、メイルスが絶対に手放さないし。
「よし! その聖女の妹を手に入れろ! その計画をそのままこっちで貰おうじゃないか!」
「はい。その前に、情報源がぜひ計画を聞いて欲しいと申しております」
「情報源が?」
「はい。使える計画なら利用して使い捨てましょう」
流石ラーセンだな。
私は満足して頷いた。