軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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時間にしてはほんの数瞬という短い時間だった。

だけれどそのとき僕が目にして、考えたことはあまりにも多かった。

まず見えたのは、ミミノさんだった。ミミノさんは光天騎士王国の長身騎士の隣に出現し——そうとしか言えないほどに空中から突然現れたように感じられた——僕に向けて小さなビンを数本見せた。

ミミノさん逃げて、とか、どうやって出てきたのか、とか、考える一方で、僕はそのビンがなんなのか気づいた。

推測にしか過ぎない。

でも、そうとしか考えられない。

だから僕は両手を広げ——すべての魔力を込めて魔法を発動した。

【光魔法】を。

それは【闇魔法】とは対になる魔法で、楔ロケットを止めるには最も適した魔法であるはずだった。

ただ問題は——膨大な終焉牙の魔力量に対して、僕の魔力では到底かなわない、ということだ。

それを解決するのが、ミミノさんの ビン(・・) だ。

「レイジくん!!」

ちょっと会わなかっただけのミミノさんなのに、なんだかとても懐かしい。そして会ってすぐ僕を信じて——僕なら やってくれる(・・・・・・) と信じて、あのビンを投げた。

ごっそりと魔力が抜ける感覚——僕の魔法が発動する。

「 きらめく極光(グリントオーロラ) !!」

ぐるりとロケットを取り囲むように出現する光のカーテン。

発射された【闇魔法】は先端がその光に触れるや溶けるように消えていく。

僕の魔力は、【魔力量増大】の天賦を取り込んだこともあって一般の魔法使いよりははるかに多い。だけど——それでも、消せるのは5分の1がせいぜい。

カーテンの光も、闇を打ち消すのと同様に消滅していき、やがて穴が開いた。

『無駄ナコトヲ!』

調停者の勝ち誇った叫びが聞こえる。

そうだろう。こんな薄いカーテン1枚で防げるような魔法じゃない。

すぐにもカーテンはズタズタになって外へと闇の楔が飛び出していく——。

パリンッ。パリンパリンパリンパリンッ。

放物線を描いて僕の足元まで飛んできたビンが割れるや、紫色の燐光をまき散らす。

と同時に、動画を早回しするように、割れた数と同じだけのカーテンが出現した。

「1枚なら無理でも、枚数を重ねればいい」

『——ナァッ!?』

これはミミノさん特製の「 魔法複製薬(デュープ・ポーション) 」。発動した魔法をもう一度再生するというとんでもない秘薬だ。

ミミノさんは僕がなにか、魔法で解決しようとするだろうと考えてこの秘薬を使ってくれたのだ。

途端にまばゆくなる周囲。

ドドドドドドドッ——と【闇魔法】はカーテンに直撃して消滅していく。

光量はすぐにも少なくなって、最後の闇が消えると、最初の1枚程度の光だけが残り、それもまた溶けるように消えた。

「ふぅー……」

その場に膝をついてしまったけれど、なんとかかんとか意識までは手放さずに済んだ。

「レイジくん!」

「うばあっ!?」

横からミミノさんに飛びつかれ、僕は結局地面に転げた。

「レイジくんだべな!? 本物の!」

「あ、は、はい……」

「よかった……生きててよかったよぉ……」

僕に馬乗りになりながらメソメソと泣き出してしまう。その身体の大半が透けて見える、謎の光学迷彩っぽいマントが気になってしょうがないのだけれど、それはともかく、

『ナ、ナ、ナ、ナンナノダ、貴様ハ……!』

まだ戦闘中だ。

僕はミミノさんにどいてもらって立ち上がると、調停者を見やる。

『「災厄ノ子」、ヤハリ最初ニ貴様ヲ殺スベキダッタ』

ゆらりと炎が揺らぐと、人の形となって終焉牙の外へと出てくる。立っていられないほど衰弱した終焉牙はその場に倒れた。

どこに隠し持っていたのか天銀のプレートメイルが調停者の身体にはまっていく。

調停者は単体でも強い。

僕の、魔力カラッポの状態で戦えるのか……?

「……弟くんを殺す? 冗談言えよ。死ぬのはアンタだろうが」

そのとき僕の背後から声が聞こえた——。

「ラルク……!? どうして!」

ぼろぼろで戦線離脱したはずのラルクがここにいた。

服装こそさっきと同じだったけれど、その足取りはしっかりしている。

「貴族の嬢ちゃんに治してもらったんだよ、『鼓舞の魔瞳』とかいうやつでさ。力、使いすぎてぶっ倒れたみたいだけど」

「え? え? エヴァお嬢様が?」

確かにラルクの力は回復していると【森羅万象】でも答えが出ている。

「ノンに治してもらって、俺も戦線復帰だ」

あちこち汚れていたけれど、大盾を持ったダンテスさんもやってきた。

「……騎士が守られるのでは話にならんな」

すると光天騎士王国の長身の騎士もやってきて、僕の前に立った。

「おい、レイジ。後で話があるからよ、 今度は(・・・) ちゃんと待っててくれよな——あの黒い野郎にゃ恨みがしこたまあるもんで、そっちが先だ」

グレンジード様も予備の槍を手に調停者へと向かう。

他にも続々と騎士や兵士が集まってくる。

これだけいれば、いくら調停者とてどうしようもないだろう。

『…………』

だけれど——調停者は無言だった。

そのたたずまいにはどこか「余裕」さえ感じられる。

(なんでだ? 他に何体もいるから、この1体が破壊されてもどうでもいいみたいに思っているのか? あるいはなにか他に——)

ちらり、と調停者が見やったのは空。

レッドゲートだった。

「あ——」

それは最悪の展開だ。

ゲートの向こうにちらりと黒く巨大な影が見えた。

「次です」

僕は声を上げた。

調停者は、次の巨大種をこちらに連れてこようとしている——。

「ラルク! 調停者の相手、お願い!」

「そりゃ最初からそのつもりだったよ。んで弟くんは……ってどこ行くんだ!?」

僕は走り出した——レッドゲートへ向かって。

次の巨大種が出てくる前に亀裂を塞がなければならない。

だけど、走り出してすぐにがくんと膝に力が入らなくなった。魔力を使いすぎたのだ。

「レイジくん、これ! 体力と魔力の回復薬だ!」

「っ、ありがとうございます……!」

さすがミミノさん、わかってくれてる。僕は飛んできた小さなビンの蓋を取って、甘ったるい液体を口から流し込んだ。腹の中が熱くなって、力が湧いてくる。

「行ける……!」

僕は走り出す。【疾走術】で、常人ならざる速度で。

道具袋から取り出した、星12の天賦珠玉【 離界盟約(ワールド・アライアンス) 】。

これがあれば、なんとかなるはずだ。

「間に合えええええええ!」