軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レッドゲートは終焉牙が通行したせいで大きく開いており、大型モンスターでも簡単に通り抜けられるような有様だった。

終焉牙の周囲に多くの兵力が割かれているけれど、帝国市街地にはさらにモンスターが追加されており、こちらでも激戦が繰り広げられている。

僕は戦う人々の間をすり抜けるように走り、レッドゲートを目指す。

レッドゲートから吹き込んでくる風は濃密で、肺を焼くような異様な瘴気を持っている。【森羅万象】によれば微毒であるという。

終焉牙が出てきたことを考えるに、レッドゲートがつながっている先は——「裏の世界」の「未開の地カニオン」。8の巨大種が縄張りとしている土地だ。

「——あれは……!」

黒いシルエットでしか見えなかったが、終焉牙と同等の大きさだ。フォルムは丸く、動きは鈍重。

亀の巨大種である「 封印亀骨(ロストジュエル) 」だ。

『オオォォォォ……』

開かれた口からカッと光が放出される。

それは耳をつんざく爆音とともに帝国の地面に突き刺さると地面を割り、土砂を巻き上げる。口を向けた方向へと光は走り、高層建築を次々と真っ二つに割って消えた。

一拍遅れて斬られた建物が滑り落ちるように崩れていく。

「……むちゃくちゃだ」

瞳は赤黒い光を放っており、怒りに感情を支配され、正気を失っている。つまり終焉牙と同様に調停者にコントロールされているのだ。

あんなのが来たらたまらない。

のそり、のそりと封印亀骨はレッドゲートへ近づいてくる。動きが遅いのが不幸中の幸いだけれど、あと数分もしたらこっちに来てしまうだろう。

僕はレッドゲートの下までやってきた。落下によって死んだモンスターが山をなしており、すさまじい腐臭を放っていた。追加の大型モンスターが落ちてきてはあちこちへ散り、あるいは死体を漁っている。

建物の陰に隠れ、僕は身体から【森羅万象】を抜いた。

「ッ……!」

動悸が速まり汗が噴き出した。気持ちの面でもだいぶ無理をしていたみたいだ。【森羅万象】がもたらしてくれる冷静な思考でなんとか押さえつけていたのに、これがないと今すぐ逃げ出したくなるし、泣きたくなる。

「しっかりしろ……! これは僕にしかできないんだぞ……!」

代わりに取り込むのは星12の天賦珠玉、【離界盟約】だ。

これは、これだけは、僕にしかできない。

僕は異なる世界からやってきた転生者で、スキルホルダーが16あり、そんな境遇の人間は僕以外にいないのだから。

(僕はたったひとりだ。でも、ひとりぼっちじゃない……!)

僕には仲間がいる。仕えていた人たちもいる。

押し寄せてくる孤独感をはねのけ、僕は天賦珠玉を掲げる——するりと溶けるように身体に入り込んでくる。

今の「盟約者」がどこにいるのかがわかる。

ふたつの世界を成立させる盟約の情報がクリアに、頭に浮かんでくる。

「……やっぱり、あのレッドゲートはイレギュラーだ! 完全な盟約違反!!」

見上げたレッドゲートがどうやって世界をつなげたのかがはっきりとわかる。

ラ=フィーツァは、完全に、自由に、ふたつの世界を行き来できることを目的として「九情の迷宮」を作ったのだ。

僕も使った、歩いて通れる世界をつなげるルートは確かにあったけれど、あれは調停者たちが監視しているものでいつでも簡単に閉じられてしまう。

調停者の管理外のルートを作ろうとしたのだ。

ラ=フィーツァの作り上げた「九情の迷宮」は長年に渡り「9つの感情」エネルギーを溜め込んだ。「天賦珠玉」が非常に重要な数字として考えている「8」を超える「9」をもって、そのエネルギーをぶつけ、ふたつの世界をつなげる盟約に穴を空けた。

その穴こそがレッドゲート。

一度空いた穴を固定化すれば、世界はつながる。

だけど、計画は完璧じゃなかったみたいだ。

迷宮の経年劣化による崩落もあって、想定ほどエネルギーはたまっていなかった。結果として穴の固定化はできておらず、終焉牙が無理やり広げることもできたし、逆に言えば、

「今なら閉じることができる……!」

盟約にとってイレギュラーであるレッドゲート。流れ込んでいる「九情の迷宮」のエネルギーは、今や僕の目にははっきりと見える。

「でも……間に合わない」

解決方法は簡単なことだ。「九情の迷宮」に行って、その機能を停止すればいい。全部を止める必要はなくて、レッドゲートを維持できなくなる水準まで落ちればいいのだから、3つか4つでいいだろう。

だけど——今から各迷宮に潜って、機能を停止している間に封印亀骨はこちらの世界にやってきてしまう。

「どうすれば、どうすればいいんだよ……!? レッドゲートを閉じる方法がわかったって、時間が足りないんじゃあ——」

僕はこのときまで気づいていなかった。【森羅万象】を外したせいかもしれないし、すさまじい腐臭や瘴気のせいで注意が散漫になっていたからかもしれない。

そんな巨大な生き物が背後にいるだなんて、気づきもしなかったのだ。

《「災厄の子」よ》

振り返ったそこにいたのは。

《閉じ方がわからず我らは手をこまぬいているだけであったが……幻想鬼人は調停者の範疇を超えて少々やり過ぎた》

巨大な翼を持ち、鱗は魔力によって覆われている。

アッヘンバッハ公爵領領都で見たときには金色に近い色合いだったけれど、僕に話しかけてきた個体は赤色で、その背後の上空には4体の、青、紫、紫、緑が飛んでいた。

そう、こちらの世界の調停者は——竜は、言った。

《亀裂を閉じる方法とやらを教えよ。我らが手助けしてやる》