作品タイトル不明
94話.皆で夜食
もう辺りも暗くなりだした頃、藤堂先生のいる職員室へと足を運び、重要な話があるという事でいつもの『表彰部屋』に着た俺達。
「とりあえず、これを見て頂けますか藤堂先生」
「おう……?」
「「「はぁっ……!」」」
「!!」
Z戦士よろしく、リーシャさんと紅葉さん、美鈴さんが気を発するように『レインフォース』を発動させる。
目に見える形で全身を魔力が覆い、まだ不慣れな分が外気として放出されている。
「こりゃぁ……たまげたな。お前ら、なんでこの秘伝の技を知ってんだ? 使える奴は限られてるし、使える奴らは秘伝として一族を継ぐ者にしか教えない秘伝中の秘伝だったはずだぜ?」
「「「玲央(君・さん)が教えてくれました」」」
「またお前か玲央……」
あの、間違ってないんですけど、皆そんなハモらなくても良いじゃないですか。
烈火と美樹也も下を向きながらブルブル震えてるけど、笑いを堪えてますよね分かるんですよ?
「ええとですね、一応断っておきますけど、これ人間なら誰でも扱えますよ?」
あえて、人間という部分を強調してみる。
これで藤堂先生なら気付くかもしれないし。
実際は魔族以外は扱える。
魔族だけは適性が無く、扱えないんだよね。
魔族にしか扱えない魔法もあるので、その関係かもしれない。
「成程な……。それは、俺も使えるってことか玲央?」
「勿論です。けど……藤堂先生はこれを使うより、『オーラ』の方が良いですよ?」
「あー、やっぱそうか。烈火や美樹也が使ってねぇとこを見るに、これは魔力を媒体に使ってるってこったな?」
「です」
流石は藤堂先生だ。一を知って十を知るというか、色々な経験を元にすぐに察してしまうんだろう。
「成程な……なら、両方を合わせた力なんかもあるのか玲央?」
「あ、はい。でも、それはかなり難易度が高いというか……」
「あるのかよ……」
「「「「「……」」」」」
あっれぇ。皆が凄い呆れ顔で見てくるのは何故なのか。
「えっと、『エンフォース』っていう力があります。『オーラ』と『レインフォース』を合わせた複合技です。けど、火と氷を合わせるみたいな無茶な力なので……失敗すると自身の体を壊す可能性もありますし、あまりお勧めはしませんよ?」
「そうか……それで、お前でも皆に言わなかったわけか。お前ならこいつらを強くする為なら真っ先に教えてそうだからな」
否定は出来ないけれど。
ただ、この力を扱える……使える人はゲーム中にたった一人だけであり、味方ではなく敵なのである。
「とりあえず、だ。お前はこの力は広めるのを禁止だ。魔族に知られちゃ敵わねぇからな。ヴァルハラ内では大丈夫だろうが、生徒達全員に守らせるのは難しいだろう。口が軽い奴は絶対に居るだろうからな」
人の口に戸は立てられぬって言うからね。
仕方ない事だと思う。
今居るメンバーは大丈夫だろうけれど。
「まぁ……お前が遠慮なく言うくらいだ。魔族には扱えないのかもしれねぇがなぁ?」
「……」
藤堂先生がニヤッと微笑みながらこちらを見てくるので、俺は冷や汗をかきながら微笑んで返す事しかできない。
「っし、話はこれで終わりだな? もう時間も時間だ、おめぇら飯食ってくか?」
「良いんスか藤堂センセ!?」
「ちょっと烈火!? す、すみません藤堂先生!」
「おう気にすんな百目鬼。俺から言ってんだからよ! 一年のホープ達にはこれくらいの優遇は当然だ。家には自分で連絡しとけよ?」
「「「「「はい!」」」」」
俺は家に電話して拓に伝えておく。
皆もそれぞれ電話をしている中で、リーシャさんだけ所在なさげにしていたので聞いてみると、リーシャさんは一人暮らしだそうで、連絡する必要はないのだと。
そうだ、リーシャさんは両親を魔族に……。
自分の迂闊さに後悔するが、リーシャさんは気にしていないと言ってくれる。
「あー、玲央。勘違いしてそうだから言っておくが……」
「はい?」
藤堂先生が近づいてきて、話に加わった。
「リーシャは確かに一人暮らしだが……使用人が何十人も居るからな? 西園寺の嬢ちゃん程じゃないが、豪邸に暮らしてんぞ」
「……」
それは予想外でした。
どこの貴族様でしょう。
「藤堂先生に豪邸とか言われたくないんですが。私と違って別荘が何件もありますよね? 寄りもしないくせに。というか藤堂先生がくれた屋敷なんですけど」
「しょうがねぇだろ、国がポンポンくれるんだからよ。受け取らねぇのも体裁がわりぃしよ。これでも固定資産税で金はよーさん納めてるんだぜ?」
「それは知ってますけど……」
「おお……庶民の俺らには想像がつかねぇ話してんな……」
「一軒家でボロアパートよりマシになったでしょ烈火」
「まぁな!」
この中で烈火と美鈴さん、そして俺が一般庶民である。
主人公達と俺を同じくくりにするのは気が引けるけど。
美樹也は紅葉さん程の富豪ではないけれど、お金持ちの部類である。
藤堂先生は褒賞で滅茶苦茶お金持ちだし、リーシャさんも藤堂先生の養子みたいなものなので、いわずもがな。
「ま、要は遠慮しなくて良いってこった! つっても、豪華なモンを注文するわけじゃねぇぞ? そこは教師と生徒って範疇を超えねぇようにしねぇとな」
「ごちになります!」
勿論遠慮なんてしない。
こういう時はありがたく享受するのが奢る側も嬉しい物だと知っているので!
「よし、注文すっからちょっと待ってろ!」
「わしも良いかのぉ誠也」
「ローガン!? いつの間にきやがった!?」
「ローガン師匠!」
「ふぉふぉ、良い子にしておったようじゃのぅ玲央。良ければわしにも先程の技を教えてはくれんかのう?」
「そんな時からいやがったのか。完全遮断の魔法を使ってやがったな?」
「ふぉふぉふぉ!」
あの藤堂先生にすら気付かせないとか、流石すぎる。
というか、ローガン師匠も知らないのか……。
「良いですよね藤堂先生?」
「あー、まぁローガンなら良いだろ。つっても後にしろ後に!」
「殺生じゃのぅ……!」
「あはは……」
こうしてローガン師匠も含めた皆での、わいわいとした食事を楽しむことになった。
こういう毎日が続けば良いな。
とはいえ、もうすぐ学年対抗戦だ。
それに備えないとね。