作品タイトル不明
93話.大幅レベルアップ
『 白銀古竜(エンシェントドラゴン) の住処』と名称づけられている人工ダンジョン。
難易度は驚異のSで最高ランクである。
ハッキリ言って、今の烈火達でもクリア自体は厳しい。
それはダンジョンボスの白銀古竜が滅茶苦茶強いからである。
ただ、このダンジョンの難易度が最高ランクのSに設定されているのは、ボスが白銀古竜だからであり、そこに存在するモンスター達の強さはそこまでではない。
いや強いんだけど、他のSランクダンジョン程ではなく、今の烈火達でも十分倒せるレベル内だと思う。
ここで大事なのは、ダンジョンで得られる経験値はモンスターのレベルだけでなく、ダンジョンの難易度によってもボーナスが入る仕様な事だ。
Sランクダンジョンでありながら、モンスターの実際の強さはAランク相当、もしくはBランクにすら近いかもしれないこのダンジョンは、Sランク故に誰も寄り付かないような穴場なのである。
勿論ある程度の強さが無いとダメな事は最低限だけど、それは烈火達ならクリアしている。
なので、皆にはダンジョンクリアが目的ではなく、モンスターの殲滅を目的と説明して、倒してもらっている。
「「「「グギャァァァァッ!!」」」」
「良いよ烈火! その調子! 美樹也も良い調子だよっ!」
「おうっ!」
「フ……任せろ!」
竜人騎士(ドラゴントゥースウォーリアー) を薙ぎ払う二人はやはり強い。
それに、美鈴さんや紅葉さんも魔法ではなく拳と剣で立ちまわっている。
「どりゃぁぁっ!!」
「グギャッ!?」
「ちょっと浅いかっ……!」
「お任せください! ハァッ!」
「ギャァァァッ!!」
「ありがと紅葉さんっ!」
「どう致し……」
「グオオオオッ!!」
「っ!!」
「『エア・ブレイド』」
「ギャァァァッ!!」
「リーシャ!」
「油断しない紅葉」
「ええ、ありがとうございます」
美鈴さんは『オーラ』を拳に纏って攻撃しているが、やはり攻撃力が低いのか敵を倒しきれていない。
そこを紅葉さんがカバーしている。
その背後からステルスを使ったモンスターが攻撃を仕掛けてきて(ステルスは攻撃動作をすると解除される)不意打ちを受ける所だったけれど、流石はリーシャさん。
それを見切っていて、すぐに倒してしまった。
皆魔力ではなく『オーラ』を使うけれど……もしかして『レインフォース』を知らなかったりするんだろうか?
今まで一度も見たことないんだよね……。
良い機会だし、伝えてみようかな?
烈火や美樹也だと『オーラ』の方が強くなるけれど、美鈴さんや紅葉さんなら『レインフォース』の方が強くなるはずだ。
「美鈴さん、紅葉さん、ちょっと良い? 烈火と美樹也はそのまま敵を蹴散らしておいてね!」
「おお!」
「承知っ!」
うう、二人がカッコいい。ずっと見ていたいけど、今は美鈴さんと紅葉さんだ。
「ごめんね、烈火と美樹也の戦い見てたいのよね?」
「!?」
「私達の為に、すみません玲央さん」
俺の隠しきれない下心がバレてるんでしょうかぁ!?
「な、何のことかな。それより、二人は攻撃する時、『オーラ』をまとわせてるよね?」
「え? そりゃ勿論そうよ。私はかよわい女の子なのよ?」
「ブフッ……!」
「ゴルァ烈火ァッ!! なんで笑ったァっ!!」
「いってぇ!? おま、石を投げるな石を!?」
「前を見ろ阿呆! 囲まれるぞ!」
「っとわりぃ美樹也!」
「あの、美鈴さん……」
「あ! ご、ごめん玲央! 烈火のアホがね!?」
いいぞもっとやれって思ったのは言わないでおこう。
「えっとね、美鈴さんも紅葉さんも、『オーラ』量より魔力量の方が圧倒的に高いよね?」
「そりゃ勿論」
「はい」
うん、ここまでは理解してくれてるな。
「なら、どうして同じ事を魔力で出来るのに、しないの?」
「「「!?」」」
あれ、横で静かに聞いてるリーシャさんまで驚いた、何故?
「いやいやいや、ちょ、ちょっと待って玲央、それって『エンハンス』でしょ?」
「ううん、違うよ? 単純に、魔力で覆うんだ。こんな風に『レインフォース』」
「「「!!」」」
今は"魔眼"を使っていないので、魔力量に余裕がある。
ので何重にもかけて強化する。
「う、うそ……玲央から、凄まじい力を感じる……!?」
「玲央さん、その力はっ……」
「……!!」
「これが『オーラ』の魔力版の力だよ。『レインフォース』って言うんだけど、別に『オーラ』と同じで言わなくても発動できるよ。詠唱省略とかそういう意味じゃなくて、意思で発動できる力だから」
「「「!!」」」
「『オーラ』と特性は全く同じで、違いは魔力で全身の動作をサポートするんだ。全身でも局所でも、魔力のスーツとでも言うのかな。それが覆って動作を補助してくれるから、より強い力を引き出す事が可能になるんだ。勿論本来受ける負荷も魔力が肩代わりしてくれるから、肉体的負荷はあまりかからないよ。慣れてきたらこれを何重にも掛けて、何倍にも効果を上げる事が可能だよ」
「「「……」」」
あれ? 何故か三人とも真剣な顔で黙ってしまった。
「紅葉さん、これって……」
「はい。秘匿中の秘匿、いえ秘術とでも言いましょうか。革命が起きるレベルの」
「やっぱりそうよね……」
「玲央君は本当に……核爆弾をサラッと落とすのは止めて欲しいのだけれど……」
そんなレベルの話しましたっけ!?
『ブレイブファンタジー』では普通に存在していた魔法ですよ!?
「もしこの秘術が魔族に知られれば、戦局は一気に傾くでしょう……こちらの、負けという形で」
「!?」
「玲央君。この秘術だけは安易に広めてはいけないわ。まずは藤堂先生に伝えて、どうするか決めましょう」
「わ、分かったよ」
あるぇ。どうしてそんな大事になるんだろう。
これ、魔族は使えないのに。
ああでも、それを言う事も出来ないし、もどかしぃぃぃぃっ!
「ま、それはそれとして。私達は使わせて貰おうじゃない? ね、紅葉さん、リーシャさん!」
「ふふ、そうですね。『レインフォース』でしたか。玲央さん、もう一度見せて頂いても構いませんか?」
「あ、うん!」
そうして三人とも、『レインフォース』を無事に扱う事が出来るようになった。
それによりモンスターの殲滅速度が凄まじく上がり、皆のレベルが大幅に上がった事を実感する。
身にまとう『オーラ』や魔力量が、肌で感じるほど強力になったからだ。
ゲームのように数値として皆のステータスを見る事は出来ないけれど……あ、俺『鑑定』使えるから、もしかしたら見れるかもしれないけど。
流石に皆に使うような失礼な真似は出来ないし、今度自分に使ってみよう。
「へへっ。強くなったって実感すんな! そんで玲央、このダンジョンのボスはどうすんだ?」
「そうだね……学年対抗戦もあるし、まだクリアはしないでおこう。ここをクリアしちゃうと、先輩達に警戒されちゃうからね」
「フ……成程な。玲央は勝つ気でいるわけだな?」
「当然。皆なら勝てるよ」
「「「「「……」」」」」
「それじゃ、今日はここまでにして、出ようか」
「おう、了解だぜ!」
「ああ」
「ふぅぅ……今日ほど魔力使ったの久しぶり……でもないか。玲央の指導受けたら毎回魔力尽きてる気がするわ……」
「ふふ、そうですね。でも、心地良い疲労感です。強くなっているのを、実感できますから」
「そうね。先の見えない道を進むのではなく、強くなるのが分かっている道を歩める事の、なんて幸運な事かしら」
「ああ! それもこれも、玲央のお陰だな!」
「フ、違いない」
「俺!?」
皆の話をうんうんと聞いていたら、いきなり俺を褒めだす皆に驚きを隠せない。
俺がしている事なんて、たいした事じゃない。
皆なら、俺なんかの助けがなくたって辿り着ける先なんだ。
「行こうぜ玲央! 藤堂センセのとこだよな?」
「あ、うん!」
そう言って肩に手を回してくる烈火。
烈火の明るさに、力強さに、ゲームではどれだけ憧れただろう。
こんな主人公になりたい、そう思った事もある。
だけど俺は、それよりもそんな主人公達を推したくなってしまった。
「これ、どう伝えれば良いかしらね……」
「そのまま直で良いんじゃない? だって情報元玲央だし」
「玲央さんですものね……」
「……それもそうね」
「ははっ! 違いねぇっ!」
「フ……」
俺だからで納得しないで欲しいんですが!?
……俺は大好きな皆と、これからも一緒にこの世界で生きていきたいと、強く思う。