軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

突撃

「あ……アキヤ、その声色は……」

なにか?

「あ、はい。わかりました。なにが必要? お姉ちゃんなんでも用意しちゃう」

必要なのは一つだけだよ。

「ああ、この前言ってた奴だね。じゃあ、そっちで移動するなら目立たないようにした方がいいよね。アキヤだとまだ発生するスキルにランダム性が残ってるから、お姉ちゃんが作るよ。うん、完成」

ありがとう。

「どういたしまして……警察沙汰だけは避けなよ?」

それは大丈夫。

「相手は人間じゃないから」

「そっかぁ」

姉の遠くを見るような声に送られて、僕はアイテムボックスを出る。

「解錠……蛇殻武装」

変身を済ませるとベランダに出る。

追加されたのは二点。

ベルトの背中部分に妖刀・風魔魂の鞘が追加されて、変身後は自動でそこに収まるようになった。

それと左腕の装甲が追加されて、その表面に略唱紋が一つ刻まれている。

他の略唱紋も追加できるように装甲は大きめなので、現在はやや寂しい。

右腕でその装甲部分を撫でると略唱紋が浮かび上がり、それを選んで指で叩けば起動する。

『ウィングアームド・カモン』

無駄にいい声が響き、背中に翼竜から作った翼が展開する。

『カモフラージュモード』

またもいい声が聞こえる。

これ、ヘルメットの中で響いてるんだよね?

外に向かって言ってないよね?

これから姿隠しますって宣言してるようなもんだからね?

ともかく、姿が消えた。

ダウジングアイは着けたまま、真白への線も伸びたままだ。

「行くぞ」

初めての飛行だけれど、怖がる気持ちはなかった。

ただ、まっすぐ飛んでぶっ潰す。

それだけだ。

蜘蛛を突き抜けるぐらいに高く飛んでから線に従って進んでいく。

やがて、線が下に向かって行くようになった。

近づいている証拠だ。

速度を落として線が真下に向く場所を探していると、山の中に寺らしき建物があった。

線は本堂の中に吸い込まれている。

様子を探るためにゆっくりを降下をしていると、途中で降りれなくなった。

目に見えないなにかが侵入を防いでいる。

僕が立っても大丈夫だというのが摩訶不思議だ。

勢いに任せて降下していたらどこか骨折とかしていたかもしれない。

いや、おかげで頭が冷えた。

怒りに任せて突っ込んでいたら、真白を盾に使われるような事態になっていたかもしれない。

なんとか冷静に、誰にも見つからずに、それでいて敵は全て撃破する。

キルゼムオールすれば、それは誰にも見つからなかったのと同じだ。

翼を消して、結界を滑って着地する。

結界はちょうど寺を囲む塀を半径としているようだった。

地面に降りて門の方に向かっていると、あちこちから人が現れてなにかを探しているような動きを見せた。

ナメクジだ。

そうとわかるのは、目が虹色美少年がそうなったように斑点模様で埋まっているからだ。

そういえばナメクジの体表面ってああいう感じだな。

そして、ここでようやく真白を攫ったのがナメクジ……斜九字の連中なのかもしれないと思うようになった。

結界に触れた時点で、察知されたのかもしれない。

初手から失敗しているのかと内心で歯噛みしながら門に向かい、たどり着く。

門の前には僧兵みたいな格好の大男が二人立っていた。

金棒を地面に突くようにして持っていて、威圧感がある。

いまって西暦二千年代だよな?……と、思わず考えてしまった。

時間感覚が不安になりそうだ。

だけど門以外の場所にいたのは普通の格好をした男たちなので、おかしいのはあの僧兵型門番だけだ。

「そこにいるのは誰だ?」

門から少し離れて様子を見ていたら、僧兵の一人が僕の方を見て言った。

カモフラージュモード(透明化) はまだ活きているはずなのに、そう言われた。

なにか違和感みたいなものがあるのか、妖怪か武人のどっちか勘なのか。

「姿、見せんかぁ‼︎」

悩んでいると叫んだ方がこっちにやって来た。

飛ぶように近づき、金棒を振るう。

咄嗟に避けると、地面が爆発した。

どんな馬鹿力⁉︎

飛び散った土砂と一緒になにか見えないものが浴びせかけられて、カモフラージュモードが強制解除された。

「むう、面妖な!」

「時代錯誤の僧兵に言われたくないかな」

「ふはは! 貴様が月丸の言っていた断鬼の者か。たしかに変わっているな」

「月丸?」

「髪がけばけばしいガキだ」

「ああ」

虹色美少年の名前は月丸というのか。

「ということは、真白を攫ったのは斜九字でいいんだ」

「白蛇のことならそういうことだ」

「これは月丸の独断? それともあんたらの総意?」

「ふん。独断でもあり、総意でもある」

「は?」

「始めたのは堪え性のない月丸だが……」

「これは我らの望んだことでもある!」

もう一人の門番僧兵も近くに来て叫ぶ。

気が付けば、他の連中もやってきていて、すっかり包囲されている。

他の連中は、目だけでなく他の部分もナメクジに戻りつつある。

顔はすっかり人間の部分を失い、服から覗く手なんかもナメクジの色に戻っていたりした。

「神ぶる断鬼どもを引きずりおろし、我ら斜九字こそがこの地の大妖であると知らしめる!」

「これはその最初の一手だ」

「子供を攫って脅すのが最初にやることかよ」

僕は吐き捨てた。

「卑怯の一番手になりたいだけならそんな図体はいらないだろ。セコセコと地面を這いずって寄生虫でもばら撒いてろナメクジ」

「ぐっ」

「ぬっ」

ああ。

一度は冷めたと思った頭が、また沸騰してきた。

「ヘビとかナメクジとか、僕にはどうでもいいんだ。だけど、僕の家族に手を出したんだ。覚悟しろ」

「「いい度胸だ!」」

二人の僧兵は同時に動き、金棒を叩きつけてくる。

僕はそれを避けなかった。

武術を学んでいない僕に適切なかわし方なんてできない。

僕にあるのは鍛冶修行で身につけた筋力と、姉ちゃんが作ったこの変身スーツだ。

だから、スーツの防御力を信じて前に進み。

自分の力を信じてぶん殴るのみ。

金棒を受けながら僧兵の一人を殴る。

体格差で顔を打つことはできなかったけれど、正拳突きっぽく放った拳は腹にめり込み、吹っ飛ばした。

僧兵は閉じられていた門扉に当たり、門の枠を激しく揺らした。

「なっ! うおおおおっ‼︎」

無事な方の僧兵が相方の結末に驚き、やたらめったら金棒で打ちまくってくる。

それを全部受け止める。

「おのれおのれおのれっ! うおおおおおおおっ‼︎」

動じない僕に動揺した僧兵が金棒を大上段から振り下ろした。

わかりやすいその一撃を受け止める。

「ただの鉄の塊」

金棒に指を食い込ませる。

「こっちは何万回打ったと思ってるんだ?」

鉄よりも強靭な金属だって叩いてきたんだぞ?

指を食い込ませて引っ張り、金棒を奪い取る。

「修行が足りない!」

そしてフルスイングで僧兵を打った。

再び吹っ飛んだ僧兵が門を揺らす。

まだ壊れない。

僕は周りに残っているナメクジ男どもを見た。

「来いよ。ヘビより強いんだろ?」

「う、うお」

「うおおおおおおっ!」

「やってやらぁぁぁぁっ!」

挑発するとナメクジ男たちが向かってきた。

その全部を金棒でぶん殴っていく。

全部を門に向かって打ちたいんだけど、そんなにうまくはいかずにそこら中に飛んでいく。

結局、全部が門から外れた。

襲ってくるナメクジ男がいなくなったので、持っていた金棒を門に向かって全力で投げつけた。

今度はうまくいった。

門にかかっていたかんぬきが折れたようで、門が勢いよく開く。

同時に寺にかかっていた結界も壊れたみたいだ。

二人の僧兵はすっかりナメクジの姿に戻り、僧衣の中でぐでりと伸びている。

生きているかどうかわからないそれを無視して中に入っていく。

「よおうぅ」

正面にある本堂から虹色美少年……月丸が出てきた。

「早いご到着にびっくりだぁ。しかも、外の連中を全部ぶっ倒すとはなぁ?」

月丸がねっとりと笑う。

「真白はどうした?」

「心配すんなよぅ。無事だぁ」

ただし、と付ける。

「ナメクジの妖力が満ちた場所でどこまで無事でいられるかは知らないなぁ」

「そうか。それなら早く連れ帰ろう」

「できるかぁ?」

「塩撒かれて泡吹くような生き物が、人間様相手になに言ってるんだ?」

「……」

「駆除されるのが嫌だからこんな山に住んでるんだろう? だったら大人しくここでネトネトしていたらよかったんだ」

「殺すぅ!」

どいつもこいつも煽り耐性がないな。

額に血管を浮かべた月丸が襲いかかってきた。