軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

買い物と唐突な斜九字

朝食を済ませてから真白の住環境を整えるためにペットショップに行く。

真白はどうするのかと聞いてみると、付いて来ると言う。

ただし、蛇のまま。

ジャケットの内ポケット(隠しじゃない方)に入ってだそうだ。

まぁ、自分の住む場所について意見を言いたいよね。

というわけで駅から電車で一時間ぐらいかけてイ●ンモールに行き、そこにあるペットショップで必要なものを買っていく。

飼育容器に床材、水入れ、シェルター、保温器具に温度計……。

後は餌……は、アイテムボックスの肉でいいみたいだからあれでいいか。

内ポケットにいる真白はじっとしている。

一回覗いたけど反応がなかったので、寝てるっぽい。

さっさと用件を済ませたから大荷物になったな。

どうしようかな?

本屋とか見て周りたいけど、さすがに邪魔だな。

帰りに乗るつもりの電車は……まだ時間はあるな。

一回、ロッカーに預けるか。

ああ、それと財布の中がちょっと心許ないからATMで下ろさないと。

あれこれと動き回ってから本屋に向かう。

服とか自分でクラフトできるようになったけど、逆にデザインとかが変にならないように気を付けないといけないからファッション誌が必要になってしまった。

後は鍛冶で色々作るから武器や防具なんかの資料も欲しいな。

後は……。

「マンガでも描く人かなぁ?」

「?」

いきなり話しかけられてそちらを見ると、なんか派手な格好をした美少年がいた。

「もしかして、僕に話しかけた?」

「うん、そうぅ。ごめんねぇ、持ってるものを見たらぁなんかそんな資料かなって感じだったからぁ」

「ああ……」

なるほど、そう見えないこともないか。

「違うよ。ただ、こういうのを見るのが好きなだけ」

「ふうん。そうなんだぁ」

虹みたいに髪色を染めた美少年は、なんだかねっとりとした空気をさせて僕に接近してくる。

なんなの?

「ねぇ」

と、急に小声になった。

「その胸に隠してる蛇、くれないぃ?」

「っ⁉︎」

なに?

「なんのこと?」

「ははは、隠してるつもりぃ? 蛇に飲まれた愚かな人間の分際でぇ、ボクの目を誤魔化せるとでもぉ?」

なんなのそのノリ?

真白のことを指摘されてびっくりしたけど、もしかしたら中の様子を確認した時に見られたのかもしれない。

「悪いけど、中二みたいなノリに付き合う気はないよ」

なんでこんな変なのに絡まれてるんだろう?

柚木さんに絡まれた時も謎だったけど。

なんか僕ってそんな変な空気でも出してるのか?

「じゃあね。他の人を探して」

そう言ってさっさとレジに言って本屋を去ることにした。

……んだけど。

「そんなことぉ、させるはずがないよねぇ」

キィ……ンって音がしたかと思うと、周りが変わった。

色がなくなった。

全部が灰色に染まって、そして、人がいなくなった。

「 斜九字(しゃくじ) が蛇を見つけてぇ、逃すはずがないよねぇ?」

そう言った。

「斜九字なんて知らないけど?」

手にしていた本を近くの棚に置き、虹色美少年に振り返る。

こちらを見る虹色美少年も変なことになっていた。

目が変化している。

黒目と白目がなくなって、代わりに灰色と複数の黒の点みたいになっている。

なんか見たことあるような柄だけど……なんだっけ?

とにかく、気持ち悪いのはたしかだ。

ああ、これってバイオレンスな展開なのかな?

ジャケットの中に妖刀・風魔魂はあるし、ていうか今日着ているのもタチキに潜入した時の格好のまんまだから……。

「君が知ってるかどうかなんてぇ、関係ないんだよねぇ」

「ああそう」

だから……逃げる。

全力で逃げて、虹色美少年の視界から完全に外れたところで気配を消して……あいつが諦めるのを待つ。

うん、そうしよう。

怒りに任せて手とか腕とか握り潰した厳里兄妹の時みたいなことは、できればしたくないんだよね。

あの時は立花さんが後片付けしてくれたけど、今回もそうなるとは限らないからね。

この年で犯罪者になるのはごめんだよ。

正当防衛がちゃんと成立するような状況か、あるいは完全犯罪が可能な状況じゃない限り、バイオレンスは避けるべきだよね。

うん、それがいい。

平和が一番。

姉の遺体を探しにいく時にはなんかそんなことになりそうな気もするけど、だからってどこでもかしこでもバイオレンス常時受付OKなマインドになったつもりはないんだ。

今日は逃げる。

それもまたよし。

「逃げれるとぉ思ってたのぉ?」

有名な黒ネズミファミリーのグッズが並ぶ店で一息吐いていたんだけど、そこでいきなり虹色美少年のねっとりした声が響いた。

「この空間にいる限りぃ、僕から逃げられるとかぁ、思わない方がいいよねぇ」

ニチャアな笑みを浮かべて、虹色美少年は言った。

「ここにいる限りぃ、逃げられないしぃ、誰もたすけに来ないぃ。君はただぁ、ナメクジに絡まれたヘビでしかないんだよぅ?」

「変なたとえを使うね」

そこはヘビに睨まれたカエルじゃないのかな?

「蛇を前にしてぇ、そんなの使うわけないじゃんぅ?」

「ああ、まぁそうか」

でも、そうか。

逃げられないし、誰も来ないのか。

「じゃあ」

ここなら完全犯罪ができるわけだ。

「あれぇ?」

「君が逃げたくなるぐらいに痛めつけてあげるよ」

妖刀・風魔魂を意識し、まずは【忍者】を起こした。