作品タイトル不明
154話
翌日からは移動速度重視で透明化を使用し、登録済みのモンスターはなるべくスルーしていく。
なるべく町を通るように、北極海側にある港町を探索しながら進んでいった。
こういう時にローカルな地図は便利だ。行ったことのない町でも場所が確認できる。
マップスキルは便利なのだが、行ったことのない町は地図上に表示されないからなぁ。
「ここもダメか……」
移動を開始してから一週間は経過している。現在、北極海に面した湾の近くにある町の一つを探索し終えたところなのだが、まさかここまで人に出会わないとは思わなかった。
ロシアに上陸してから三十箇所以上の町を巡って出会ったのがアレクセイさんたちだけとは、いくら厳しい状況とはいえ異常なように感じた。
確かに寒さも厳しいし、強力なモンスターもいるうえ、ここら辺に出現するモンスターに有効な火炎系魔法を落とすモンスターもいない。食料の問題もあるだろう。
それでもキラーラビットやアイスフォックスなんかの、比較的弱く食料を落とすモンスターは存在するし、多少は生き残っている人がいても良いとは思うんだけど……。
しかし居ないものは仕方がない。流石に何かおかしいと思いながらも、地道に見てまわるしかないかと、湾を挟んだ向こう側にある町へ向けて飛び立った。
結局次の町にも生存者はおらず、夜になるので今日はこの町で一泊していくことにした。
食事を終え、最近日課になっているオーロラ観測をしようと外に出る。
「出てないなぁ、やっぱりそう簡単には見えないんですかね」
「うーん、ちょっと曇ってますかね? オーロラ、見てみたいです……」
お松さんも残念そうにしている。場所と時期的には見えるっぽいんだけど、単純に運が悪いのかもしれない。
「雲の上に出たら見えたりしませんかね? ダメ元で行ってみましょう」
「夜のお散歩ですね!」
モンスターに絡まれないようにしっかりと透明化をかけ、ゼロに乗って雲をぬけるとそこには満天の星空が広がっていた。
「うわぁー、綺麗です!」
「オーロラは出てないけど、これはこれで綺麗ですね」
そしてこれまた最近やっている撮影を行うことにした。
何故かというとお松さんがねこさんたちに外の世界の風景、自分たちが旅した風景を見せたいとリクエストしてきたからだ。
普段なら戦闘ばかりでそんな暇もないが、今は移動速度重視で登録済みのモンスターはスルーしているので自分が撮影している。お松さんはサイズ的に撮影が難しいのだ。
上手く撮れてるかな? ゆっくりとカメラを回し星空を撮影していく。こういうのは素人なので、どうなっているかわからない。肉眼だと綺麗に星空が見えているのだけど……
(ん? なんか今凄い勢いで左から右へ何かが横切っていったような……)
マップスキルで確認する。自分から見て左から右へ行ったから、方角的には東から西へ向かっていることになる。見間違いかもしれないが一応確認しよう。
「何か見えました。すみませんお松さん、追いかけるのでちょっと収納に避難しておいてください」
「は、はい!」
ビデオカメラとお松さんを収納へしまい、飛行物体を追いかけることにした。もしかしたら生き残っている軍隊の戦闘機かもしれない。
「ゼロ、頼んだよ」
任せておけと答えると、ゼロは一瞬で加速して飛行物体を追いかけ始めた。
飛ぶことだけに集中したゼロの飛行速度はかなりのもので、十分ほど空を飛ぶと飛行物体に追いつくことに成功した。肉眼ではまだはっきりと見えないが生命感知に反応がある。前を飛ぶ飛行物体はどうやらモンスターだったようだ。
戦闘機ではなかったようだが、空飛ぶモンスターは未登録のようなのでこれはこれで運が良い。ここまでで遭遇していないということはもしかしたらレアモンスターかもしれない。なんとしても追いついて倒さなければ。
肉眼でも確認できる距離まで近づくと、ようやくモンスターの姿が露わになった。
「サンタクロース? もう三月なんだけど、季節外れだな……」
例の赤い衣装を身にまとい、トナカイのひくソリが光の軌跡を残しながら空を西へと飛んでいる。手綱を握るサンタクロースの後ろには、白い大きな袋が乗っている。
きっとプレゼントが入っているのだろう。良いアイテムをドロップしそうだ。
ゼロにサンタクロースの前に出るように頼む。さらに速度を上げたゼロがサンタクロースの前に踊り出ると同時に、業火球を放った。
攻撃の直前、透明化が解けたこちらに反応したサンタクロースが手綱を振るうと、トナカイが跳ねるように飛び業火球をかわしそのままこちらへ向かってくる。
一応業火球に追尾はかけていたのだが、サンタクロースの飛行速度に追いつけずにいる。
だがかわされる可能性も考え、第ニ波は既に用意してある。魔力を込めた黒龍剣を振るうと、黒い光線がサンタクロースめがけほとばしった。
しかしその光線もトナカイは宙を蹴りヒラリとかわす。
だが、その着地点には既にシュナイダーがスタンバイしている。透明化していたシュナイダーはサンタクロースの顔面にピタリと張り付くと、全力の放雷を放った。