軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

153話

ロシアの空の旅は過酷だ。何が辛いかというと、やはりフロストドラゴンの存在が大きい。

それなりのエンカウント率に対してそれなりの耐久をもち、必ず二体以上現れるうえそれなりに強い。

安全に倒そうと思ったら高火力技を使わざるおえず、魔力を結構消費する。数十キロ進むごとに毎回中ボス戦をしているような感じだ。

透明化を使って進む方法もあるが、空中でのレアポップがあるかもしれないと思うと中々ふみきれずにいた。

結局レベル上げにもなるし良いかと出会うモンスターを全て倒して旅を続け、ロシアの最東端ベーリング海峡までやってきてしまった。

見渡す限り氷ついた海をゼロの背から眺める。異変が起きなければこんな光景を肉眼で見ることはなかっただろう。

お松さんも自分の頭の上に登って自然が作り出す絶景を眺め、すごいすごいと大はしゃぎしていた。

「お兄さん! すごいですよ! この凍った海を渡れば別の国に行けるんですよね?」

「そうですね、ここからだと大体百キロくらいでアメリカ大陸に着くみたいですよ」

「はぁー、すごいなぁ。綺麗だなぁ」

絶景を目にしたお松さんは語彙が極端に減り、すごいなぁ綺麗だなぁと繰り返している。

これはオーロラなんて見ようものなら言葉を失いそうだな。北極圏も近いしそのうちに見ることもあるだろうか? オーロラが綺麗に見えるのには色々と条件があるらしいから、そう簡単に見ることはできないかもしれないが、是非見てみたいものだ。

「お兄さん! それでどうするんですか? 歩いて渡りますか!?」

「いや、まだアメリカには行きませんよ?」

「えー! すぐそこまで来てるのに! 歩いて行けるんですよ!?」

そこは自分も少し迷ったのだが、まだまだロシアの探索が残っている。まだアレクセイさんに聞いた氷でできたゴーレムなんかも出会ってないし、まだ未登録のモンスターがいるはずだ。

もちろんアメリカ大陸にもまだ見ぬモンスターはいるはずだが、それは後でのお楽しみだ。

「というわけでアメリカ大陸はまた今度です」

「わかりました……しばらく雪の世界を楽しみます」

聞き分けの良いお松さんは、すぐにこれから進むロシア西部の街や観光地についてロバさんに聞くつもりらしく、追憶の広間へ連れていってほしいとねだってきた。

まぁ移動中は危ないしこっちにも否やはない。お松さんを送るついでにチャボさんの食堂で昼食を済ませ外へ戻る。

「さてと、ここら辺のモンスターの調査といきますかね」

夜になるまで辺りのモンスターを狩り続けてみるも、特に新しいモンスターには出会えない。

残念ながら死の谷を出て以来、遭遇した新モンスターはフロストドラゴンだけだ。

ロシアではまだアレクセイさんたち以外の生き残りには出会っておらず、情報提供を求めることもできない。

日本でも思ったことだが、この広大なロシアを一人で探索しきるのには下手をしたら年単位でかかるかもしれない。レアポップや条件ポップを考慮すると、もしかしたらそれ以上かかる可能性だってあった。

暗くなってからもしばらくモンスターを狩ってみるが、昼のポップと変わらないことを確認しため息が出る。

せっかくロシアの端っこまで来たのにあまり成果がなかった。しょんぼりとミニログハウスを取りだして中に入り、雪で濡れた身体を乾かして一息つく。

「ちょっと作戦変更が必要だな……」

当初は日本と同じようにモンスターを狩りつつ、各地の避難所へ立ち寄り物資との交換で情報提供を求めるつもりでいた。

しかし実際にロシアを旅してみると、全然人に出会わなかった。厳冬のロシアに軍でさえ手こずるモンスターのことを思えば無理もないが、流石に生き残りがゼロということもないと思いたい。

まずはロシアの首都を目指しつつ、道中生き残りのコミュニティやワープゲートがあればラッキーって感じかな。

さっきアメリカを諦めたお松さんには悪いが、のんびりロシア観光もちょっと諦めてもらわなければならないかもしれない。

生き延びた人たちを捜すために街に立ち寄りはするけど。

追憶の広間へ行くと、女性陣がロシアの観光名所をプリントアウトした物を囲みソファーでワイワイやっていた。きっとロバさんがプリントした写真を見ながら盛り上がっていたのだろう。

(うっ、非常に言いづらい……)

すでにゼロとシュナイダーには今後の方針を話してある。明日からは透明化をかけて未登録のモンスター以外はスルーしていくつもりだ。

どうやって声をかけようか迷っていると、こちらに気がついたお松さんから声をかけてきた。

「あ! お兄さん、お帰りなさい。あのですねぇ……」

皆で調べたんですよと楽しげに説明してくるお松さんに、申し訳なく思いながらも自分の考えを話す。

静かに話を聞いていたお松さんはにこりと微笑み、わかりましたと返してきた。

「すみません、楽しみにしていたみたいなのに……」

「いえ、良いんです。確かに色んな景色を見るのも楽しみですけど、ねこちゃんたちとお話しするのも楽しいし、チャボさんのご飯は美味しいしで、私これでもお兄さんにすごくすごく感謝しているんです! お城で泣いていた私を見つけてくれてありがとうございます!」

謝ったらなんだか感謝されてしまった。お松さんを見つけたのは本当にたまたまなのに。

「あらあら、二人の出会いは運命だったのねぇ」

「そうですよ、チャボさん。あの時のカステラの味は忘れられません!」

そういえばカステラを出したな。最初は幽霊のお松さんにビビったけど、今では頼りになる仲間だ。主に子供たちの面倒見的な意味で。

「というわけで、お兄さんは気にせずゴーイングマイウェイですよ。私みたいな迷える子羊がロシアにもきっといるはずです!」

快くお松さんの賛成も得られたので、明日からは移動速度を上げて移動を開始するか。