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作品タイトル不明

95.大教皇リズレット・アルカノン

95.大教皇リズレット・アルカノン

背後には地獄の蓋を300年間、閉じ続ける大聖女にして教祖ブリギッテが大海の上空で魔法陣の中心にて祈りを捧げ続けている。

そんな彼女を背景に、大教皇リズレット・アルカノンは涼しい顔で微笑み、俺を見ていた。

まるで祭壇に立つ教主のように。

そして、

「 大天使のうたた寝(ホーリー・インフェルノ) 」

静かにそう唱えた。

―その瞬間、

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

周囲一体にまるで太陽そのものが降り注いだかのような熱量が広がる。

街の中で使えば数百メートルにわたって、クレーターが出来るような衝撃だ。

しかし、

「スキル≪神聖魔法無効化≫」

すぐにスキルを使用して、その攻撃を無効化した。

やれやれ。

「お前は本当に人間か……?」

とっさに神聖魔法の無効化スキルを使用した俺は、凄まじい風量に鬱陶しそうに髪を払うだけだ。

それにしても、

「周囲の風景も一切変形していないな」

「ここはそういう神のプログラムにより設計された、異界への門ですから。そう簡単に壊れたりはしません」

それよりも、とリズレットはつづけた。

「あなたこそ、どうなのかしら? まさか神聖魔法の最高位魔法を無傷で切り抜けるなんて」

「ならば、もっと驚いた顔をしてはどうだ? その涼しい顔をやめてな」

「確かにそうですわね。これくらいであなたが倒せる訳がないことを私はどこかで理解している」

彼女は微笑むと、

「次はあなたから仕掛けてきてもよろしくってよ?」

「ふ、ではお言葉に甘えるとしよう」

俺自身は基本的に攻撃手段を持たない。

だから、一人だと分が悪いのだが……。

「まぁ、人類の頂点くらいなら、それなりにやれるだろうさ」

そう呟きながら、スキルを構成する。

「スキル≪超加速≫」

「スキル≪筋力強化≫」

「スキル≪行動力10倍≫」

「スキル≪自己再生≫」

「スキル≪杖攻撃強化(大)≫」

「5重スキルですか。それで何をするつもりでしょうか?」

祭壇上の教主は俺を値踏みするように言う。

「案外、こういう馬鹿で単純な攻撃が効果的なものなのさ」

「!? まさか!?」

がん!!

ヒュン!

彼女の目視出来ない速度で、彼女の頬の横を何かが通り過ぎた。

「 石礫(いしつぶて) !? まさかそんな下等な方法で」

「普通はな。だが、ここの石はお前の最高位神聖魔法でも消滅しない、世界で最も固い鉱石なのだろう? なら、それを世界で最も優れた俺がこの杖で打ち出せば、世界で最も威力のある弾丸に変化する。そうは思わんか?」

「!? くっ! 大結界(エンジェル・カーテン) !」

彼女はとっさに大結界で防御態勢をとった。

アリシアの作る大結界と酷似するそれは、ありとあらゆる攻撃を防ぐ鉄壁の神聖魔法の一つだ。

「防いでみろ! リズレット!」

「撃ってきなさいアリアケ君! ああ、楽しいですわ! まさかとっさにそんな戦術を思いつくなんて! さすが大賢者!」

「行くぞ! はあ!!」

バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!

ビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュン!

ガギイイイイイイイイイイイインンンンンンンン!!!!!!!!!

五重スキルによって、俺が打ち出したただの石は、人類史上で最も大きな威力と速度で、大教皇リズレット・アルカノンを襲う。

その数は数千!

俺の超加速によって、次々と打ち出される弾丸に、リズレットの大結界は削られて行く。

しかし、底なしの魔力でその結界をどんどんと修復していく。

その上、

「 堕天使の浄化弓(アルス・マグナ) !」

大結界などという神聖魔法を使いながら、別の神聖魔法を行使する。

無数の光の槍が 追尾機能(ホーミング) をもって俺を襲う。

「スキル≪ 武器解析(ラブラ) ≫」

「スキル≪ 武器模倣(フェイク) ≫……。来い! 偽ブリューナク!」

俺は片手に持った杖で相変わらず、弾丸をリズレットへと打ち出し続けながら、俺を自動追尾してくる光の槍をブリューナクの持つ完全防御の特性を駆使して防ぎ切る。

両者ともに攻防一体だ。

やれやれ……。

俺は呆れつつ、

「数万発を打ち出したが、よく防ぎきるものだ」

「あなたがそれを言いますか? これでは何日たっても決着がつきません」

「人の頂点の戦いだからな。それで、まだ続けるのか? 俺は構わないが……」

石などそこらへんに無数にある。攻撃を続けることは可能だ。

しかし、俺の言葉に彼女はふっと笑うと、

「千日手ですわね」

「そうだな、これでは決着がつかんな」

俺はそう言って応じる。しかし、彼女は苦笑すると。

「ああ、もう! 私のは単なる強がりですよ! やれやれ、さすが大賢者です。ちょっと勝てるイメージがありません。奥の手が何個あるか知れたものではないし、ちょっと怖いくらいですわ! あなたはなんというか……。実に賢者らしい戦いをされる。国教の大教皇ごときが、人類の守護者であるあなたに勝てるわけがなかったですわね~」

彼女はそう言って、攻撃の手を止めた。

同時に俺も攻撃の手を止める。

「やれやれ。何かを試されていたのか?」

「試す?」

彼女は目をまん丸にすると、

「それは誤解ですよ、アリアケ君。ここにあなたを招いたのは真実を告げるため。百聞は一見にしかずと言うでしょう?」

「これを見せることがか?」

「そうです。そしてあなたは勘違いされていましたが、見て頂けましたか。私だって 大結界(・・・) を……」

彼女が何かを言いかけた、その時である。

『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!』

「きゃっ!?」

「うおっと」

地下にまで届く振動が走った。

倒れそうになったリズレットを、いつものクセで思わず抱きとめてしまう。

「そ、そんなダメですよ! アリアケ君! 未亡人とはいえ、私には娘もいますし!」

「何を言ってるんだ……」

いつもの調子のリズレットに戻っていて、一気に脱力する。

あの祭壇上の大教主というイメージはすでにない。

「話は後だ。建物が揺れるほどの衝撃……。だが、遠いな」

「行きましょう!」

俺たちは急いで踵をかえす。色々と確かめたいことはあるが優先順位を間違うわけには行かない。

祈りを捧げ続ける始祖聖女ブリギッテを置いて、俺たちは急いで 垂直移動床(リフト) へと乗り込む。

あの衝撃音……。

あれは、人智を超えた何者かに、この聖都が『襲撃』を受けた音に違いないのだから。