作品タイトル不明
96.フォルトゥナ・レギオン VS ブリギッテ教徒・レギオン
96.フォルトゥナ・レギオン VS ブリギッテ教徒・レギオン
「何があった!」
俺と大教皇リズレットは、聖都を囲む外壁の外へと駆けつけた。
アリシアとフェンリルとも合流している。時間がないので、教会の地下で何を見たのかはまだ話していないが。
俺たちが駆けつけたように、他にもたくさんの聖都の市民たちが集まっていた。
そして、彼らの前には、
「御無沙汰をしております。アリアケ様、そして皆さま」
一人の白い少女が、本当になんの害意もないとばかりに照れたように微笑むと、静かに腰を折った。
だが、
「ありゃ、なんだ……。俺たちは何を見てるんだ」
「世界の終わりか?」
「あんな……。無数のゲシュペント・ドラゴンが空に……」
彼女のお辞儀するその後ろには、空を覆いつくすドラゴンたちの群れがあった。
数百に及ぶゲシュペント・ドラゴンたちの レギオン(軍団) は、人にとって絶望の象徴に他ならない。
しかも、
「先頭にいるやつらは、『乗り手を得た』ドラゴンたちか」
数匹のドラゴンの背中には人の姿が見える。
一人は立派な槍を持ち、大層なひげを蓄えた壮年の男。
後は……あれはビビアたちか。
俺がコレットの乗り手となり、彼女が世界で最も優れた竜になったように、ドラゴンは乗り手を得ることで真の力を得る。
俺ほどの男でなくても、ただでさえ強力なドラゴンたちの力は、さらに大きく跳ね上がっているだろう。
少なくとも、この一つの国……。いや。
「人間の世界を蹂躙できるほどの戦力だな」
「さすがアリアケ様はお察しがいい。そうです。乗り手を得て、本来の力を全て発揮することが出来る状態のゲシュペント・ドラゴンたちの レギオン(軍団) ですから」
「なるほど……。ん、あれは?」
先頭にいるドラゴンは見覚えがあった。
「フレッド……だったか」
シャーロット王の重鎮だったはずだ。
しかし奴は今、悪魔フォルトゥナの側にいる。
……ドラゴンの寿命は長大だ。
ならば、この侵攻計画は一体何百年前から始まっていたのだろうか?
悪魔にいつから(・・・・・・・) 操られていた(・・・・・・) のだろうか?(・・・・・)
やれやれ。
「この光景は、少しばかり一般人たちの心臓には悪いかもしれんな」
「ねえ、アリアケ君。あんなのを見て平気な人って、あなた以外いるのかしら?」
隣の大教皇が呆れ顔をした。
しかし、俺は肩をすくめる。
「まぁ、少なくとも、5人はいるんじゃないか?」
「へ?」
俺はあっさりとした回答をした。
その時、
「やっぱりここにいたのじゃ! おお、なんじゃかいっぱい ドラゴン(同胞ども) がおるのじゃ! 何かの祭りかの!! かかか!」
「先生、凄い数のドラゴンですね。でも任せてください、この聖槍が何者も先生のことを傷つけさせたりしませんから!」
「勇者パーティーでは体験できなかった、まっとうな戦いがやっと出来るんですね! 私はそれだけで満足です」
教会本部で合流するはずだった、コレット、ラッカライ、ローレライの3人が、衝撃音を聞きつけて合流する。
「アリアケさんといると退屈しませんねえ。まぁ、死んでも死なせませんから、大船にのったつもりでいてくださいな。ブリギッテ教序列3位、アリシア・ルンデベルク参ります」
「我はドラゴンどもに恨みはないのだがのう。ま、相手が悪かったと思うがよいぞえ」
俺の率いる賢者パーティーが、ゲシュペント・ドラゴンたちの 軍団(レギオン) を前に立ちはだかる。
俺をいれてたった6人。
だが、世界で最も強力なパーティーだ。
負けるつもりは一切なかった。
しかし、
「むふ。むふふ。むふふふふぅ、あーっはっはっはっはっはっはぁ!!」
なぜか突如、隣の大教皇が笑い始めた。
「お母様、とうとう本当にダメになってしまったんですか?」
ローレライが憐れみにまみれた口調で言った。
「違うわよ……っていうか、ローレライちゃん、とうとうって何? 本当にって何!?」
彼女はひとしきり 喚(わめ) き 散(ち) らしてから、
「まぁ、いいわ! それよりも、なめてもらっては困るわね、アリアケ君! この聖都を! このブリギッテ教徒を! このっ……」
大教皇は後ろを向いて、市民たち……ブリギッテ教徒たちに呼びかける。
「愛すべき 脳筋(ブリギティアン) たちを!!!!」
彼女の掛け声とともに、
「……勝てば……負けない!」
誰かがポツリとつぶやいた。すると、その言葉を受けて、他の信徒も、
「勝てば、負けない! 負けなければ負けない! すなわち負けなければ絶対に勝てる!」
「日ごろの ダンベル(友) を思い出せ! ダンベル(友) は決して裏切らない!」
「問題の99%は筋肉が解決できる! 解決できない問題の1%はモテすぎることだけ!」
「プロテイン・ポーションさえあれば何日でも戦える!」
「そうだ! 俺たちは ブリギティアン(ブリギッテ教徒) ! ゲシュペント・ドラゴンの100匹ごとき筋肉の前で恐れるに足りない!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
大教皇リズレット・アルカノンの掛け声に、集まっていた信者たちは次々に 聖句(バイブル) を唱え、恐怖を克服していく。
一気にブリギッテ教徒たちの士気と魔力が増大していった。
「アリシア、お前の宗教は変わっているなぁ……」
「私はこの人たちとは違いますから!? ここにいる人たち全員、狂信者ですから!?」
普通の信者たちは全員隠れてるだけですからね!?
と必死に弁明した。
本当だろうか……。
まぁ、それはともかく。
「さっきは失礼したな、リズレット。それにブリギッテ教徒たちよ」
俺は静かにつぶやく。
その声はなぜか、誰しもの耳に届いた。
皆が俺の口にした詫びの言葉を聞いた。
「さっきは、こちらの戦力はたった6人だと言ったが……」
俺は首を振り、
「それは俺の間違いだったようだな」
ふっ、と微笑む。
そして、杖を高く掲げた。
まるで信徒を導く教主のごとく。
「大教皇リズレット・アルカノンが率いるブリギッテ教徒、 狂信者(マッチョ) 100名! そして俺たち賢者パーティー6名! あわせて106名! これほど頼もしい仲間がいれば、ゲシュペント・ドラゴンの千や二千、倒すことなど造作もない!」
その言葉に、
「アリアケ様!」「大賢者様!」「大聖女様の婚約者様!」
歓声が上がった。
「えーと、本当に彼らも加えて戦うんですか、アリアケさん……?」
アリシアはマッチョたちが苦手なのか、若干引き気味である。
しかし、
「ふっ、無論だとも。日頃鍛えぬいた肉体を、今こそこの聖都を守るために。世界を守るために使う時だ。……何よりも」
俺はスキルを行使する。
「≪筋力増強(超)≫。さあ、始めよう『渇愛の悪魔フォルトゥナ』よ」
俺は白き少女、フォルトゥナに向かって言う。
フォルトゥナは初めて笑みを消した。
「俺の支援を受けたブリギッテ教徒たちは、世界最強の存在だと知るといい」
こうして、フォルトゥナ・レギオン VS ブリギッテ教徒・レギオンの戦いは幕を開けたのである。
後に聖都防衛戦と呼ばれる戦いである。