軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

258.更なる深層~宇宙規模の深淵なる計画を看破する~

258.更なる深層~宇宙規模の深淵なる計画を看破する~

「ここは……どこだ?」

それに。

「俺は何をしていたんだったかな?」

気づけばゴツゴツとした岩がどこまでも続く、茫漠とした土地に俺はいた。

気持ちの悪いねっとりとした風が吹き、どこか生臭い。

何か大事なことを忘れている。

だが、それを思い出そうとしても、記憶がないかのように、何も思い出すことができない。

「アリアケよ、よくぞ夢の庭園へ参った。ここに招待したのはそなたが初めてであるぞ?」

いつの間にか、隣には美しい紅の髪の少女がいた。

やはり真っ赤な美しいドレスを着ていて、よく似合っている。だが、ワインレッドというより、どこか血のような赤だと思った。

と、同時に、俺の名前を思い出す。アリアケ・ミハマ。それ以外は思い出せない。いや、

「ナイア?」

「そうである。ふふふ、どうだ、ここは? ここには我とそなたしかいない。そして、我はそなたのものだ。永遠にそなたに奉仕しようぞ?」

「なに?」

彼女の言っている意味が分からなかった。彼女は少女だというのに、嫣然とした表情を浮かべて言う。

「ふふふ、幸いながら我もそなたに惚れた。誘惑するだけでなく真実の愛。嘘偽りなく、幾年、幾億、幾星霜もそなたを愛し続けよう。ここは夢の庭園。我が箱庭。そなたは我の与える快楽に耽ると良い」

彼女の声は人心を 蕩(とろ) かせる効果があるように思えた。

「人類を何度も救済し、疲れたであろう? もう十分そなたは世界に貢献した。まさに英雄であり救世主であった。だが、そなたも一人の人間。癒しが欲しいであろう? 休息と安寧を求めたくもなろう。その際に」

彼女は俺に抱き着きながら言う。

「我を好きにしてよいぞ? 我もそなたを好きになった。初恋である。ここで我と愛しき時を過したら良い。人類のことは悪いようにはせぬ。我が庇護し、きっと生きながらえさせよう。だから、そなたは我と……」

そう言って、彼女は俺を前に口づけようと迫って来る。

……が、

「すまんな、ナイア」

「へ?」

俺は彼女の顔を押し戻しながら言う。それに驚いた表情を彼女は見せた。

「何となくだが、俺には他に決まった相手がいるような気がする。それに、その相手が俺の初恋のような気がする。だから、お前とは付き合えん。すまんな」

「そなた記憶があるのか? ここでは記憶は曖昧になるはずであるぞ?」

「いや、記憶はない。だがそんなものはなくても、行動原理は変わらないだろう。お前が何者かも思い出せんが、記憶があっても同じことを言うはずだ」

なぜなら、

「それが人の誇りというものだからな」

その瞬間。

ピシリ!!!!

と、夢の庭園と呼ばれた空間にヒビが入ったような音が鳴り響く。

「ナイア」

俺は微笑みながら告げる。

空間が崩壊しかかっているからか、記憶も戻りつつある。

「お前は人類を舐め過ぎだ」

彼女の頭を撫でながら。

「人類はお前ごときには服従しないし、未来を委ねたりもしない」

「そなたがいるからか?」

彼女の言葉は睦言のように耳朶に響く。

だが、俺はゆったりと首を横に振り、

「俺はいつも手助けをするだけさ。俺は大したことはしていない。みんなの……人類の力があるからたまたま世界を救い続けられているだけだ。それからな、ナイア。俺は秘密を抱えた相手と親密になるつもりはない」

「何のことだ?」

とぼける様子を見せる。だが、俺は構わずに告げる。

「なぜ何億年も人を飼おうとする? 神であるお前であっても、そんなことは大仕事のはずだ」

「……」

ナイアは沈黙する。

だが、賢者たる俺にとって、それは答えと同じなのだ。

「お前の目算から言えば、ある時点で、人類はお前を超えるほどの力を得るだろうな。お前に服従しながらも、お前を 超える存在(・・・・・) をも殺せるほどの力を」

「そなたは本当に人間か?」

「ははは、聡い人間なら誰だって分かるさ。大したことじゃない。宇宙癌であり、偽神であるニクスを連れて来たのなら、お前もまた別の誰かに指示されて宇宙をさすらっている可能性は当然考えられる。そして、人類を飼育しようとした目的はそれなんだろう?」

「ふふ、ふはははははははは!!! さすが大賢者! いや、もはやそんな名称すらも生ぬるい! まさに人類の救世主だな、そなたは! そこまで見通すか!」

彼女は喜んでいるように見えた。

「人類を育てて、お前の上位存在を討伐する。それがお前の滅亡種人類飼育計画だろう?」

俺がそう言った瞬間。

「初恋とは実らぬそうだ。残念であるが……」

『パリン』

という、あっさりとした音を立て、箱庭の空間は崩れ落ちたのであった。

「そなたはここで確実に殺そう。我が計画の駒の一つにしようなどと、我もとんでもない計算違いをしたものである! そなたらを呼び寄せ、計画遂行をするために星2つ分ものマナを消費したというのに!!」

彼女の声が鳴り響いた。

「行くぞ! 救世主よ! そなたは我が計画遂行の最大の壁である。いや!」

ナイアは豪快に笑い、

「色欲の邪神ナイアの宿敵である!!!」

そう声を上げたのであった。