作品タイトル不明
251.大賢者は月を穿ち堕とす
251.大賢者は月を穿ち堕とす
「行くぜフェンリル」
「了解した、アリアケ様!」
「うむ、任せたぞ! 救世主アリアケよ!!!」
(いやだあああああああああああああああ!!! 助けてくれえええええええええええええええ!!!)
聖獣の姿となったフェンリルに騎乗した俺は、飛行スキルによってたちまちのうちに天を舞った。
一瞬にして味方が見えないほど小さくなると同時に、この星の大気圏へと今にも接しようとする月へと肉薄する。
と、その瞬間、
「フェンリル! 気を付けろ! 攻撃してくるぞ!!」
「まさか!?」
驚きの声が上がるが、見事に月からの攻撃をかわす。
それは山ほどもある隕石をこちらへ発射してくるというものだ。当たれば即死だろう。
「魔王だからな。あらゆることは想定しておいたほうがいい、フェンリル」
「は、はい! アリアケ様!!」
「よし。じゃあ、残りの隕石たちは頼んだぞ」
見れば先ほどの隕石など霞むほどの大量の隕石が、月から発射されたのが見える。
「了解です」
(ひいいいいいい!? どういう神経してんだ、てめえら!?)
憑依されたビビアの精神だけが、絶叫しているが、星と戦うともなれば無理もないか。
とはいえ、彼は勇者だ。今後は心も指導していかなければならないと心の片隅にとどめておくこととする。
だが、今は目の前の魔王イルミナの打倒が先決だ。
「わおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!」
フェンリルは咆哮するのと同時に、口から魔力を放射する。
その熱線はこちらを狙う隕石たちを次々に破壊しつくした。破砕された欠片たちが大地へと落下していく。
「小さいとは言え、彼らは大丈夫でしょうか?」
フェンリルは心配の声を上げるが、俺は微笑み、
「あれくらいはナイアが何とかするさ。仲間を信じろ、フェンリル。俺たちは、俺たちの役割を果たすぞ」
「はい!」
良い返事だ。
そう。俺は英雄かもしれないが、全てを救うような万能の英雄ではない。
その代わり、信頼できる仲間や俺を慕って付いて来てくれるこの世界の人々が俺に力を貸してくれる。
それこそが本当の力というものなのだ。
それを知っているか、知らないかが、本当の英雄かどうかを分ける違いなのだろう。さて、
「行くぞ! フェンリル! ファイナルソード発動!! 月を!!」
俺は聖剣ラングリスを振りかぶりながら、魔王イルミナへと宣告した。
「お前を 星屑(イミセリノス) へ三十四分割する!! 許せ、 月(イルミナ) よ!!」
俺は星を 殺(あや) めることを詫びるとともに、容赦なく聖剣を振るう。
聖なる光が集まると同時に、莫大なエネルギーが放出された。
それは俺がイメージした通り月を両断し、 裁断(スライス) し、破壊する!!
月に包含された膨大なマナもはじけるように爆散した!!
さすがのフェンリルもその衝撃に吹き飛ばされかけ、俺も衝撃で全ての五感を一瞬失う。
だが、すべきことを忘れることは大賢者たる俺にはありえない。
「≪魔力吸収≫≪貯蔵≫≪魔力譲渡≫!!!」
月のマナを奪い、地上の皆へと送った。
「よし、作戦通りだ。頼むぞ、みんな! 俺もすぐに戻る!!」
月の分割という最大の難関を突破した俺は、すぐに頭を切り替え、地上を目指すようフェンリルへ指示したのだった。