作品タイトル不明
250.作戦指示
250.作戦指示
「作戦の内容はこうだ。まず現状、マナが枯渇した以上、全ての魔法使いは魔法使用が不可能になったと言って良いだろう」
「うむ。その通りである」
ナイアが肯定する。
「ゆえに、月の魔力自体を利用することとしたい」
「えっ!?」
俺の言葉が余りに意外だったのか、フェンリルが驚きの声を上げる。
だが、
「論理的に考えるとそうなるだろう?」
俺はあっさりと告げる。
「アリアケにとっては当然の思考かもしれんが、誰も思いつかんじゃろ?」
「そうか?」
うむうむ、うんうん、とナイアとフェンリルが頷いていた。
だが、このことを思いついたのには訳があるのだ。
「俺は未来で人魔同盟学校の校長をやっているし、魔王とも交流があるからな。だから月については詳しいんだ。元々夜に生きるイルミナ族は、月から魔力の恩恵を受けている。だから、夜の方が活動的になるし、身体能力や魔力も強化されるんだ。だったら、俺たちも同じことをすればいい。な? 論理的だろう?」
「うーん、そうじゃろうか? 思考の次元がちょっとぶっ飛んでる気がするのじゃがなぁ。落下してきてる星から魔力を直接奪おうというのと、イルミナ族の営みを並列に考えるのは普通なんじゃろうか?」
ナイアが珍しく悩んでいるようだが、とりあえず時間がないので続きを話していくことにする。
「まぁとにかく月のマナを俺のスキルによって≪魔力吸収≫し、それを≪貯蔵≫したうえで≪魔力譲渡≫する。これによってある程度魔力を使えるようになるだろう」
「アリアケ様の障壁作戦は実行可能なのですね?」
「いや、そうじゃない」
「そうなのですか?」
俺は首を横に振りつつ、
「月のマナは、この 星(イシス) の魔力とは別種のものだ。それを無理やり使うわけだから出力はイマイチだろう。それに≪魔力吸収≫をするには当然かなり接近する必要がある。≪魔力吸収≫≪貯蔵≫≪魔力譲渡≫出来るのは1回が限度だ。つまり使用出来るマナの質と量に問題がある」
「で、そこを何とかするのが救世主の御業というわけじゃな?」
「というか、ここまでは単なる現状の確認だ。作戦じゃない」
「さすがである。して、作戦とは? 早く聞かせよ。ワクワクしてきたのでな!」
ああ、と俺は微笑みながら頷き、
「勇者のスキルには、ファイナル・ソードという最終奥義がある。これは剣を自壊させるものの、究極の一撃を放つ禁断のスキルだ。これを聖剣を犠牲にすることで発動させる!」
「おお!!! なんと、聖剣を迷いなく贄にするとは!!!」
「さすがアリアケ様です。世界の危機を前にして迷いのない即断即決に目を瞠るしかありません」
(や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!)
俺が憑依したビビアの悲鳴が聞こえてくるが、事態は緊急を要する。
ここは師匠たる俺の権利を行使させてもらうことにしよう。
「すまないな、ビビア。だが」
俺はそうつぶやきながら、聖剣を改めて鞘から抜く。
キィン……という神秘的な音が響いた。
「作戦を指示する。これが神代を救う究極の一手となる」
その言葉に冥王ナイアをはじめ、周囲の者たちもいつの間にか聞き入っていたようで頷いた。
俺も彼らに頷き返し、言葉を続ける。
「救世主アリアケは聖獣フェンリルに騎乗し、 宙(そら) の月へ接近してスキルを発動。君らに魔力を送る」
「「「「はっ!!!」」」」
魔法使いの兵士たちが勢いよく返事をした。
俺の作戦を信じてくれたことで、絶望が希望に変わった。これもまた救世主の大事な仕事の一つだ。
「と、同時に、俺はファイナル・ソードを放つ! それによって月を三十四に分割する! 分割した月は順番に落下するように威力を調整するから、君らはこれらを一つ一つ障壁によって順番に防いで欲しい。一つ一つならば、君たちの力を集中させれば押し返せる程度の落下エネルギーのはずだ!」
「おお!」「さすがアリアケ様だ!」「救世主様!」「これで助かるぞ!」
「すごい、一瞬にして士気が回復した」
「うむ! さすがアリアケである! 我もなんか仕事せんと、仕事を失ってしまうな! というか、我が後継はアリアケで良い! わははははは!! よし!」
勢いよく笑った後、ナイアは俺の指示を改めて兵士たちへ告げる。
「作戦を開始しよう、冥王ナイア」
「うむ! 救世主の立案せし『三十四分割障壁作戦』を全軍開始せよ!!」
こうして、今ここに人類滅亡の危機を回避するための俺の作戦が、幕を切って落とされたのである。