軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

231.魔王イヴスティトル

231.魔王イヴスティトル

「独りで威力偵察とは、さすが勇者と言いたいところだがなぁ、ビビア。さすがにお前の実力では無茶だ」

「威力偵察目的とは私には思えなかったが……。アリアケ殿の言うことの最後の部分には同意しよう。お前には無茶だ下級勇者ビビア。ちゃんと師であるアリアケ殿のスキル支援を受けるべきだ」

「師じゃねえ! 俺が一番偉いんだよう! このパーティーのリーダーなんだ! い、いでえええええ」

「分かった、分かった。お前がリーダーなのは間違いない。だから、少し傷口にポーションを塗られたくらいで、悲鳴を上げるな」

「るせえ! いでえええ! 俺に! いでええええええよおおお! 命令すんじゃ! ふぎゃあああ! ねえええええええ!!! うわあああ、いでええ!!!」

フェンリルが嘆息して、

「おい、モンスターどもがまたやって来るぞ」

と呆れた声で言った。

「ひ、ひぃぃぃぃ……」

ビビアの悲鳴が徐々に小さくなっていった。

やれやれ。

「まぁ、正しく恐れること、というのは戦士として必要な資質だ。成長しているな、ビビア」

そう言って、彼の肩をポンと叩いた。

「成長の定義が広すぎないか、アリアケ殿よ……」

一方のフェンリルは、なぜか俺にまで呆れた声をかけた後、額に指をあてながら首を横に振る。

ううむ、なぜだ。

まぁ、それはともかく。

「単独威力偵察をしてくれたおかげで、36階層のモンスターは一網打尽にすることが出来た。この調子で行こう」

「そうだな」

俺とフェンリルは頷き合う。

俺たちの後ろには、鎧袖一触で倒した敵たちの死骸の群れが散乱している。

「本当に凄いな、アリアケ殿は……」

フェンリルが突然言う。

奥ゆかしい意見に俺は苦笑する。

「ははは、フェンリルが凄いだけだ。俺の力を存分に発揮してくれている。未来のお前はもっと凄かったがな」

「そうなのか。あまり聞かぬようにしていたが、また時間のある時にでも聞かせてもらおうか。私が、その、将来アリアケ殿とどんな関係になっているのかを」

どうしてか、彼女は後ろを向きながらそう言う。

それにしても、なぜ『どんな関係』という言い回しなのだろうか。まぁ、言葉の綾か。

「ああ、どんな冒険をしたか、聞いてもらおう」

未来が変わったりするかもしれんが。

「……ふん。まぁ、それでいい」

なぜか若干不機嫌というか、拗ねた雰囲気で少女は言った。

「?」

俺は首を傾げながらも、36階層から下に続く階段へ、彼らを導くのだった。

さて。

そんな調子で階層をどんどん進んでいく。

敵は強かったが、俺の支援があるのだから負ける要素はない。

それに、こちらにはフェンリルもいるし、不出来ながらも俺と相性抜群のビビアもいる。

むしろ、進行スピードは上がった。

40階層。

50階層。

……60、70、80、90。

そして……。

「99階層。最終階層だ。ここにはボスしかいない」

「まさかこれほど早くたどり着けるとは。1週間は覚悟していたが、食糧なぞ余ってしまっているぞ」

フェンリルが素直に驚いた声を上げた。

「くあーっはっはっははは! 全部俺の実力のおかげだなぁ! ヘボポーターでもここまで来れるんだから、感謝しろよ、二人とも!」

「ああ、よくやったなビビア。死にかけても懲りないタフさにはいつも驚かされる」

「しかもすぐ復活するしな。その精神力だけは凄いと思う。一体どういう神経をしているんだ? 何も考えていないようにも見えるが……」

「ぐひひひ! そう褒めるな、褒めるな! 当然の実力ってやつよー!」

呵々大笑するビビアに、フェンリルは嘆息して、

「褒めてないんだが」

と呟く。

だが、何はともあれ、目の前には禍々しい大きな扉がある。

その向こうにはボスがいるのだ。

そう。

ギ……。

人の力では開きそうにもない扉が自然と開いていく。

ギギギギギギギギギギィイイイイイイイイ‥‥…!

きしんだ音を立てて開門する。

広大なフィールド。むき出しの真っ赤な岩肌がまるで内臓のようにも見える禍々しい空間。

その最奥には玉座が据えられていた。

そして。

「来たか。運命に導かれし虫けらどもよ」

倍音のような聞くだけで不快な声で、その怪物はしゃべった。

「ようこそ、呪いの洞窟の最奥へ。そして、さようならだ」

その怪物は遠目にも異様であった。

その巨躯は10メートルを超え、体中は黒いヌメヌメとした体液で覆われていた。

目玉は垂れ下がり、体は腐敗しているように見える。

身体を覆うのはボロボロの布切れのみだ。

また、周囲には蝙蝠のような、やはり黒い四肢を持つ怪物が群がっている。そいつらは、魔王の体液をすすっているように見えた。

あまりに悍ましい光景だ。

これが 神代(じんだい) の魔王……。

「お前たちにも、この魔王イヴスティトルの因子を与えよう。そして」

魔王は言った。

「人類を滅亡へと追いやる我が偉業を手伝うが良い」

(続きます)