軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

229.ポーター・アリアケ無双

229.ポーター・アリアケ無双

「おい! アリアケ! ここはさっきも通ったじゃねえか! ったく、本当にてめえはヘボだなぁ!」

呪いの洞窟35階層に、ビビアのだみ声が響いた。

俺は苦笑しながら、実際2度目のルートを通る。

いちおう、色々と事前に説明はしたのだが、まぁ戦闘に目が向いているといったところなのだろう。

だが、俺のその考えは甘かったらしく、下級勇者パーティーに臨時加入していたフェンリルが淡々と指摘した。

「下級勇者よ、お前は何を言っている。ここは2周することで初めて地下への階段があらわれるギミックだ。アリアケ……いや、アリアケ殿のしていることは信じられないくらい高度なことなのだぞ?」

「大したことはない。それにこのダンジョンは二度目でな」

「30階層以降はダンジョンの形状が変化する。謙遜することはない」

「なんだ、ばれてたのか」

「私もここにはソロで潜ったことがあるのでな。というか、途中まで一緒にいた同行者が序盤の階で全滅しただけだが……。最終的に私もこの辺りで引き返したのだ。だが、今回は楽にここまで来れた。さすがアリアケ殿だ」

「これくらいはな。ポーターと名乗る以上は、威張るようなことじゃないさ」

「やれやれ、賢者は謙遜がお得意のようだ」

なぜかフェンリルが呆れた表情をした。

最初は鉄面皮っぽい少女だったが、だいぶ色々な表情を見せてくれるようになったと思う。

「おい! 俺は下級勇者とか言ってるくせに、なんでアリアケのヘボ野郎は”殿”とか付けてんだ! この犬っころがぁ!」

「む、別に他意はない。黙っていろ超下級勇者ビビア」

「きいいいいいい! 下級だけでも最悪なのに、『超』をつけんじゃねええええええええ!」

ビビアに対しては絶対零度の表情が多いような気がするが、恐らく気のせいであろう。

さて。

2周したところで、『ガゴン』と、壁が崩れたような音がした。

「よし、次の階層への階段が現れているはずだ。ああ、あそこだな。物陰に隠れて見えにくいが……」

「明かりもほとんど全域を照らしているから、確認も容易なのか。凄いな……」

「はぁ!? ダンジョンを明るくしてるくらい大したことねえ!」

「ああ、その通りだ」

「いや、ダンジョンは魔王が作り出したモンスターの1種だと言われている。ゆえに、全域を照らすことは不可能に近い。それを簡単にやっているアリアケ殿は、奇跡を起こしているようなものだ」

「大げさな奴だなぁ」

俺は苦笑する。

「ちなみに、どうやってるんだ?」

「本来、魔法使いがいれば≪魔力貯蔵≫といったスキルで、魔力量を大幅にアップさせる。だが、今回は魔法使いがいないからな。俺が≪暗視≫≪着色≫≪幻視≫という複合スキルで対応している。だから実際に見えているわけではない」

「はあ!? 意味が分からねえ!? 見えてないわけがねえだろうが! 現に俺のハンサムな表情が聖剣に映ってるんだからなぁ!」

キラリと、聖剣の刃にビビアが歯を見せて笑みを浮かべた。

ふぅ、とフェンリルが嘆息しつつ、

「その奇妙な表情が何のつもりかは知らんが……。アリアケ殿が言っているのは、元の色はほぼ真っ黒ということだ。だが、それに色をつけてくれるスキルを使用して、我々に見せてくれているということだろう」

「元々は絵描きが使うスキルなんだがな」

「変なスキル使うんじゃねえよ!!」

「いや、こうして役に立っているのだから凄いことだ……。本来戦闘とは無関係なスキルさえ、難なく応用してしまう。つまり、発想力が桁違いなのだろう。さすがアリアケ殿だ」

「はぁ!? 偶然うまくいってるだけだろうが! それにすぐ俺の力を思い知ることになっ……!」

スキルに関する情報交換をしながら、地下への階段へビビアが先頭に立って進もうとする。

俺のナビゲートは安全確保を優先しているため、進みは遅めだ。ゆえに、戦士の血が騒いだビビアが血気にはやったのかもしれない。

それはしかし、集中力の欠如という最もおかしてはならない行為であった。

「気を付けろ! ビビア! モンスターが出るかもしれん!」

「分かってるっての! 次の階層からモンスターが更に強くなってる可能性くらい、俺だって理解して……!」

「そうじゃない! 先ほど壁につけておいたナビゲート用の 傷跡(きずあと) がない! この周囲一帯が罠の可能性がある!」

「え……? ぐへあ!?」

『ザン!』

骸骨の騎士たちがワラワラと湧き出してきた。

俺のいた現代であれば、大した敵ではない。せいぜい、B級モンスターで、俺の支援を受けたビビアなら負けることはないはずだ。

だが、

「魔王イヴスティトルの因子を受けたモンスターだ、一体一体がA級に匹敵する強さを持っている! 油断するなよ!」

フェンリルが叫んだ。そして、一方のビビアだが……、

「ふぅ、助かったなビビア。よくやってくれたフェンリル」

「別にアリアケ殿のためじゃないし」

「ひいいいい、いでええええええよおおおおおおおお!!!!!!」

フェンリルの咄嗟に蹴り飛ばされたことによって、ビビアは反対側の壁に激突していた。

そして、彼の元いた場所には、骸骨騎士の鋭い斬撃痕が残っている。急所を狙ったすさまじい一撃だ。

俺は蘇生魔術は使えないから、危なかったな。やはりアリシアがいてくれればなぁ、と思う。

「ちくしょう! ちくしょう! 許せねえ許せねえ! 馬鹿に! 馬鹿にしやがってえええええええええええええ!!!!」

俺の言葉など一切聞こえないようで、ビビアは怒りに打ち震える。

「≪クリティカル率アップ≫≪クリティカル威力アップ≫≪攻撃力アップ≫≪スピードアップ≫≪聖魔力付与≫」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

「「「「ぐぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!??」」」」

4体の骸骨騎士が、まとめて胴体ごと聖剣ラングリスにより斬り裂かれた。

「なっ!?」

フェンリルが驚きの声を上げる。

「許さねえぞおおおおおおおおおおお! この雑魚モンスターどもがああああああああああああ! よくも吹き飛ばしやがったな!!! うがああああああああああああああああああああああ!!!!」

どうやらフェンリルに蹴られた事は分からなかったらしい。黙っていよう。

「ビビア! 少しは慎重に動け!」

「うるせええ! それをサポートすんのが、ゴミポーターのてめえの仕事だろうがああ! アリアケェエエアアアア!!!」

「ふ、違いない」

俺は死ぬことすら恐れずツッコんでいくビビアに感心しながら、スキルを発動する。

「≪即死回避≫≪回数制限付き回避付与≫≪鉄壁≫」

「くあーっはっはっはっはっは! 死ねやオラアアアアアアアアア! 勇者様の前にひれ伏せオラアアアアアアアアアアアアア!!!!」

死生の狭間ぎりぎりでビビアは戦う。

「凄いな」

「ああ、あれこそが勇者ビビアだ」

「いや、一番凄いのはアリアケ殿のスキルだが……」

「そんなことはないと思うが?」

俺の返事に、彼女はなぜか呆れた表情を浮かべてから、言葉を続けた。

「だが、それにしても奴の、あの死を恐れない態度は凄いな」

「ああ、そうだな」

俺は頷く。

ビビアの戦い方は本当にぎりぎりの戦いだ。少しでもミスをすれば、確実に致命傷を受ける。

と、ビビアが首の皮一枚の距離で、相手の斬撃を回避した。

思わず彼は悪態をつく。

「くそがぁ! あぶねえ! まぁ、最悪蘇生してもらえばいいんだけどな! くひあ!!」

ん?

俺は違和感を覚えて首を傾げる。

ああ、そうか。

ポンと俺は手を打った。

そして、大声で告げる。

「おーい、ビビア―!」

「っだよ、アリアケ! 今は戦闘中だ! 話かけんじゃねえ! てめえは、馬鹿みてーに、俺の活躍を見守ってりゃいいんだよう!!!」

「まぁ、それはそうなんだが……」

戦闘中に、前衛の集中力を途切れさせるのは悪手以外の何物でもない。

だが、これは多分、伝えておかないといけないのではないかと思い、仕方なく続けた。

正しい情報の取得は、勝利条件の重要なファクターだ。

「すまない! 一つだけだ。これだけは伝えておきたい!」

「だよ! なら早く言え! おらあ! 最強勇者、ビビア・ハルノア様の通りだああああああああああ!!! はっはー!!!!」

意気軒昂、鎧袖一触といった感じのビビアに俺は伝えた。

「アリシアがいないから、蘇生魔術は使えないぞ~。死んだら終わりだ~。そこらへん気を付けてな~」

「はーっはっはっは! わかってるわかってる! まぁ、ミスっても生き返って……。ん? ミスったら生き……。あれ?」

突然、ビビアの動きが止まった。

そして、敵中でプルプルと震えはじめる。

「ひいいいいいいいいい!? しょ、しょうだった! だ、大聖女いねえんだった!? し、死んだら、死!? さ、最初から言えよ!? わ、分かっていれば俺は前衛なんて、うわあああああああああああ!?」

なぜか動きを止めたビビアに敵がチャンスとばかりに殺到する。

「ア、アリアケエエエエエエエエエエエエ!!!! だ、だずげでぐれええええええええええええええええええええ!?!?!?!?」

敵に囲まれ、たちまち勇者ビビアが見えなくなった。

「ビビア! いきなりどうした!?」

まさか、蘇生魔術がないだけで、あそこまで動けなくなるはずがない。

何せ彼は勇者なのだ。

「もしかすると!」

骸骨騎士と同様に、新たな罠をダンジョンが発生させたのかもしれない。

「何かトラップがあったのか!? くそ!」

「いや、あれは普通にビビッて、腰が抜けただけでは?」

フェンリルは言う。

だが、俺は静かに首を横に振り、

「ビビアは歴戦の勇者だ。今更その程度のことで腰を抜かすはずがない。そんな奴はそもそも勇者とは言えない」

「そうかなぁ~。アリアケ殿はその、奴……と言うか幼馴染だったか? ……への評価だけが、甘すぎるような……。まぁ今はそんなこと言っている場合ではないか!」

フェンリルはそう言って、

「私にも支援スキルを! アリアケ殿!」

その言葉に俺はすぐに応じた。

勇者ビビアの数秒後の死を回避するのだ!