作品タイトル不明
228.魔王イヴスティトル討伐戦線
228.魔王イヴスティトル討伐戦線
さて、酒盛りをした翌朝。
玉座の間にて、俺たちは詳しい情報を冥王ナイアより直々に聞いていた。
「魔王の名は、魔王イヴスティトルと言う。そやつを倒せば操られたモンスターどもの襲撃も収まるはずである!」
「場所も分かっているのか?」
「無論である!」
えっへん、といった風にナイアが鼻を高くした。
「はああああああああああ!? 場所も分かってんなら、てめえが行けばいいだろうが! わざわざ勇者ビビア様が行くまでもねえ!!!」
「うむ、おねしょ太郎よ、それも一理ある」
「誰がおねしょ太郎だ! 俺のあれは心の汗だと何度言えば理解しやがる! おおおおおんん!!!!????」
「ビビアよ、無礼な口をきくなら、むしゃむしゃするぞ?」
「ひぃぃぃいいい!?」
フェンリルのドスの聞いた声に、ビビアが震えあがった。
幸い再失禁はしなかったので、周囲の官吏がホッとする。
「まぁ、とはいえ、 おねしょ太郎(ビビア) の言葉は確かに道理ではある。ナイアの力なら倒せるかもしれないと思うのは、庶民感覚としては道理だしな」
俺の言葉に口をパクパクとするビビアは、震えているが何か抗弁しているようだが、とりあえずスルーする。
「うむ、アリアケよ、その通りである。だが、我がもし敗北したらどうする? 滅亡種人類王国が本当に滅亡してしまうであろう? そんな1か0のような賭けをするわけにはいかぬ」
「な、なら、俺たちなら死んでもいいってのかよう~!?」
ペペペペペ! と何とか復活したビビアが唾を飛ばした。
どこまでいっても、汚さから離れられない星の元にでも生まれたのかもしれないなぁ。
自然と不出来な弟子へ憐憫の情がわく。
「ふむ、その点ならば大丈夫であろう! そなたらは負けぬ! なぜなら、そなたらは未来から来た選ばれた戦士。運命と 誉(ほまれ) を一身に受ける者なのだから」
そう力強く深紅の女王は言う。
その言葉に、たちまちビビアはニヤリと唇を歪ませて、
「ぐひひひ! 確かにそうだ! わざわざ神代という時代が俺の力を求めて召喚したんだからなぁ! どうして俺が負けることがあるだろうか? ぐひ! いや、ない!」
たちまち上機嫌になった。
最近は牢屋に閉じ込められたり、石を投げられたり、聖剣を没収されたりしていたので、ストレートな称賛に気をよくしたのだろうなぁ。
「まぁ、リーダーのやる気が出たようで何よりだ。それで、その場所と言うのは?」
うむ! と頷いてナイアはその場所の名を言う。
「『呪いの洞窟』と言われる場所である」
「はひ?」
ビビアの間抜けな声が聞こえた。
ふむ、どこかで聞いたことのあるダンジョン名だな。
「その99階層に魔王がいることが確認されておる! 立ち入ればたちまち死が約束されるという、人が決して立ち入ることのなき呪われた場所と言われている! 奴はそこからイヴの因子をモンスターに植え付け、変質させて人類を襲わせておる! 今まで幾人もの戦士たちがその討伐を試みたが一敗地に塗れた。勇者ビビアとその保護者アリアケ、そしてフェンリルよ、見事魔王イヴスティトルを討伐するよう、冥王の名において依頼する!!!」
「ひ、ひい!? そ、その場所は俺がフェンリルに未来で殺されかけた場所じゃねえかあああ!! 嫌だ! 嫌だ! 行きたくない! あああああああああああああああああああああああ!!!!!」
ビビアは絶叫して拒否する。
ああ、なるほど、あの勇者パーティー没落のきっかけになったダンジョンか。
だが、こうしてトラウマを克服する機会を得られたことは彼にとって成長のチャンスだと、保護者の俺はその幸運に感謝した。
なので、
≪筋力低下≫
≪スピードダウン≫
≪攻撃力低下≫
「ひい!? 何しやがる!? 離せ! 離せええええええええええええええああああああああああああ!!!」
俺は彼に弱体化のスキルを使用して抵抗できないようにした。
そして、勇者パーティーが未来において瓦解する始まりとなった地。『呪いの洞窟』へと、鼻水と涙を流しながら嫌がる下級勇者ビビアと、トラウマの根源であるところのフェンリルを連れて、魔王討伐の旅へと出発したのである。
幸いながら、かのダンジョンのマップは、最優のポーターである俺の頭の中には、当然のごとく入っている。