軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

195.教主ジャルメルの野望

195.教主ジャルメルの野望

「ルギよ、何をやっている。さっさとこんな 塵芥(ちりあくた) どもなど一掃せんか。それでも我が神の器か」

ワイズ教の教主、ジャルメル・ギルメイザーは蔑んだ口調でルギへと言った。

「これは申し訳ありません、教主様。ですが、今は戦闘中です。危険ですので、それ以上前に出られることはおすすめしません」

「ほう、言うようになったな。たかだか穢らわしい魔族の小童のくせに」

せせら笑うように、ジャルメルは言った。

だが、その声にはぬぐいようのない悪意が混じっている。

「おい、あんた!!!」

と、そんな険悪な空気など意にも介さず、フィネが口を開き、

「教主だか、ゾンビだか知んねーけど! 今はあたしの友達と話してんだ! 邪魔すんな! っていうか」

怒りを込めて、

「友達を馬鹿にすんじゃねーよ! あんたの体のほうがよっぽど醜悪だろうが、おっさん!!」

と言った。

その言葉に、

「なんと下品な娘じゃ。どこの馬の骨とも知れぬ人間が、このジャルメル様に向かって」

と憤慨する。しかし、

「いやぁ、良い啖呵なのじゃ。100点満点!!! にゃははははは!!!」

コレットは上機嫌で笑っていた。

やれやれ。

「教師の仕事、結構気に入ってたんだな、コレット」

俺は微笑みつつ、

「それにしても、お前がジャルメルか。ワイズ神も、よくお前などを教主にしたなぁ」

正直な感想を漏らす。

「くはははは! 儂の信仰の賜物よ! しかも、此度は我が信仰に応えて、神託まで与えてくださる! そう!」

ジャルメルは興奮した様子で、

「儂が神となることを、ワイズ神様はお認めになったのだ! ぐわはははははは!!!!」

下品な哄笑が地下神殿に響いた。

「ふーん、神ね。そうなのか、ワイズ神?」

「貴様、我が神になれなれしく口をきくでないわぁ!」

ジャルメルが絶叫するが、ワイズ神の影は冷徹な口調で、

「答えるかどうかは私が決める。神の御前である。控えよ」

「は? は、はは!」

逆に叱責を受けて目を白黒とさせる。

影はそんなことには構わずに言葉を続けた。

「星に巣くった寄生虫はお前たちが殺した。星の神は傷つきしばらくの眠りについた。ならば偽りの神の存在はもはや不要のはず。ならば新しい神がこの星には必要だ。少なくとも、しばらくの間でも愚かなお前たちを導ける神がな」

「何を言っているかさっぱり分からないのだけど」

キュールネーが頭にハテナマークをつけている。

だが、おそらく賢者パーティーの面々以外はその言葉の真意を理解してはいまい。

要するに、

「人間が心配で出てきたというわけか。優しいんだな」

「貴様らが愚かすぎるだけだ」

なるほど。では言い方を変えよう。

「老婆心ということか。だがそれならばワイズ神。あなたが人々を導けばいいと思うがな?」

「逆に聞くが、貴様はやりたいと思うか?」

「いや、俺はのんびりしたくて、世界を救ったんだが……」

「そうだろう? だが、勘違いするな。別に私は人を導くのを 厭(いと) うているわけではない。ただ私は失敗している。そして、新たな神を求める者が目の前にいる。ならば失敗した神よりも新たに生まれる神の出現を祝福したいと思っているだけだ。もはや、私は不要だと結論付けたに過ぎん」

失敗?

「そんなことはないと思うが? 少なくとも、あなたを信仰している人々は多い。十分人心を救っているように思うぞ?」

「そうか。大賢者よ。あなたがそう言うなら、そうかもしれない。ふふ」

「ワイズ神様?」

俺の言葉に、ワイズ神がおそらくめったに見せない……、いや初めて微笑みらしきものを浮かべたのを見て、ジャルメルは嫉妬なのか、混乱なのか、顔を色を赤くしたり白くしたりしていた。

しかし、

「だが、私は星を救えなかった。これを失敗とせずなんと言う。ゆえに、大賢者よ。お前の言う”私の可能性”を追うのは、 この私ではない(・・・・・・・) 。この私はこの教主に賭けよう」

「おお! 神よ! 光栄です! 儂が神となり人類を導きましょう!」

ジャルメルが歓喜の声を上げる。その姿をどこか冷徹な目で神の影は見下ろした。

「ちょっと、ちょっと! さっきから聞いてれば! この世界には私たちエルフとか、そこのルギ《魔族》とか、いろんな種族がいるんですけど! 人族だけじゃないですから! ちゃんと教育受けてますか!?」

委員長気質のソラが憤慨した調子で言うが、

「ぐわはははは! 安心しろ‼ 儂が神になった暁には、魔族もエルフも、獣人も! ドラゴンすらも人類の配下として支配しよう! そうすることで平和な世界が訪れるのだ!」

「そんなのナンセンスじゃん! ルギ! あんたこんな奴に協力しようってのかよ! ワイズ神様とやらも、とちくるってるんじゃねーのか!?」

「……」

「さてな。だが、お前たちが決めたことだ。お前たちが神を生み出そうとするなら、私は古き神としてそれを手伝うまで。まだ良き神かどうかすら分からぬものを否定したりはしない」

ルギは沈黙し、ワイズ神は意味深な言葉を返す。

「ひは! ひはははははははあははっははははははは!! どうだ、これが我が神の恩寵よ! このジャルメル様を神にしようとしてくださる意思に一片の迷いも持たれておらぬ!」

教主ジャルメルはやはり邪悪に唇を歪めながら、

「しかし、まだ儂が神に生まれ変わるには器の方が完璧ではない! しばしの時間が必要だ。よし、いまだ 殺(や) れ、我が神徒たちよ! ぐはははははは!」

そう叫ぶのと同時に、

「死ねえええええええええええええええええええええ、アリアケええええええええええええええええ! この神に逆らう不届きもんんがあああああああああああああああああああああ!!!!」

いつの間にそこにいたのか。

闇からぬるりと、突如現れた男が、俺たちに向かって刃を振るったのであった。